記事一覧
自由律俳句 #91 海が見えるローカル線の窓を開ける
詩集放り出して寝こけている
そこのすずめも自分の見せ方を知ってる
路地裏のたび三日月がひょっこり
生け垣にこおろぎが独唱して居る
海が見えるローカル線の窓を開ける
自由律俳句 #90 天気痛、うしろ向きの思考がいそぐ
固めた髪に綿毛
懐かしさ無いとして車窓
天気痛、うしろ向きの思考がいそぐ
雨の次の日の靴の重さ
本を移しかえたあとのさみしさ
自由律俳句 #89 さくら、なおも、ちるか
体があたった桜を見ていた
老夫婦の駅順の話が尽きずにいる
降りる駅だばこんと頭をぶつけて痛くない
本人も考えぬようなこと考えて居る
さくら、なおも、ちるか
自由律俳句 #87 跨線橋から人が落ちた車内の蛍光灯の端
薄い月とはがれ落ちゆく
靴下をはいてすぐ靴下をはこうとした
花ぐもりのうすぺらい東京タワーを見てる
月を見上げる風が吹く髪が流れる
跨線橋から人が落ちた車内の蛍光灯の端
自由律俳句 #86 むなしい電車のf分の1
親子連れが電車を見ているふるさとがある
考え尽くした頭で東京タワーは淡い
おでこのふちににきびとして在る
風に吹かれている人間のあさましさ
むなしい電車のf分の1
自由律俳句 #84 秒針の音とともにある家
新幹線を待っている朝日が差してくる
年末帰省していた家がすねてひやりとしていた
屋根から落ちる崩れる光る光る雪
スーパーの店先で抱擁している
秒針の音とともにある家
自由律俳句 #83 ま上のよい月をもくもくと見る
消防車のサイレン気づかない二人
長いかどうかもわからないホームを歩く
東京よ発つときになぜこうも名残惜しか
寝て起きてみて落ち着く
ま上のよい月をもくもくと見る
自由律俳句 #76 早く家を出過ぎた線路沿いを歩いていく
海も山も空もまた私も青い
電車に網張る蜘蛛、霞を食って生きる
早く家を出過ぎた線路沿いを歩いていく
ようよう酔うて良い夜
風呂あがりの温かさを持って寝てやる