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【小説】 鳥 第4話

第4話

休みの日は、何となく彼と距離を置いた。

彼の事をちゃんと大切に出来るか不安で、逃げていた。
彼のまっすぐな瞳を見る自信が無かった。

彼のように、素晴らしい何かを持った人間じゃなかったから。彼に見透かされてしまいそうで怖かった。

私は、多分不釣り合いな人間だ。


すごく何かをやりたい様で、何もしたくない。
時間が無駄に過ぎてしまう事に焦る。

私だって仕事はしている。

言われたことを必死に、正確に出来るように。社会に無くてはならない、大切な仕事だ。

……分かってる。

けれど……上手くは出来ない。
きっと私じゃなくても、いいものだ。

思い描いていた未来とは違う現状。

もっと、私じゃないといけないものをしたかった。

私は、前はお話を描くのが好きだった。自分が描いた台本を舞台にしたら素敵だと思った。

彼を主役にした舞台。
お話を描き切って、コンクールに出してみた。


——けれど、良い結果は出なかった。

ずっと描き続けていたけれど、ある時、描くのをやめた。


何も良いものを生み出せない自分に、がっかりする。


私には彼のような特別な羽根は、きっと無い。


グダグダ考えていても仕方ない。……よし、旅に出よう。自分探しの旅に。
場所は……ずっと行きたかったフランス!!

私はまた新しい、選んだことのない選択をするんだ。

彼は、旅行の話をすると、

「寂しいよ」と言ってくれた。
彼と一緒にいると、自分は必要な人間なんだと思えるようで嬉しかった。

「ありがとう」そう私は彼に返した。

彼は優しい。私を必要としてくれる。
本当に寂しいと思ってくれている様子が、私にじんわりとした温かさを運んでくれた。

私は悪い。寂しい顔を見て喜ぶなんて。

そうだ! 彼には、とっても素敵なお土産を買って帰ろう。

彼へのお土産は、すごく悩んで買った。
彼の特別好きなものが分からなかったから。
一体、何だったら一番喜んでくれるのか。彼の欲しいものって何だろう。
すごく悩んで、結局自分だったら喜ぶものを買った。喜んでくれると嬉しいな。

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