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王を称えよ・ バーフバリとわたし〜完全版円盤発売を記念して(その2)


という訳で、前回に引き続き今回は「わたしとバーフバリの出逢い」について(なお、トップ画像は2017年に『王の凱旋』が公開された際の公式サイトから拝借してきたもので、画像下部の公開日時は当時のものなのでお間違えなきよう)。


『バーフバリ』の前編である『バーフバリ 伝説誕生』が日本公開されたのは2017年の4月。
ですがわたしがこの作品を見たのは、忘れもしません、2016年の11月3日、京都は文化博物館にて行われた「京都ヒストリカ国際映画祭」でした。

https://historica-kyoto.com/2016/


11月3日は文化の日。
連れ合いは休日出勤が入って泣く泣く戦線離脱、わたしはひとりで文博へ。
すると会場入りの際、見知った顔を見かけました。古くからの映画ネット友達です。
自分の中で彼女はそんなにインド映画好きという印象がなかったので、「珍しい、どうしたん」と尋ねると彼女答えていわく、


「 会社のインド人が 『 これ面白いよ 』 って言うたから 」



会社のインド人!!!


なんという魅惑の響きでしょう。断然羨ましさが募ります。
振り返ってみると自分は、会社の日本人や会社の中国人や会社のオランダ人や会社のスイス人や会社の台湾人や会社のタイ人や会社のシンガポール人や会社のドイツ人や会社の韓国人や会社のウクライナ人や会社のアメリカ人の経験はあったものの、会社にインド人がいたことはありませんでした。

しかも「 会社のインド人が面白いと言ったインド映画 」
これ程に信頼感の持てる推薦文が他にあるでしょうか。これから始まる138分間が愉楽に満ちた時間であることは保証されたも同然です。


席指定ではなかったので、二人一緒に並んで座って、観る。


観る。

面白い。
とても面白い。


が、だんだん、だんだんと、不安と言うか、「アレ……?」という気持ちがわいてくる。

面白い体験をしていると人は時間を忘れると言うけれど、それにしたって、インド映画を見慣れた自分の時間感覚ではそろそろ終盤戦に近づいてきているように思えるのですが……だけど全然、根本的な問題が一切、何ひとつ、全く解決される気配がありませんよ……?


だが無情にも時は過ぎゆき、映画内で、大変重要な問題に対しての大変衝撃的な回答がどどん、と提示される。


次の瞬間スクリーンに現れる文字。


「 To be continued 」



そして流れ出すエンドロール。
その中で「続編は2016年に予定してるからね!」的文言も。


ええええええええ。

口が開いた。
隣で彼女の口も開いていた。

今これを読まれている『バーフバリ』好きの皆様は思ったでしょう、「イヤそこ驚くところ……?」


驚くんですよ!!!


だって映画祭のチラシに載っていたタイトルはこうでした。

『BAAHUBALI: THE BEGINNING(原題)』

そしてチラシの見出しとあらすじはこう。

見出し
インド史上最大のブロックバスター日本上陸
世界が沸いた怪力バーフバリの誇り高き戦い

あらすじ
ある日、滝の前で赤ん坊を抱えた老女が兵士たちに追われていた。老女は命を落としたが、赤ん坊は村の女に拾われ、シバドゥと名付けられた。
その子は、たくましい青年として成長し、やがて自分が拾われた滝の上に何があるのだろうかと強い好奇心を持つようになる。そして遂に滝上の大地に辿り着く。
そこで彼はアヴァンティカという美しい女戦士と出会い、恋をする。彼女の一族はマヒーシュマティ王国という名の国との戦いを続けており、シバドゥは彼女に協力したいと申し出、戦士として王国に乗り込んでいく。
そこで、彼はその王国に囚われている女が実は自分の本当の母親であり、自分がその王国の王位継承者バーフバリであったことを知る。


以上……!
(何度見ても「世界が沸いた怪力バーフバリ」のフレーズがじわじわくる)

これサイトを見ると「みどころ」欄に「現在パート2が製作中」て書かれてるんですが、チラシにはその記載がなかった。
つまりわたし達は二人とも、「これが2部作の前編」ということを全く知らずに見ていたんです!
これ、十二分にびっくりしていい話ですよね!!


