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風雅な格言集『幽夢影』⑧~「松下に琴を聴き、月下に簫を聴き・・・」

松下に琴を聴き
月下に簫を聴き
澗辺に瀑布を聴き
山中に梵唄ぼんばいを聴けば
耳中別に同じからざる有るを覚ゆ


(清・張潮『幽夢影』より)

――松の木陰で琴の音を聴き、
明月の夜に簫(縦笛)の音を聴き、
渓谷の川辺で滝の落ちる音を聴き、
山中で梵唄(読経)の声を聴けば、
耳の奥に別世界があるかのようだ。


自然界の「音」

『幽夢影』には、この他にも自然界の「音」について綴った文章がいくつかあります。

  水之為聲有四   水の音は四つある
  有瀑布聲     滝の落ちる音
  有流泉聲     泉の流れる音
  有灘聲      早瀬の過ぎる音
  有溝澮聲     田畑のみぞの音
  風之為聲有三   風の音は三つある
  有松濤聲     松の樹に吹く風の音
  有秋草聲     秋の落ち葉の散る音
  有波浪聲     打ち寄せる波の音
  雨之為聲有二   雨の音は二つある
  有梧蕉荷葉上聲  梧桐や蓮の葉に落ちる音
  有承簷溜筒中聲  雨滴が竹のといに落ちる音


  春聽鳥聲    春には鳥の声を聴き
  夏聽蟬聲    夏には蝉の声を聴き
  秋聽蟲聲    秋には虫の音を聴き
  冬聽雪聲    冬には雪の音を聴き
  白晝聽棋聲   昼間には碁を打つ音を聴き
  月下聽簫聲   月夜には簫を吹く音を聴き
  山中聽松風聲  山中で松に吹く風の音を聴き  
  水際聽欸乃聲  川辺で船頭の掛け声を聴けば  
  方不虛生此耳  この耳が無駄ではないと分かる

松下聽琴
月下聽簫
澗邊聽瀑布
山中聽梵唄
覺耳中別有不同

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