泉聲悠韻

隠居の徒然に、中国古典、中国語、北京、香港、映画、比較文化、中島みゆきなどあれこれ雑多…

泉聲悠韻

隠居の徒然に、中国古典、中国語、北京、香港、映画、比較文化、中島みゆきなどあれこれ雑多な記事を綴っています。

マガジン

  • 『幽夢影』

    清初の文人張潮の小品文を集めた書物です。 格言のような文章ですが、お説教っぽくなく、風雅で洒脱なところが好きです。

  • 大谷翔平

    MLB&大谷翔平について独り言です。

  • 中国の古典小説

    中国の古典小説(志怪・伝奇・白話長編小説)についての記事を集めました。

  • 比較文化

    言語表現を比較して、その背景にある文化の違いを考えてみました。

  • 中島みゆき

    中島みゆきに関する雑多な記事を集めました。

最近の記事

  • 固定された記事

【中国の思想と文化】陶淵明「桃花源記」~「洞天」の別世界、「小国寡民」の理想郷

ユートピアと桃源郷 理想郷を語る時、わたしたちは、しばしば「ユートピア」や「桃源郷」という言葉を使います。  「ユートピア」は、ギリシャ語で「どこにもない場所」という意味で、 16世紀イギリスのトマス・モアの著書に由来します。  一方、「桃源郷」は、中国・東晋の詩人陶淵明の文章「桃花源記」に登場する架空の土地の呼び名です。  漁夫がふと迷い込んだ別世界、俗塵から隔絶された桃源郷は、東洋の理想郷の代名詞です。  「桃花源記」は、漢文教材に採られることも多く、我々日本人

    • 風雅な格言集『幽夢影』⑭~「酒は好むべきも座を罵るべからず」

      ――酒は好きでも構わないが、相手にからんではいけない。 色事は好んでも構わないが、身体を壊すほどではいけない。 金銭は好んでも構わないが、心をくらまされてはいけない。 気概を好むのは構わないが、道理を踏み外してはいけない。 スマートな生き方 中国語には「酒色財気」という言葉があります。 人々が最も好むものであり、同時に最も人に害を与えやすいもののことで、「人生四戒」と呼ばれています。 「酒に溺れること、色を漁ること、財を貪ること、感情任せになること」 を指しています。

      • 風雅な格言集『幽夢影』⑬~「濁富たるは清貧たるにしかず」

        ――不義にして富むよりも、清貧で暮らすほうがよい。 憂いに満ちた生涯を送るよりも、安楽に死んだほうがよい。 「貧」と「富」 「清貧」とは、ただの貧乏ではなく、心が清らかで潔白で、貧しい暮らしに安んじていることを言います。 「濁富」はその対極にあり、不義にして富むこと、道徳に反する不正な手段で裕福になることを言います。 「清貧」を良しとし「濁富」を悪しとする言説は古くからあり、『論語』「述而」篇で、孔子は次のように語っています。 疎食を飯い水を飲み、肱を曲まげて之を枕

        • 風雅な格言集『幽夢影』⑫~「やむを得ずして諛(へつら)うときは・・・」

          ――どうにも仕方なくて人に諛う時は、口で諛うべきであり、 筆を執って諛ってはいけない。 どうにも仕方なくて人を罵りたい時もまた、口で罵るべきであり、 筆を執って罵ってはいけない。 処世の秘訣 「どうしようもなくて人に頭を下げなくてはいけない時、媚びておべっかを使って人に何かを頼まなくてはいけない時、そんな時は口頭で頼むがよい。決して文章に書き残してはならない」と語っています。 また、「どうしても我慢できなくて相手を叱責したり罵倒したりしたい時、そんな時も口頭で叱るなり罵

        • 固定された記事

        【中国の思想と文化】陶淵明「桃花源記」~「洞天」の別世界、「小国寡民」の理想郷

        • 風雅な格言集『幽夢影』⑭~「酒は好むべきも座を罵るべからず」

        • 風雅な格言集『幽夢影』⑬~「濁富たるは清貧たるにしかず」

        • 風雅な格言集『幽夢影』⑫~「やむを得ずして諛(へつら)うときは・・・」

        マガジン

        • 『幽夢影』
          14本
        • 大谷翔平
          6本
        • 中国の古典小説
          39本
        • 比較文化
          9本
        • 中島みゆき
          15本
        • 中国古典インターネット講義
          18本

        記事

          【MLB ルール改正】 今日はオールスター⚾「馬鹿か」と言われるのを覚悟で独断&偏見の私案です。①ロボット審判導入🤖②ストレートの四球は2塁へ⏩これならイライラする誤審や敬遠はなくなる!時短目的ならピッチクロックよりもっと大胆に、③試合7回制、④延長戦無し、同点引き分け🤝とか?

          【MLB ルール改正】 今日はオールスター⚾「馬鹿か」と言われるのを覚悟で独断&偏見の私案です。①ロボット審判導入🤖②ストレートの四球は2塁へ⏩これならイライラする誤審や敬遠はなくなる!時短目的ならピッチクロックよりもっと大胆に、③試合7回制、④延長戦無し、同点引き分け🤝とか?

