【読書】2月に読んだ本 14冊
気づけば2月が終わっていました。雪降ったりあったかくなったり寒くなったりと落ち着かない2月。
今月読んだのは14冊。まー結構読んでました。
170回芥川賞受賞作「東京都同情塔」とっても面白かった!
図書館で借りる本も割とあるので、本の装丁を残したくて、読書記録用のインスタを始めました。
よかったらそちらもチェックしてみてくださいませ〜!
存在のすべてを / 塩田武士
30年前に起こった未だ未解決の二児同時誘拐事件。当時事件に関わった刑事、記者、被害者と加害者関係者が時を経て交わり、少しずつ絡まった糸を解いていく。
人物の描写が丁寧で、頭の中に彼らを想像するに容易かった。
読み進めるごとになにが善でなにが悪かを考えさせられる。
いやー、帯で久米宏も言ってたけど、これは確かに愛の物語ですね。
読後感最高でした。
満願 / 米澤穂信
読み終わるとゾワっとするミステリが6つ。中にはホラーと感じるものもあったが、「夜警」がいちばん人の愚かさ、浅はかさみたいなのを感じて面白かった。
ミスを認めず謝らず、隠そうとする人がいちばん罪深く、器が小さいというのは耳が痛い。
大なり小なり何かを誤魔化したことがない人なんていないだろうから、自分を見誤らないようにしなければ。
マリエ / 千早茜
バリキャリで収入もありおそらく見た目も良いであろうまりえ。
朝起きてヨガマット出してストレッチしてハーブティ飲んで香水をひとふり。アンティークの家具を買って、小麦粉料理を習って、行きつけのバーがあって。離婚してすぐ出会った年下男と付き合うことになるあたりはファンタジーかと思ってしまった。
そんな彼女から「結婚しなくても恋愛しなくても生活や老後の不安なく生きていける社会が正常」って言われても一気に冷めてしまう。結局お金があって生活に余裕があるからこそ、生き方を選ぶことができるし、そんなこと言ってられるんじゃないのかなあ。それは恵まれているってこと。
ただ、まりえの恋愛観はすっごくよくわかる。なんだけど、活字で読むとめちゃくちゃイラっとするのはどうしてなんだ。
うちの子が結婚しないので / 垣谷美雨
28歳の娘のために親婚活に乗り出す家族の話。
娘の友美が素直でいい子すぎるし、親夫婦もチカちゃんフクちゃんと呼び合っていて考え方もまあまあ現代的で理解があるし、こんな家族なかなかいないと思うけど、婚活に関するあれこれは実にリアル。
婚活は人間性を否定され傷つけられ、こんなことを何年も続けていたら本当に心が折れちゃう……。
早々に卒業できたらいいものの、作中に出てきた“娘が38歳で親婚活を始めて43歳になってもまだ続けている母娘”みたいなことになったら地獄すぎる……。
夜の道標 / 芦沢央
1996年に起きた殺人事件。殺されたのは誰もが認める人格者だった。
殺人犯、その殺人犯を匿う女、父親から虐待されている男の子、殺人を追う刑事。みんながそれぞれに相手のことを思っているようで独りよがりでもあり…。それぞれの思惑は最後の最後にやっと交わっていく。
どうして舞台をこの年代にしたのだろうと不思議だったのだけど、後半で明らかになる事件の核になる史実が、この年代にした理由に繋がり、言いようのない気持ちになった。
黒い絵 / 原田マハ
原田マハさんによる初のノワール小説。
初っ端「深海魚」でいじめ表現のキツさに一旦閉じたくなったけど、文量としては少なめであっという間に読了。
6本のうち前半4本は15、6年前の作品だそうで、わたしは後半2本が好きだったので今のマハさんの表現が好きってことなのかも。
結構賛否分かれている本作だけど、たしかにマハさんのファンはギョッとするだろうなあとは思う。官能表現がねぇ。ちょっと安っぽく感じてしまったな。
白ゆき紅ばら / 寺地はるな
志道と実奈子が運営する行き場のない母子を守る「のばらのいえ」から、高校卒業と同時に逃げ出した祐希と、逃げなかった紘果。彼女たちは何から守られ、何から逃げたのか。
世の中のボランティアに従事する人の中には上から目線の人が多くいる。自分は誰かを助けているんだという傲慢さ。お礼を言われなくてキレるような人はボランティアをすべきではないよ。
