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「珈琲屋に通ってみた」〜旅する蝶

職場で指をケガして以来、2週間弱ほど仕事が出来ず休んでいた。

しかし、指以外は元気だ。

少し前に、

(私、自分から誘えると思う友達は少ないなぁ)

と考えていたけれど、ケガして気づいだのは、

「誘ってくれる友達」はたくさんいたのだ。

ありがたい事だと思う。

先週のある日も朝病院に行き、ランチの集まりに誘ってくれた友人の迎えの車が来るまで珈琲屋で待つ事にした。

その日は夜中から続く大雨。

家から病院までは25分歩いたが、病院から珈琲屋までは10分かからない。

だから

「珈琲屋に迎えに来て」

と頼んだのだ。

朝の11時前に珈琲屋に着くと、それほど広くない店内は雨にも関わらず大入りだった。

知らない顔ばかりだと、どこに座ろうかと迷うところだったが、顔馴染みになった写真家の方がいた。

朝に出会うなんて珍しい。

いつもは、夜にやってくる方なのだ。

山の中のライブハウスでもばったり会い、家まで送ってもらった事があるので、それで顔馴染みになった。

「今日はかりんさんがこの時間に来ると思ったからこの時間に来たんだよ」

もちろん、それはウソだと分かっているから笑った。

「ここに座っても良いですか?」

相席させてもらった。窓側の席だったから、迎えの車が来たらすぐ分かるだろう。

「最近は八幡湿原に行ってきましたよ」

写真家のHさんは、自然や鳥が好きな人なので、私もそんな話をする。

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(撮影は私で八幡湿原。インスタ掲載版)

「ああ、行ったんだね。良い時だったろう」

「うん、カキツバタは終わってたけどね。

その前の週は、宮島の裏に抜ける山道を歩いてきたんですよ。

雨だったけど…蝶がたくさん飛んでいてね。
ここは天国か?と思うほど綺麗だったの」

しばらく考えてHさんが話し出しだ。

「三次に作木という町があってね」

「サクギ?」

「そこには、この季節、蝶がたくさんやってくるんだ。

蝶がやって来るように、フジバカマという花を植えているんだよ」

「フジバカマ?」

「そう、フジバカマ。そこにやって来る蝶は遠くの外国からやってくるんだ。

蝶を捕まえて、羽にマジックでメッセージを書く。

そして離した蝶がまたよその国に飛んで、よその国の人がメッセージを見るんだよ」

「へえ!マジックで書いて大丈夫なの?死なないの?」

「大丈夫。ほら、見てご覧」

Hさんが携帯を取り出し、蝶の写真を見せてくれる。

「本当だ!アルファベットで何か書いてある!」

蝶にとっては迷惑な話だろうけれど、伝書鳩みたいで素敵な話だと思った。

蝶に書かれたメッセージが、平和や幸せを願うものだったら良いと思う。

若い頃の旅を思い出した。

カナダのユースホステルを転々と旅した時の事。

ユースホステルには、ノートが置いてあった。ノートをめくるとメッセージが書いてある。

そのメッセージの中に、別の場所で知り合った人の形跡が残されている事があるのだ。

それを読んで、ノートの中での再会を心の中で喜び、知人の旅の安全を願い、私も来る人の為にノートに跡を残す。

まだスマホもインターネットもSNSも無かった時代の事だ。

「…ご主人と、行ってみたら良いですよ」

うなずきながら、そうだね、うちの人とが良いかもしれないと思った。
もしかしたら、誘いたかったのかもしれないけれど。

Hさんには実は、私を八幡湿原に連れて行きたいと言われていたのだ。

冬の寒い時だったか。

湿原は、芸北という島根にも近い山の中にある。
冬は雪道になると大変だ。

長距離ドライブの車に乗る自信が無いまま、いつの間にかコロナ騒動で会うことも無くなり忘れていた。

そうこうするうちに友人の車が、車の中から手を振りながら店の前を通り過ぎるのが見えた。

店をのぞくかと思ったけど、駐車場で待っているかもしれないと思い、急いで会計を済ませた。

「とっても美人さんなんだよ。お店に顔出してくれたら良いのにね」

と言ったら、店のお客さん皆が振り向いたからおかしかった。

私のランチ先を聞いて、珈琲屋のおとうさんが若店主に

「珈琲豆を持たせてやってくれ。急いで。豆のままでいい。向こうに引くものがあるから」

と言い、若店主が大急ぎで袋に詰めてくれた。

ランチ先の元々のオーナーさんは、去年までこの珈琲屋にプライベートで通ってくるお客さんでもあった。

朝から夜まで仕事の合間の、ほんのひと時に、恋女房と呼ぶ妻を車に乗せてドライブにやってきていたのだ。

去年の秋に亡くなり、今は恋女房さんが店を切り盛りしている。

珈琲豆は無事、恋女房さんに渡したよ。
応援の気持ちはきっと伝わったはず。

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焼肉ランチは550円でご飯おかわり自由。
お肉をダブルでつけて990円。

がんばっている恋女房さんに会えて良かった。
私も頑張ろうと思う。

(ランチ先の元オーナーと恋女房さんの話は本になっていて…全国の書店注文で買えます)

ランチ会は女子5人。ついでにもう一軒。

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街のウクレレ愛好家や手芸作家さん、ミュージシャンが集う店。

こちらも女性オーナーさんが頑張っている店。

ここまで書いて、私自身が渡り蝶の様だと思いつつ…たくさんの出会いの一日、ありがとう!

《文章ここまでで全部ですが、久しぶりに投げ銭導入です。この日のお買い物写真載せてます》

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