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【試し読み】5月17日発売『フットボール新世代名将図鑑』から「はじめに」を先行公開!

結城康平氏3冊目の著書!
現在のトップ監督を蹴落としていくモダンフットボールの申し子たちを一挙に収録し、
思考、ゲームモデル、相関図、将来像などを紐解きながら、近未来のフットボール界を牛耳る監督を占っていく一冊『フットボール新世代名将図鑑』が5月17日より順次書店へ並びはじめます!(一部地域では遅れがあるところもございます)
今回は本書の「はじめに」を発売に先駆けて公開です。

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書影はAmazonにリンクします
フットボール新世代名将図鑑
ページ数 288
判型 A5
定価 2090円(税込)
ISBN:9784862556028
出版社 カンゼン
発売日 2021年5月17日

今、欧州を中心にペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップをトップの座から引きずり下ろそうと、最新鋭の理論を武装した「青年監督」たちが虎視眈々と牙を研いでいる。
フットボールの未来を担うユリアン・ナーゲルスマン(来季バイエルン・ミュンヘン監督へ就任決定)とぺパイン・ラインダース(リヴァプールアシスタントコーチ)を筆頭に、現在のトップ監督を蹴落としていくモダンフットボールの申し子たちを一挙に収録。
思考、ゲームモデル、相関図、将来像などを紐解きながら、近未来のフットボール界を牛耳る監督を占う。

はじめに

 ペップ・グアルディオラとジョゼ・モウリーニョ。通訳時代のモウリーニョは、バルセロナで出会った男がフットボールの戦術史を変革する存在になることを想像すらしていなかったはずだ。しかし、それはグアルディオラも同じだろう。通訳としてボビー・ロブソンを助けていたポルトガル人は、故郷に戻ると監督としての才能を開花させる。ポルトを率いて旋風を巻き起こすと、驚異的な速度で欧州フットボールの檜舞台に駆け上がることになる。チャンピオンズリーグを制覇した実績を評価されてチェルシーに就任すると、強豪クラブの指揮官を歴任。優勝請負人としての称号で知られるようになった男は、現実主義的なフットボールで堅実に勝利することを生業としている。
 一方のグアルディオラもバルセロナで黄金時代を築くと、バイエルン・ミュンヘンに就任してドイツのフットボールに鮮烈なインパクトを残す。イングランドのマンチェスター・シティでも優勝を経験した彼は、華麗な攻撃で相手を圧倒する「ポジショナルプレーの伝道師」として各国に爪痕を残している。因縁の対決は舞台を変えながら今も続いているが、最早モウリーニョ(58歳)もグアルディオラ(50歳)も「若手監督」ではない。同時にグアルディオラの新たな宿敵として台頭したユルゲン・クロップも、すでに53歳。監督としては働き盛りだが、新世代に追われる立場になっていることは確かだ。モウリーニョ、グアルディオラ、クロップ。2000年代頃から欧州の最先端をリードしてきた3人の名将に、マッシミリアーノ・アッレグリ(53歳)やアントニオ・コンテ(51歳)、マウリシオ・ポチェッティーノ(49歳)、ディエゴ・シメオネ(51歳)という同年代の指揮官が続いていく。
 第76期将棋名人戦のPVで、先崎学九段は「あらゆる世界は、毎日陽が東から昇るように、新しい時代を若者が作るのを求めている」という名文を残した。新しい時代を作るべく、現在の名監督に挑戦する若き才能が求められているのは間違いない。同時に、その壁の厚さはフットボール史でも特筆すべきレベルだろう。グアルディオラとモウリーニョ、クロップは欧州トップの座に君臨しており、プレミアリーグを盛り上げている。多くの優秀な指導者が集まるプレミアリーグは世界でも屈指のリーグとなっており、今季はマルセロ・ビエルサというレジェンドも加わった。クリスタル・パレスではロイ・ホジソン(73歳)がキャリアを続け、WBAではサム・アラダイス(66歳)が監督に復帰しており、ベテランもまったく席を譲る気はない。そのようにプレミアリーグでは若手監督にとって厳しい状況が続いているが、少しずつ優秀な若手の抜擢は進んでいる。
 ミケル・アルテタを抜擢したアーセナルやフランク・ランパードが率いたチェルシーは、チームで活躍した元選手にクラブの命運を託している。同時にクロップやモウリーニョは自分のフットボールとは異なる価値観をチームに加えようと、若手指導者を自らの右腕として抜擢している。特にクロップのフットボールを大きく変貌させた参謀、ペパイン・ラインダース(38歳)はポテンシャルを高く評価されている。若い監督が簡単にチャンスを掴める環境ではないが、スペインやイタリアでも少しずつ実績を積み上げる監督も出てきている。
 特にイタリアでは元プレーヤーの躍進が印象的で、ラツィオで長期政権を築きつつあるシモーネ・インザーギはその筆頭だ。世代交代を虎視眈々と待つ指導者が列に並ぶ中、ドイツでは大胆な若手指導者の登用が続く。その中でもユリアン・ナーゲルスマン(33歳)は別格で、世代を象徴する存在となるだろう。欧州の舞台で新世代のフットボールを披露したナーゲルスマンに刺激を受け、多くの若手指導者が爆発的に5大リーグを制圧する。そのような未来予想図も、決して夢物語ではない。そんな状況だからこそ、「未来の名将」を紹介することにも価値があるはずだ。ナーゲルスマンを追うのは、トップレベルの選手経験を指導に活用する元レジェンド選手なのだろうか。それともナーゲルスマンの最年少監督記録を塗り替える青年監督が現れるのだろうか。

結城康平

プロフィール


結城康平(ゆうき・こうへい)
宮崎県出身。スコットランドへの留学を経て、フットボールライターとしての活動を開始。海外の文献、論文を読み解くスキルを活かし、ヨーロッパの概念を日本に紹介している。2019年に『欧州サッカーの新解釈。ポジショナルプレーのすべて』(ソル・メディア)、2020年に『“総力戦"時代の覇者 リバプールのすべて』(ソル・メディア)を上梓。通訳・翻訳・編集・インタビュアーとしても活躍の幅を広げている。

書籍の概要

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