          〇太郎: Go, Shohei !!🐾

          〇太郎: Go, Shohei !!🐾

          唐代伝奇「人虎伝」~中島敦「山月記」の元ネタを読む🐯

          唐代の伝奇小説「人虎伝」を読みます。 自尊心の強い傲慢な男が、ある日突然虎に変身してしまい、その苦悩を旧友に打ち明ける、という物語です。 中島敦の「山月記」の原作としてよく知られている小説で、高校の漢文教材にもしばしば採り上げられています。 少々長くなりますが、書き下しと現代日本語訳で全文を読みます。 🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅 🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅 🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅🐅 🐅🐅🐅

          唐代伝奇「人虎伝」~中島敦「山月記」の元ネタを読む🐯

          風雅な格言集『幽夢影』⑪~「老成の人は須く少年の襟懐有るべし」

          ――若者は、老人の見識を持つことが大切である。 老人は、若者の心意気を持つことが大切である。 若者と老人 『幽夢影』は、格言集とは言え、説教臭さや教訓っぽさがありません。 そうした中では、この一文は、数少ない処世訓の文章の一つで、中華圏ではよく知られているものです。 「若い者は若いことを言い訳にせず、しっかりと成熟した見識を持つべし、老人は老いたことを言い訳にせず、進取の気を持って前向きに生きるべし」と語っています。 耳に痛い言葉です。 少年人須有老成之識見 老成人

          風雅な格言集『幽夢影』⑪~「老成の人は須く少年の襟懐有るべし」

          風雅な格言集『幽夢影』⑩~「蝴蝶の夢に荘周と為れるは、蝴蝶の不幸なり」

          ――荘周が夢で胡蝶になったのは、荘周にとっては幸せだ。 胡蝶が夢で荘周になったのは、胡蝶にとっては不幸なことだ。 胡蝶の夢 この一文は、荘子の有名な寓話「胡蝶の夢」に基づいています。 「胡蝶の夢」の話は、『荘子』の「斉物論」篇に、次のようにあります。 昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩栩然として胡蝶なり。自ら喩しみて志に適えるかな、周たるを知らざるなり。俄然として覚むれば、則ち蘧蘧然として周なり。知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを。周と胡蝶とは、則ち必ず分

          風雅な格言集『幽夢影』⑩~「蝴蝶の夢に荘周と為れるは、蝴蝶の不幸なり」

          風雅な格言集『幽夢影』⑨~「花を愛する心を以て美人を愛すれば・・・」

          ――花を愛するような気持ちで美人を愛すれば、 その人をよりよく理解し、新たな情趣も湧いてくる。 美人を愛するような気持ちで花を愛すれば、 その花をますます愛惜し、深い感情が湧いてくる。 「花」と「美人」 『幽夢影』には、「花」を語った文章、「美人」を語った文章がたくさんあります。 その中から、「花」と「美人」が両方揃って出てくる文章をいくつか拾ってみました。  賞花宜對佳人  花を賞でるには、美人と向かい合って賞でるのがよい  醉月宜對韻人  月夜に酒を飲むには、風流な

          風雅な格言集『幽夢影』⑨~「花を愛する心を以て美人を愛すれば・・・」

          風雅な格言集『幽夢影』⑧~「松下に琴を聴き、月下に簫を聴き・・・」

          ――松の木陰で琴の音を聴き、 明月の夜に簫(縦笛)の音を聴き、 渓谷の川辺で滝の落ちる音を聴き、 山中で梵唄(読経)の声を聴けば、 耳の奥に別世界があるかのようだ。 自然界の「音」 『幽夢影』には、この他にも自然界の「音」について綴った文章がいくつかあります。   水之為聲有四   水の音は四つある   有瀑布聲     滝の落ちる音   有流泉聲     泉の流れる音   有灘聲      早瀬の過ぎる音   有溝澮聲     田畑のみぞの音   風之為聲有三   風

          風雅な格言集『幽夢影』⑧~「松下に琴を聴き、月下に簫を聴き・・・」

          わが家にお迎えした時の〇太郎、 手のひらサイズでした🐾 目に難病+てんかん持ちでしたが、 奇跡的に自然治癒しました! 嗚呼、天の恵みか、〇太郎の根性か💪💪

          わが家にお迎えした時の〇太郎、 手のひらサイズでした🐾 目に難病+てんかん持ちでしたが、 奇跡的に自然治癒しました! 嗚呼、天の恵みか、〇太郎の根性か💪💪

          ぴったり500グラムだった頃🐾

          ぴったり500グラムだった頃🐾

          中国怪異小説⑯「黄英」~菊の妖精(『聊斎志異』より)

          清代の文人蒲松齢が著した怪異小説『聊斎志異』五百篇は、妖しげな雰囲気の中で、神仙・幽鬼・妖精らが繰り広げる怪異の世界が展開されています。 その中から、菊の妖精の話「黄英」を読みます。 「黄英」は、菊マニアの男と菊の妖精の物語です。 彼らの出会いは、表面上は偶然のものとして描かれていますが、実は、男の「癖」が引き寄せた必然的なものでした。 作者蒲松齢も「十月孫聖左齋中賞菊」と題する詩に、  我昔愛菊成菊癖  我昔 菊を愛し 菊癖を成す  佳種不憚千里求  佳種 千里に

          中国怪異小説⑯「黄英」~菊の妖精(『聊斎志異』より)

          〇太郎 VS 〇太郎

          〇太郎 VS 〇太郎

          中国怪異小説⑮「画皮」~美女に化けた妖怪(『聊斎志異』より)

          清代の文人蒲松齢が著した怪異小説『聊斎志異』500篇は、妖しげな雰囲気の中で、神仙・幽鬼・妖精らが繰り広げる怪異の世界が展開されています。 その中から、美女に化けた妖怪の話「画皮」を読みます。 「画皮」の話は妖怪譚ですが、幽霊に関する民間説話のモチーフを使っています。 民間説話では、死者がもう一度人間に生まれ変わるには、身代わりが必要とされています。つまり、生きている人間が一人死なないと自分が生まれ変われないのです。これは、あの世とこの世の人数調整のようなもので、どちら

          中国怪異小説⑮「画皮」~美女に化けた妖怪(『聊斎志異』より)