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北上次郎 ( 目黒孝二 ) 先生の訃報によせて


早すぎます……。


北上先生には生前、大変有難いお言葉をいくつも頂戴しました。
日刊ゲンダイDIGITAL北上ラジオ本の雑誌、それからハヤカワミステリマガジンと、あちこちでご紹介いただきました。本当に嬉しく有難かった。

北上ラジオと本の雑誌、ハヤカワミステリマガジンでご紹介いただいた際の記事がこちら。

2020年4月に刊行した『真夜中のすべての光』(講談社タイガ)を、「北上次郎が選ぶ2020年度エンターテインメントベスト10」にて「3位」に推していただくという光栄。
しかも遡って『雨音は、過去からの手紙』(マイナビ出版ファン文庫)、『世界の端から、歩き出す』(ポプラ文庫ピュアフル)もお読みくださって、そちらも褒めてくださいました。


その少し後に、ジャンル縛り一切無しで「2020年に読んだすべての本から北上次郎が選んだベスト10」で「7位」に推していただくというものすごい事態に。


自分にとって北上次郎先生は「名ミステリ読み」の方でした。
だからまさか北上先生から書評をいただけるなんてこと、全く思いもしなかった。
自分が書いてるものが「ミステリ」だとは全然思ったことがなくて。

こういうのって書評家さんと書き手や出版社側で裏で話がついてるものだと皆さんお思いでしょうが、もう本当に全然ですよ。掲載されるまで、と言うか掲載された後も全然気がつきませんでした。
たまたま見つけたからいいものの、もし気づきそびれていたら、ずっと知らないままだったと思う。仰天して担当者さんに教えたら、担当者さんも同じくらいびっくりされていたものです。

そして自分にとって本当に大事な、記念すべき、最初にいただいた日刊ゲンダイDIGITALでの書評と、それを拝見しての記事がこちらです。


「 次作を早く読みたい 」。


この気持ちに果たして応えられたのかどうか、今となっては判りません。
最新作『この季節が嘘だとしても』(講談社文庫)が出たのは去年の10月で、その際、担当者さんに献本をお願いしてはいたのですが。


ただ『真夜中のすべての光』も、当時の担当さんによると実は発売当時、ちゃんと献本されてたんだそうなんですよ。でも北上ラジオを聞くに、「本屋で見かけてたまたま買って読んだ」とのことで、おそらく献本なんてもう毎月山のように積み上がっていることでしょうから、見過ごされてしまってる可能性も大きいですよね……残念です。
今回、刊行が昨年10月になったのは出版社さん側の刊行ペース等、諸々都合があってここになったので、原稿ができあがってすぐだったらもっと早く出せてたんですよね。もっと早ければもしかしたら気づいてもらえていたかもしれなかったと思うと、今更ですが無念です。


編集者さんというのは皆さん本当に褒め上手で、「ものを書く人間が欲しいと思う言葉」を実に巧みに繰り出してくるのですが、それは多分に「書き手をその気にさせる」腹づもりがあっての技だと思うのですよね。
だからいつも「嬉しい、でも言葉半分、いや3分の1くらいで聞かねば」と自らに言い聞かせているのですが、北上先生からいただいたお褒めの言葉は何のおだても縛りも無い、まさに本心から出たものです。本当に本当に、どれだけ嬉しく力づけられたか。

特に『真夜中のすべての光』が出た当時は、まさにコロナ禍が始まって間もない辺りで、大手書店が軒並み閉店を決めた頃。当然ろくに話題にもならず、鳴かず飛ばずですっかりへこみました。
そこにこの書評です。もう涙が出る程嬉しかった。まさかこんな大御所の方から、こんなに手放しで褒めていただけるとは。

いつかお会いしてお礼を言いたいとずっと思っていて、同時に「一体どうしてこんなにも自分の作品達を気に入ってくださったのか」とずっと聞きたかった。
本当に、全くミステリではない、しかも早川作品が一点も無いのに、まさかハヤカワミステリマガジンで全著作紹介してもらってるだなんて思いもしないじゃないですか。心底驚きました(早川さんの懐の大きさも含めて)。
一体自分の本の何がそんなに先生の琴線に触れたのだろうなあ。嬉しくも気恥ずかしい。
ああ、本当はこれから書くすべての本を読んでもらいたかった。
早すぎる。


これから新しい本ができあがる度に、北上先生のあの言葉を思い出すことになるのだろうと思います。かなえることができなかった、けれどきっと、今はどこか別の場所でいつか必ず読んでくださることを信じて。

――――次作を早く読みたい。


北上次郎先生、本当に本当にありがとうございました。
 
 
 
 

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