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【小説】 猫と手紙  第20話

第20話


僕に起こっていた事は、苦しいことではなかったのかもしれない。
すべては、僕の世界の見方が息苦しかっただけなのかもしれない。
 
僕の頭の中と現実世界の境界線は曖昧で、どこからが現実でどこからが僕の感情が描いた世界か、時々分からなくなってしまう。

きっと僕の感情が、世界を悪く濁らせて見せていた。


怯えながら暮らす世界と温かく優しい世界は、今は僕の中で美しく溶け合っている。
 
彼女の優しく温かい世界に触れたあの日から、僕に見える世界は変わり始めた。
 

僕は、またすぐに彼女に会いたくなる。
僕は子供の様に、駄々をこねても良いのだろうか。


もっと、君とずっと一緒に居たいと。


彼女ならそんな僕のわがままも、きっと笑って許してくれる気がした。
彼女になら、僕の不安で弱い気持ちも打ち明けられる気がした。

 
僕の側から、どうか離れて行かないで。

 
僕は面と向かって、いつも上手く伝える事が出来ない。
 
 


ああ、そうだ。
彼女に手紙を書こう。

僕らしい、僕の言葉で。

 
僕にとって手紙は、僕を苦しくさせるものだった。
 
けれど、彼女に出会って、見え方が変わった。

 
きっと、手紙は最初から変わらず、
ずっと優しくて、温かくて、
美しいものだった。





end

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