映画の後にはインドから来日されたプロデューサー、ショーブ・ヤーラガッダさんのトークショーがあり、それが済んで退場タイムとなった瞬間にわたし達は声をあげた、

「イヤちょっとコレ一体どうゆうこと!????」


私「これ話終わってないやん、会社のインド人はソコなんて言うてたん!?」
友「会社のインド人はそんなんなんも言うてなかったよ!」
私「ちょっと明日会社のインド人に聞いてきてよ、なんで教えといてくれんかったんて」
友「会社のインド人もう会社にいないんよ」
私「!????」
友「会社のインド人、インドのお正月とかでもうインド帰らはってんよ」
私「!!!!!」


ディワリ…………!!


そうだ、11月はインドの正月、ディワリではないか……!
そら帰るわねインド……。


その節のトークショーにてショーブ・ヤーラガッダさんいわく、「今の時点でまだ後編の完成はいつになるか判らない」と。
ちなみに前編である『伝説誕生』が本国公開されたのは2015年、そのエンドロールで「続きは2016年に!」と謳っているにも関わらず、2016年11月当時、まだ全くの未完成。
そしてこの時点では、第1作のこちらでさえも、日本公開の目処は立っていない状況。
イヤもうそんな……(涙目)。


ここ数年で本当に、日本でもちゃんと全国公開されるインド映画は増えました。
それは『きっと、うまくいく』やこの『バーフバリ』のおかげだなとつくづく思いますが、この当時はまだそれ程多くはありませんでした。
しかもこの映画、テルグ語映画。
よく言われる「ボリウッド」映画は圧倒的にヒンドゥー語映画で、日本に来るのも殆どがこれ。テルグ語やタミル語の映画は数少なかった。
つまりこの時点では、自分達はこの「後編」を見られる保証が全く無かったのです。
この時のわたし達の衝撃と絶望たるや……!


文博を出て後、二人して三条御幸町、現在『ギア』(だいすき)の劇場としても有名な1928ビル(だいすき)の地下1階、アンデパンダンに繰り出して飲んで食べて映画について語る語る語る。
お互い「本当にあそこで互いに気づけて良かった……!」「この映画の後に誰とも語り合えないなんて地獄だった……!」と邂逅を喜び合いました。

(軽く脱線ですが『ギア』何度でも見たくなる最高の舞台ですよ!)


それにつけても不安なのが「わたし達はこの話を最後まで見ることができるのだろうか」問題でしたが、ほぼ半年後、2017年4月に前編が『バーフバリ 伝説誕生』として無事日本公開。
あれよあれよと日本中に旋風を巻き起こし、同年末には後編『バーフバリ 王の凱旋』が公開されることに。
こうしてついにわたし達は、『伝説誕生』にて「な、なんだってー!!」的に終わったあの衝撃告白の続きを知ることができたという訳です。

終わり良ければすべて良し、とは言うもののしかし何故、「これは2部作の前編」てところを黙っていたのだ、会社のインド人……。

ちなみに『王の凱旋』が公開されてまだ間もない年明け2018年1月、自分と彼女、それから前後編を見た連れ合いとインド映画友人で新年会を開いた際は、『スターウォーズ エピソード8』と『ブレードランナー2049』と『バーフバリ前後編』トークでそれはそれは熱く盛り上がりました。
主にSWが槍玉にあがり、ブレードランナーはわたしが擁護にまわり、バーフバリは全員が絶賛であったことをここにお伝えしておきます(笑)。


ということでわたしとバーフバリの数奇な出逢いについての話を終わりますが、先述しました映画の後のトークショー、プロデューサーのショーブ・ヤーラガッダさんから、観客全員にインドからわざわざ運んでこられたスペシャルお土産の話をしたく、「おまけ」篇を。
次回乞うご期待。


     


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