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「町の書店を増やしたい」を考える  4-2. 本:どんな風に読めばいいの?

前回までのお話・・・

1.増やしたいのか、減らなければいいのか

2.増やしたいのは「誰?」「何のため?」

3.「書店は地域の文化拠点であるから守りたい」を段階的に考えていく

4-1.本:本を読む必要はあるの?

(1)そもそも本を読む必要はあるのか?
(2)良書じゃなきゃだめ?
(3)買いさえすれば読まなくてもいい?
(4)読みさえすれば買わなくてもいい?(買うvs借りる)

※このページは、思考を整理するための自分なりのノートです。勉強不足の部分や考察を別途深めたい部分も多いので、随時書き加える予定です。このノートが、書店を増やすための具体的な活動を考えている人の参考になれば幸いです。


4-2.本:どんな風に読めばいいの?

(1)紙の本 or 電子書籍(何で読むのか。媒体の話)

本というと現在では紙の本ではなくて、電子書籍もあります。紙の本はもういらなくて、電子書籍になっていくのでは?という考えもあります。もう時代にそぐわないなどと言っている人も何名か見かけました。

仮に電子書籍だけで良いのならば「書店で紙の本を」買わなくても良い可能性が高くなってしまいます。つまり、今までの出版から書店に並ぶまでのビジネスサイクルに属しているたくさんの企業や人々の危機です。電子書籍が出始めた頃、短絡的かつ悲観的な人が電子書籍を全否定しようとした時期がありました。

でも今では、ほとんど答えが出ているような気がします。「共存できる」と。紙にも電子書籍にも良さがあるし、作品によってどちらの媒体が合っているか相性もあります。どんなコンテンツを何の媒体で読むのが好きか、という個人の好みによるところも多く、なかなか断定できるものではありません。電子書籍を試した結果、やはり紙の本の方がいいという声もよく聞かれます。それが全ての本に対してなのか、一部のジャンルに対してなのかは人それぞれです。

コンテンツをより多くの人に読んで欲しいのならば、両方の媒体を用意した方が良いともいえます。

町の書店を増やしたいという観点からは、電子書籍ではなく紙の本を買って欲しいという気もします。けれど、そもそも「町の書店を増やしたい」のは「文化の向上」という大きな目的のためです。
文化の拠点としての書店という役割を考えた時に、電子書籍を完全排除する必要はなくて、時代の流れも考慮して電子書的との共存や相乗効果などを狙っていく方が健全で建設的なように思います。

電子書籍をどう売上に繋げていくのか、紙の本を少しでもたくさん売りたいという考え方も、もちろんわかります。けれど、恐らく紙の本の売上利益だけで経営していくのは現状で既に厳しいです。国として書籍の価格を上げる、各ステークホルダーの取り分の配分を見直すなどの根本的な大改革がない限り、紙の本を売る以外のメインの収入源を確保する必要があるように思います。

知識や教養を高め、人として成長するための読書という観点からは、
紙でも電子でもどちらでも良い、適宜読書に至りやすい方を選択すればよいのかなと思います。

ただ、紙の本の方が質の良いものに出会える可能性はやや高いかもしれません。なぜなら、Kindle出版のように、出版社を通さず気軽に自費出版できるサービスも増えているからです。これらは、このnoteサービスや個人のブログなどに近い位置づけかもしれません。誰でも出版・発表できて、「出版」や「発表」といった境界線がどんどん曖昧になっている時代であることを実感します。
もっとも、紙の本にも昔から自費出版やZINEなどがあります。玉石混合から選び抜くという点においても、結局紙も電子も変わらないのかもしれません。

*電子書籍と紙の本の割合などについて参考
①2024.3の記事: 電子書籍を「利用したことがない」が41.5%、「過去に利用していた」が20.5%、 「現在利用中の人」37.9%。 そのうち、「全て電子書籍を利用する」のは7.9%。(37.9%のうちの20.9%) その他にもジャンル別など興味深いアンケート結果がいろいろあります。
電子書籍を現在利用しているのは37.9%、全年代で利用率トップは「Kindle」、満足度1位は「U-NEXT」(Appliv TOPICS調べ) (fnn.jp)

②2021.9の記事:「楽天ブックス」ユーザー10,050人を対象にしたアンケートがいろいろ載っています。
「紙の本のみ」が53.2%、「どちらも利用する」が39.9%
紙の本と電子書籍の利用率は年代によってどう違う?|@DIME アットダイム

③2018.10の記事: マクロミルの本や書店に関する調査
「紙の書籍」が84.5%で、「電子書籍」は35.6%
【データ】本や書店の利用意識 電子書籍利用率は36% | 繊研新聞 (senken.co.jp)


(2)一人で読む or 他の人と交流しながら読む

4-1. 本:本を読む必要はあるの?
(1)そもそも本を読む必要はあるのか?
で、読書でなくては得られないもの を私なりに整理したのが以下です。


  1. 知識や教養が身につき、語彙力が豊かになる。

  2. 読書を通じて情報収集が行われ、視野が広がる。

  3. 想像力が豊かになり、創造力が養われる。

  4. アイデアを得ることができ、多様な話題に対応できる。

  5. 会話力や文章力が向上し、コミュニケーション能力も高まる。

  6. 仕事力向上につながり、成功の確率を高める可能性もある。

  7. ストレスが解消され、リラックス効果がある。

  8. 老化防止や病気の予防、読書療法(ビブリオセラピー)を期待できる。

1~3は自己研鑽、4~6は社会との交流、7~8は心身の健康に関すること


人々が知識や教養を高め、人として成長することが文化の向上につながるという考え方において、1~3の自己研鑽に関する部分はすぐに想像がつきます。

しかしながら、社会とは人と人との交流があって成立するものなので、社会全体の文化の向上を考える際には、個人レベルの話と交流レベルの話の両方が必要になってくるのは想像に難くありません。

人々が、多様な話題や考え方に対応し、建設的に議論を深めることが文化の向上に大きく貢献すると考えられます。

それは「本」を介してもいいですし、そうでなくてもいいのです。

「本」を介して他者と意見交換をし、新たな考えに触れたりする機会としては、「読書会」が考えられます。書店主催のもの、それ以外の様々の読書会もありますし、読書を介したマッチングサービスまであります。
何を目的とし、どんな本を取り扱うのかも様々ですが、個人的には17世紀フランスにおける「文学サロン」に通じるものを感じます。

「本」を介さなくても、他者との意見交換や交流は文化の向上に必要でしょう。様々な価値観に触れて、自分と違う意見や価値観も尊重しつつ、必要に応じて建設的な議論ができる。攻撃的ではなく、楽しく思いやりのあふれた会話ができる。
それが文化の向上に役立ちますので、1人で自己完結的に本を読む場合でも、自分の考えに凝り固まって、むしろ排他的で批判的で偏屈な人間になってしまわぬよう、他者や社会との交流は図っていくことが望ましいでしょう。

次回予告

4-3.本:読書離れについて考える

(1)読書率の変化ー子供(小中高)ー
(2)読書率の変化ー大学生以上ー
(3)読書離れの理由

4-4.本:誰に読書をして欲しいのか(どの程度?)

5.書店:求められる役割について考える


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