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#読書感想文

大奥/よしなが ふみ

堺雅人さんのドラマ「大奥〜誕生[有功・家光編]」で、大奥に嵌りました。大河ドラマ「篤姫」の家定以来の堺雅人ファンです💕やっぱり大奥繋がりですね😅 二宮君の「大奥〈男女逆転〉」は、映画館で見たのか、ドラマの後にDVDで見たのか、あまり記憶にありません😅(見たことに間違いはないんですけどね💦💦💦) そして、映画「大奥〜永遠[右衛門佐・綱吉編]」最高でした。 [右衛門佐・綱吉編]は、その後もDVDやテレビでの放送で何回も楽しませていただきました。 そして・・・今回のNHKでのド

中村文則『土の中の子供』を読んで

私は中村文則が好きだ。今までに読んだ彼のいくつかの作品、『何もかも憂鬱な夜に』や『掏摸』、『教団X』には、空虚な生への諦めと安らかなる死への緩やかな吸引が描かれている。生と死、どちらが人に幸福を与えてくれるのだろうか。 芥川賞を受賞したらしい今作も、中村文則らしい生死の狭間にたゆたう人の姿が描かれている。ひどい虐待を受けてきた主人公が大人になり、生きる活力もなく、何もない、つまらない日常を送る。その描かれ方はリアルで、振り子のように過去と今の記憶が交錯する。(普段の記憶の思

女が男の餌食になる?山岸凉子の衝撃作に描かれた「ジェンダーの呪縛」がトラウマレベル『日出処の天子』

【レビュアー/こやま淳子】 こっちの歴史が正しいに違いない!?またもやコロナで自粛生活を余儀なくされる今日この頃。 こんなときは、名作漫画を読むチャンスだと考えてみるのはどうだろうか。 そう、有名すぎていまさら読むのもなあ…なんて思いながら機会を逃していたあの作品やあの作品。 私がオススメしたいのは、山岸凉子先生の『日出処の天子』である。 これは厩戸王子(うまやどのおうじ:聖徳太子)が超能力者でゲイだったという、かなりトンデモな設定なのだが、しかし読み進めるうちにむ

頑丈な死にたさが揺らぐ小説

今日、 中村文則著『悪意の手記』 を読んだ。 小説の世界に夢中になりすぎて ボロボロ泣きながら一気に読み進めた。 前回読んだ『流浪の月』に続いて、 めちゃくちゃ良かった。 今回もアタリ引いた。 新作をどんどんチェックするというよりは、 本との運命的な出会い (これも何かの本で読んだような気がするが) 『出会うべき時に、読む本は現れる』 というロマンチックなものを、 今でもなんとなく信じたまま本屋に向かっている。 私の中でそれを確固たるものにしたのが、 中村文則の『何もかも

「遮光」中村文則 / 読書メモ

サクッと。 GWは中村文則ですね。笑。 筆者の文庫本に変えて、のくだりにて。 デビュー作の『銃』とこの二作目の『遮光』は、なんというかぼくのやわらかい部分に属する。 僕はこう解釈しました。 上記の「やわらかな」を「生々しい」と変えてみる。 つまり中村文則の処女作『銃』と二作目『遮光』は、小説家中村文則の内側に、悪魔のように根付いてしまった生々しい生得的な部分に属する。 僕の中から、原石の固まりのようなものが、そのまんま出たような小説かもしれない。「何かを持ち歩く」

芥川賞作家の思い出①

皆さんは「芥川賞作家」と聞いて最初に誰の名が浮かびますか? 私は中村文則(なかむら ふみのり)です。彼の代表作「掏摸」(スリ)に出会うまでは「現代文学は当たり外れが激しい」「小難しいテーマや前衛性に囚われて話があやふや」「太宰や三島や漱石を読む方が間違いない」という偏見が少なからずありました。 ところが彼の小説は(少なくともデビュー作「銃」から「あなたが消えた夜に」ぐらいまでは)、私の好きな旧時代の文学と味わいが似ていました。カミュやドストエフスキー、サルトルらの遺した名

読書感想文~炎立つ

下手すれば四半世紀前になる作品でしょうか(苦笑)。 大河ドラマ「炎立つ(1993~1994)」の原作です。 高橋克彦氏によって描かれた、前九年の役前後から鎌倉時代にかけての奥州藤原氏の興亡を描いた作品です。 5巻までありかなりのボリュームですが、めちゃくちゃ面白い! 物語は、多賀城国府に仕えていた藤原経清の物語から幕を開けます。 平安初期の頃ですね。 経清~北の埋み火、燃える北天、空への炎藤原経清は、亘理郡を差配していた大夫。祖先をたどれば中央政権の藤原氏に連なる系譜です

