狩野誠

落語大好き、音楽大好き、読書大好き、お酒大好き、女房まあ好き

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最近の記事

400字で分かる落語「隠居」

119:隠居(いんきょ) 【粗筋】 隠居が二階に寝ている女中に夜這いに行こうとして、階段を踏み外して落ちて目を回す。物音に気付いた婆さんが飛んで来て、「もし、お爺さん、お死にかえ、お死にかえ」と呼ぶと、隠居も気付いて、「ふう、ふう、いや、しにではない」 【成立】 安永2(1773)年『口拍子』の「隠居夜這い」。「死に」と聞いたのに「しに」ではないと答えたのである。え、何をしに……うぶな私にはよく分からない。安永2年『今歳花時』の「疝気」は逆で、疝気持ちが遊びに行って股を火鉢で

    • 400字で分かる落語「印鑑証明」

      120:印鑑証明(いんかんしょうめい) 【粗筋】 区役所に来た男、「ここが区役所ですか、みんな区役所ですか、あなたも区役所ですか」と質問攻め……一々口をはさまずにいられない男なのだ。ようやく印鑑証明が欲しいと分かるが、字が書けないので代書を頼む。  続いて来た女性は印鑑証明を郵便局にもらいに行った経緯を詳しく話す。書類を用意するが、「この鈴木さんというのが、あなたの御主人ですか」と言うと、近所の人で世話になった……と、お涙頂戴、講談から浪曲まで使って説明する。が委任状も何もな

      • 400字で分かる落語「鰯干し」

        【粗筋】 女房が鰯を開いて干す仕事をしているのを見た亭主、どうして開いて干すのだと尋ねると、「丸干しは乾きが襲い」と答えた。働く女房の尻を見てその気になり、終わったが紙がない。仕方なく自然乾燥に任せたが、女房が先に仕事に戻ったので、「何だ、もう乾いたのか。俺のはまだだ」「そりゃそうさ。丸干しは乾きが遅い。 【成立】 安永2(1773)年『さしまくら』の「畠中」。うぶな私には何だかよく分からない。昭和40年代の速記では、鰯干しではなく野良仕事。前置きも何もなく、「おめえさんのは

        • 400字で分かる落語「鰯売り」

          116:鰯売り(いわしうり) 【粗筋】 「鰯、鰯」と売り歩くと、後ろから「篩(ふるい)、篩」と売って歩く。これでは鰯が古いように聞こえるというので喧嘩になったところを、やはり物売りが止め、「じゃあ、私が丸くおさめるから」と三人で歩くことになった。 「鰯、いわしコ」「ふるーい、篩」とやると、三人目が、「ええ、古金(古かねえ)」 【成立】 商売物の枕に今でもよく聞く。 【蘊蓄】 『江戸字引』 古金買いは、貴金属は除くその他の金属類で、組合があって組み合い外の者は買うことは出来ない

        400字で分かる落語「隠居」

          400字で分かる落語「岩おこし」2

          115:岩おこし(いわおこし):その2 「菅原道真が九州へ左遷されることになって大坂で船待ちしているとき、老婆が「おこし」を作り差し上げたことに喜ばれ、ご自分の着ていた小袖を与え、この梅鉢の紋を「おこしの紋」とせよと言われ、「大阪のおこし」に梅鉢が使われるようになったと伝承されている」  また、次のような落語を紹介していただきました。  伊勢・二見が浦の「天の岩屋」。弟である素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱暴で天照大神(あまてらすおおみかみ)がお隠れになった所である。世の中が

