見出し画像

【小説】 白(シロ) もうひとつの世界  第24話

第24話

「じゃあ、行ってはいけない場所?」
「一般的な見解だとね」
「君の見解は違うの?」
「ああ。……僕は、良くない心を持った者が行ってはいけない場所だと思っている」
「良くない心を?」
「そう。逆を言うと、良い心さえ持っていれば行っても良い場所だとも思っている」
「その根拠は?」
「確かな根拠は無い。けれど、行ってはいけない理由が、強力な魔力が宿っていて、世界を変える力があるから。ならば、良い心を持っている者が近づけば、良い世界に変える事が出来るかも知れない」
「前向きな解釈だね。……でも、それなら今までの僕の冒険の話とも繋がる気がする」
「そうだろう?」
「じゃあ、僕がここに来たことは間違ってなかったって思っていてもいい? 僕自身良い人間かどうかは分からないけれど」
「ああ。きっと、君だから来ることが出来たんだ。むしろ自分を誇りに思っていても良いんじゃないか?」

その言葉に、少しホッとした。
「……ありがとう。オリバーのお陰で自分の行動に自信が持てたよ」
「良かった。こちらこそ、有益な情報をありがとう。君の世界とこちらの世界は違っているかも知れないが、きっと役に立つ」
そう言って微笑むオリバーに聞きたい事がもう一つあった。
「……あのさ、僕は……またリリーと離れてでも冒険に出掛けて、扉を開くべきだと思う?」
「どうかな。前の世界で色々言われたからだろう? 正解なんて僕には分からない。……君がどうしたいかじゃないか?」
「僕が、どうしたいか?」
「ああ。君の幸せは、僕には分からない」

……僕の幸せ?
……どうしたいか。
「そうだよね。……ありがとう。考えてみるよ」
「ああ、もし一緒に行きたくなったら、声を掛けてくれ。君が居てくれると僕も心強い」
「分かった。それじゃあ、今日はもう行くよ。店の事もしないとね」
「ああ」
 
僕の中で、何かがスッキリした。誰かにずっと全てを話してしまいたかった。
オリバーは、最適な人物だった。
彼は、頭が良い。
それに、僕に考える余白を残してくれた。
自分で決めて良いんだ。
どうするか、答えを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?