再び道を誤らないための〈暮らし〉リアリズム:花森安治の思想 : 『灯をともす言葉』

書評:花森安治『灯をともす言葉』(河出文庫) ずいぶん昔、酒井寛の『花森安治の仕事』(朝日文庫)を読んで感動した。以来、花森安治のファンである。 花森安治という人は、先の戦争で、国の掲げたプロパガンダを信じた結果の悲惨さを目の当たりにして、もう二度と同じあやまちは犯すまいと決意した人である。 そして、その花森が拠って立ったものとは「暮らしの思想」だ。つまり、日々の暮らしにおける実感を大切にすること。言い換えれば、決して「観念」的にはならない。「生活者のリアリズム」によって

ウクライナ文学を紹介

『ペンギンの憂鬱』アンドレイ・クルコフ , 沼野 恭子 (翻訳) 何が起こっているのか知らないほうがいい。自分もその謎を作りあげた張本人なのだから――。欧米各国で絶大な賞賛と人気を得た、不条理で物語にみちた新ロシア文学。 恋人に去られ孤独なヴィクトルは売れない短篇小説家。ソ連崩壊後、経営困難に陥った動物園から憂鬱症のペンギンを貰い受け、ミーシャと名づけて一緒に暮らしている。生活のために新聞の死亡記事を書く仕事を始めたヴィクトルだが、身辺に不穏な影がちらつく。他人の死が自分

『走れメロス』の友情裏話

檀一雄『小説 太宰治』 “天才”太宰と駆けぬけた著者の青春回想録。 作家・檀一雄は太宰治の自死を分析して、「彼の文芸の抽象的な完遂の為であると思った。文芸の壮図の成就である」と冒頭から述懐している。「太宰の完遂しなければならない文芸が、太宰の身を喰うたのである」とまで踏み込んでいる。 昭和八(1933)年に太宰治と出会ったときに「天才」と直感し、それを宣言までしてしまった作家・檀一雄。天才・太宰を描きながら、同時に自らをも徹底的に描いた狂躁的青春の回想録。作家同士ならでは

2022年、1月は太宰治月間

太宰治とは少なからず因縁があり、わいが生まれたのが桜桃忌だったのだ。でも何故か医者がユリシーズの日にしてしまったという。最初に好きになった作家が太宰治だし、今でも好きである。一番かと言われればちょっと変わってしまったが。まだ太宰治がすきなのか?今月は太宰月間となります。 『かくめい』(1928年) 『魚服記』『魚服記に就て』[1933年] 元は中国の民話を泉鏡花が幻想文学に仕立てたものである(『雨月物語』「夢應の鯉魚」)を読んで、太宰はそれを己の神話としたような感じであ

短編集の感想と… : 平野啓一郎 (著)『タイアップ小説集』 / 原田 宗典 (著)『どこにもない短編集』/ 「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。

原田 宗典 (著) 「人の短編集」 kaka.さんの投稿を読んでから直ぐ、原田 宗典 (著)「人の短編集」は一通り読み終わる。kaka.さんがお勧めしたお話はジワっときて良かったし、最初の数話は『なるほど』と思ったのですが、それ以降のお話は流れを追うだけになってしまった。読み物には書き手の書き方により、好き好きが出るのだなと改めて感じた次第。 『人の短編集』は、Amazonであまりコメントもなく、短編集で一番評価の多い『どこにもない短編集』も読んでみた。 うーん、何でだ

二葉亭四迷の迷い道が日本近代文学の始まり

『日本近代文学との戦い 』後藤明生・電子書籍コレクション (アーリーバード・ブックス) ◉日本近代小説は西欧文学との混血=分裂の産物である 彼等は書きたがるが、読みたがらない。読まずに書こうとする。そこで私は「千円札文学論」を学生たちに繰返し吹き込んでいる。すなわち、千円札の表は夏目漱石である。漱石は大文豪である。しかし漱石がいかに大文豪であっても、表側だけでは贋千円札である。電車の切符一枚買うことは出来ない。本物には表と裏が必要である。表と裏が文字通り表裏一体となっては

宇野浩二は、やはり「小説の鬼」だった

『思い川・枯木のある風景・蔵の中』宇野浩二 (講談社文芸文庫) 芸妓村上八重と著者との30年にも及ぶ恋愛を題材に小説家牧と芸者三重次とが互いの人生の浮き沈みを越えて真摯な心を通わせ合った長い歳月の愛を独得の語りくちで描いた戦後の代表作・読売文学賞受賞「思い川」、なじみの質屋の蔵の中で質種の着物の虫干しをしながら着物に纏わる女たちの思い出に耽る男の話・出世作「蔵の中」、他に「枯木のある風景」の3篇を収録。 「思い川」最初に出ているから処女作だと思ったら晩年の作品だった。水上