          400字で分かる落語「岩おこし」2

          400字で分かる落語「岩おこし」1

          115:岩おこし(いわおこし):その1 【粗筋】 伊勢・二見が浦の夫婦岩が暴風雨で倒れ、どうして起こそうと相談をしていると、現れた老人が、杖の先でチョイと叩いただけで岩を起こした。 「あの人はいったい何者や」「大阪二つ井戸の岩おこし屋や」 【成立】 上方噺。東大の『落語辞典』ではこれで一席に扱っている。聞いたことはない。 【蘊蓄】 岩おこしは元禄元(1688)年、大阪道頓堀で売り出されたが、大阪では運河の工事が盛んで、大きな岩が掘り出されたため、「大阪の掘り起こし、岩おこし」

          400字で分かる落語「岩おこし」1

          400字で分かる落語「色事根問」

          113:色事根問(いろごとねどい) 【粗筋】 「女に惚れられるには、一見栄、二男、三金、四芸、五精、六未通(おぼこ=女経験がないこと)、七声詞(せりふ)、八力、九胆、十評判という」  もてたい男が一つ一つ確認するが、全て駄目だと念押しをして、 「最後は十評判だが、お前は評判も悪い。この間、風呂屋で、汚い下駄を上等の下駄と履き替えて帰ったそうやないか」 「あほなことを。私がそんなことをしますかいな」 「そうか、嘘か。なぜそんな噂になったんやろ」 「ほんまに……私は裸足で風呂へ行

          400字で分かる落語「色事根問」

          400字で分かる落語「いろがたき」

          113:いろがたき 【粗筋】 吉原の佐香穂に男がいると聞いて相手の男を捕まえると、梅様と呼ばれる侍で、花魁とは深い仲ではないと否定され、村さんが馴染みと聞いてもう二度と来ないと言う。これがきっかけで一緒に座敷に上がるようになる。やがて梅様は国元に帰ることになり、村さんは最後になるかも知れぬと、丹精を込めて作った白梅の盆栽を届けるように頼んで、その夜は二人きりにしてやる。村さんも吉原へ行く気をなくしていたが、佐香穂が出家したと聞いて庵を訪ねて行くと、梅様が殿様に殉死し、菩提を弔

          400字で分かる落語「いろがたき」

          400字で分かる落語「入れ札」

          112:入れ札(いれふだ) 【粗筋】 悪代官を斬って赤城山に籠った国定忠治、「赤城の山も今宵を限り、生まれ故郷の国貞村や、縄張りを捨て国を捨て、可愛い子分の手前たちとも、別れ別れになる首途(かどで)だ」と子分と別れて赤城山を離れることにした。  全員が一緒に行きたがるが、子分同士で入れ札をして3人だけを連れて行くことにする。一番古い九郎助だが、人望はない。結局1票しか入らなかった。弥助が怒って、「兄ぃに入れたのが俺一人とは情けねえ」と言う。こいつ叩っ斬ろうと思った……九郎蔵、

          400字で分かる落語「入れ札」

          400字で分かる落語「入れ替え女夫」

          111:入れ替え女夫(いれかえふうふ) 【粗筋】 夫が帰ると妻は欠伸交じりの出迎え。毎日遅いので待ちくたびれたと言う妻に、上司との付き合いで嫌でも呑みに行くので男の方が大変だと言う。どちらがいいか言い争いになり、とうとう性転換をして役目を入れ替えることになった。早起きに慣れない元夫の妻が、元妻の夫に起こされて、会社へ行く元妻の夫のために、食事の用意を……ああ、ややこしい。元を省略。妻が「会社では女の子にちょっかいを掛けないでね、私覚えがあるから」と送り出す。夜になって夫が帰る

          400字で分かる落語「入れ替え女夫」

          400字で分かる落語「いらちの丁稚」2

          110:いらちの丁稚(いらちのでっち):その2 【粗筋】 丁稚に、二階に火が入っているか見て来いと言うと、二階が火事では大変だと言う。灯りが点いているかどうか見て来るのだと言って行かせると、戻って来て、 「暗くて分かりませんでした」 【成立】 安永3(1773)年『千里の翅』の「行灯」は、行灯につまづいて叱られ「こんな暗い所に置くのが悪い」という噺。享保11(1726)年『軽口初笑』巻一の「念の上にも念」は、行灯を置くよう命じられて「こんな暗い所に置いても大事ごさいませんか」

