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400字で分かる落語「印鑑証明」

120:印鑑証明(いんかんしょうめい)
【粗筋】 区役所に来た男、「ここが区役所ですか、みんな区役所ですか、あなたも区役所ですか」と質問攻め……一々口をはさまずにいられない男なのだ。ようやく印鑑証明が欲しいと分かるが、字が書けないので代書を頼む。
 続いて来た女性は印鑑証明を郵便局にもらいに行った経緯を詳しく話す。書類を用意するが、「この鈴木さんというのが、あなたの御主人ですか」と言うと、近所の人で世話になった……と、お涙頂戴、講談から浪曲まで使って説明する。が委任状も何もないので出直してもらう。
 次のおっさんは息子のために証明を取りに来たと言うが、何の証明か分からない。「息子は電気屋に勤めておって、照明が出来れば一人前だと言われとるんだ。証明なら区役所だんべえと思うて来たんじゃ」
「まあ、明るくするのは大変ですからねえ」
「そうでもねえ。早く寝りゃあいい」「どうなります」
「夜明けを待つのが一番早かんべえ」
【成立】 昭和35年の古今亭今輔の速記がある。窓口の人の苦労談だが、ろくな人が来ないね。作者がいるかも知れないが、書かれていない。

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