春日先生のような、対等な目線で手を差し伸べてくれるような人がいてよかった。
赤い月の香り / 千早茜
「透明な夜の香り」の続編。前作同様しっとりしていて静かでゆっくり流れる物語は変わらず。メインキャラクターが一香と対局にいるような満に変わったのに、物語の芯がぶれていないのが本当にすごい。
朔と一香は誰にもわからない尺度で続いていて、それをお互いがとても大切に育てているのが分かってよかった。
何かを抱えている人たちばかりが出てくるし、彼らは明らかに孤独だけれど、なぜか読み終わった後にほっとする不思議な感覚。今回も素晴らしかったです。
月の立つ林で / 青山美智子
人生にちょっぴり行き詰まっている、ポッドキャスト「ツキない話」のリスナーたちのお話。
青山さんらしく登場人物が少しずつ繋がっていて、人間は自分が見えている面だけがその人を構成しているのではなくて、多面的であることを忘れちゃいけないと気づかせてくれる。
仕事につまづいてしまった女性、母と娘の確執、素直になれない父と娘、夢が繋いだ友情、家族の本当の気持ち。みんなが自分の力で乗り越えていく逞しさに泣けてしまった。各章でひと泣きできる。
人と人の絆という不確かさを信じた先には、いいことあるって思いたい。
オール・ノット / 柚月麻子
奨学金とバイトで学費と生活費を工面する真央が、謎の販売員四葉と出会い人生が変わっていく。とはいえファンタジーのような好転がないところが逆に現実味があり、暗い気持ちにはなるものの面白く読めた。
真央の話から四葉、四葉の家族、友人…と話が奥行きを増し、それぞれの歴史と今が浮き彫りになっていく。
今思うと当たり前のことも、変人扱いされていたかつての時代をめげずに正しく生き抜いた人たちが、いつか必ず幸せになっていてほしい。
そして日本の近未来がこの物語のようにならないことを祈るばかり。
不審者 / 伊岡瞬
夫と息子、義母と暮らす家に20年前に生き別れた夫の兄が現れた。同じくして主人公の里佳子の周りで奇妙な事件が起こり始める。この男は本当に義兄なのか?ページを進めながら里佳子と共に犯人探しをしつつ、ところどころに違和感を感じ、最後の方でうっすら気づき、ああなるほどね!と膝を打つ。
これはどんでん返しになるのかな?
東京都同情塔 / 九段理江
一度覚えたら口に出したくなるタイトル「東京都同情塔」。
日本では訳のわからないカタカナ語が増えて、本来の意味を隠して本質から目をそらせようとしている節がある。そこに着目した本作、とても面白かった。
シンパシータワートーキョーと言いたくなくて東京都同情塔を広めようとしたのに、結局トーキョートドージョートーというポップな言い方になって返ってくる皮肉。こうやって日本語が蝕まれていくのかなぁ。
世論に引っ張られすぎた知識のない政治家たちが、的外れな多様性を叫んでいるけれど、東京都同情塔みたいなこと言い出しやしないかとヒヤヒヤするわ。
4月1日のマイホーム / 真梨幸子
最後10ページくらいでようやく真相が見えてくるのだけどそこまではいったい何を読まされているのか分からない。続くのは女たちのドタバタ会話劇。演技派女優たちの舞台で見てみたい気もしつつ、やっと答えが見えてきたか?と思ってもさらに二転三転していく。
真梨幸子さんの作品らしく気持ち悪くて、気づいたらバタバタ人が死んでいるという…。とりあえず私だったらそんな辺鄙なとこの家買わない(笑)
答えは市役所3階に / 辻堂ゆめ
市役所に開設された「2020こころの相談室」に訪れる、やり場のない想いを抱えた人たち。彼らの声に耳を傾けるカウンセラーが写し鏡となって彼らを導いていく。
受験や就職に希望が見えない学生、明日生きるお金もないホームレス、赤ちゃんを抱えて右往左往する母親、中傷されながら懸命に働く医療従事者と、営業停止を命じられる飲食店。
得体の知れないものと対峙しながら終わりの見えない自粛を続けていたあの頃、こんなふうに苦しんでいた人たちはきっと山ほどいるんだろうな。ただ、カウンセラーの推理が出来すぎな気もするけれど……。
3月に続く。
最後まで読んでいただきありがとうございます。よければまた、遊びに来てください。