          400字で分かる落語「いらちの丁稚」2

          400字で分かる落語「いらちの丁稚」1

          109:いらちの丁稚(いらちのでっち):その1 【粗筋】 旦那が丁稚に、江戸の店に急ぎの使いを頼む。いらちの丁稚は用件も聞かずに飛び出して、何日かして戻って来た。「どうした、江戸まで行ったのか」 「へえ、行きましたけど、別にかわりはありませんでした」 【成立】 1713(正徳3)年の『軽口福蔵王』巻二にある「粗相な寄合」と、1773(安永2)年の『飛談語』の「新参」。前者は「ほんに用事を聞きて来る筈でござったものを」、後者は「幸ひお留守でござりました」という落ち。これらは「粗

          400字で分かる落語「いらちの丁稚」1

          400字で分かる落語「いもりの黒焼き」2

          108:いもりの黒焼き(いもりのくろやき):その2 【粗筋】 近所の年増をものにしたいと、いもりの黒焼きを買って来て振りかける。口説きに掛かると、いきなり手に噛みつかれてしまった。黒焼き屋に苦情を申し入れると、 「申し訳ありません。手違いで、狼の黒焼きをお渡ししました」 【成立】 いもりの黒焼きに惚れ薬の効果があるかどうかは置いといて……狼の黒焼きって、何に使うのだろう。江戸の小噺にあったが、出典どっか行っちゃった。色々な動物の黒焼きと効果を考えると面白い……かも。 【蘊蓄】

          400字で分かる落語「いもりの黒焼き」2

          400字で分かる落語「いもりの黒焼き」1

          107:いもりの黒焼き(いもりのくろやき):その1 【粗筋】 いつも飯米(はんまい)に追われている、つまり貧乏な男、よりによって大家のお嬢様に恋患い。友達に教えられて、惚れ薬の「いもりの黒焼き」を手に入れると、お嬢様に振りかけるのが見事に外れて、絶世の醜女(しこめ)に追い回される。あわやという時に夕立で薬が流れて命拾い。今度こそと二度目の挑戦をするが、今度は風で側に置かれていた米俵にかかり、米俵が男を追い掛け始める。逃げ回る男、惚れ薬を教えた友達とばったり会って、「どや、女に

          400字で分かる落語「いもりの黒焼き」1

          400字で分かる落語「芋の地獄」

          106:芋の地獄(いものじごく) 【粗筋】 南無阿弥陀仏、ナムアミダブ……人も物も定めあり。芋も焼いたり煮たりすれば美味いが、生では食えぬ。うまく焼き上げると、奥歯で、噛む阿弥陀仏、カムアミダブ…… 【成立】 「滑稽説教」と説明がついていて、現在演る人もあるまい。落ちは陳腐だが、最初から最後まで説教の口調で一貫する、そのリズムだけで聞かせるもの。桂枝雀(1)が明治末期に録音したSP版がある。枝雀の名は、その後継ぐ者がなかったが、上方のあの枝雀が2代目となった。

          400字で分かる落語「芋の地獄」

          400字で分かる落語「芋田楽」

          105:芋田楽(いもでんがく) 【粗筋】 若い後家が娘に婿を迎えたが、自分も婿と関係してしまう。娘が奉行所に訴えると、「私が夫をもらったのを、娘が自分の夫と申して、はなはだ迷惑しております」 娘は、「父の遺言で連れ添ったのに、大人げない母を持って恥ずかしゅうございます」  奉行も困って婿を呼び出した、「結婚したのは、母か、娘か、どちらじゃ」 「はい、そのことでしたら、どっちともなしに婿入りして参りました」 【成立】 これもバレ噺に分類されているようだ。 【一言】 「ふんだんに

          400字で分かる落語「芋田楽」