デザートは煎餅🍘
ぱりぱり ぽりぽり
お腹いっぱいなので、煎餅を食べる。
ばりばり ぼりぼり
はいはい 言いたい事は分かります。
「それ、もはや飯じゃん」
確かに、米には違いないのだが。
焼きそばをオカズに米を食べながら、豆腐と枝豆とフライドポテトをツマミに麦酒を飲んでいる私には、穀物=主食という概念はございません。
食べ物=穀物。
ってゆーか、デザートにケーキを食べる種族と一体何が違うのか?あれパンやないかい。煎餅かケーキかは、塩か砂糖かの差よね?🤔
台所にはいつも、煎餅がある。
テーブルに置かれることはない。
煎餅様は、ダイニングキッチンの、リビングから死角となる柱の麓に鎮座なさると決まっている。
僕の父は、亡くなった後の多大なる美化も及ばぬほど最低な人間だった。DVとか虐待という言葉がなぜあの時無かったのか…いや、あっても僕は訴える勇気を持てなかっただろうけど、家族は皆、父が怖くて仕方なかった。
ご飯を食べないと怒られ、食べ過ぎると怒られる。早すぎると怒られ、遅すぎても怒られる。父の冗談に笑わねば怒られ、勝手に笑うと怒られる。あといくつ暗黙のルールがあったろうか…ともかく、小学生の僕にとって夕食は、大株主への接待に他ならなかった。
小麦粉と芋と米が並ぶ会食が終わり、ほっとした後、唯一食べるかどうか「選ぶ」ことが許されていたもの、それが、母が好きで買い置いている「おせんべい」だった。
煎餅は、誰が言い出すともなくリビングの死角に置かれた。さっき話したかったことを、ようやく呟ける。溜めていた涙も、流すくらいはできる。父の姿を遮る幅1mほどの柱は、鳥籠で羽ばたく僕にとって、大空と思い込むに十二分な広さだった。
ぱりぱり ぽりぽり
お腹いっぱいなので、煎餅を食べる。
それは何故だかしょっぱいけれど
ケーキと何が違うのさ。
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