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「町の書店を増やしたい」を考える   1. 増やしたいのか、減らなければいいのか

最初に私は「町の書店を増やしたい」派です。もちろん!
そしてこれは、世間一般でもよく見聞きする意見でもあります。
国としても、経済産業省が「書店振興プロジェクトチーム」を2024年3月5日に設置し、初の本格的支援に乗り出しました。(書店の減少は1990年代後半から始まっているので、30年もたってやっとですかという気もしますが。


追記:2016年に自由民主党による議員連盟「全国の書店経営者を支える議員連盟(書店議連)」が発足しており、2023年5月に提言をまとめています。
実態を把握するために調査するという内容にとどまったが、今回のプロジェクトの背景として要望を出していたとのこと。
参考:「ネット書店の送料の実態、調査を」 消えゆく本屋支援、議連が提言:朝日新聞デジタル (asahi.com)
経産省「書店振興策」の背景に“書店議連”の提言 文筆家・伊藤亜和氏「書店を守って本がなくなってしまっては元も子もない」(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース


ところで、この「町の書店を増やしたい」のは
誰が、何のためになんでしょうか?
どの程度増やしたいのでしょうか?
増やしたいのはどんな書店なんでしょう?
既存の本屋?それとも新しい形の本屋?なんでもOK?

その書店のターゲットは誰なんでしょうか?
誰に、何を、どういう形で、買ってほしいのか?
もしくは買わなくても、気軽に見て触れてもらえすればいいのか?
どんな本?読んでも読まなくてもOK?

どうも「町の書店を増やしたい」という意見の中でも立場や目的、イメージしているものが微妙に違っているように感じるのです。

なので、少し整理してみたいと思います。

※このページは、思考を整理するための自分なりのノートです。勉強不足の部分や考察を別途深めたい部分も多いので、随時書き加えたり別途ノートに書いていく予定です。このノートが、書店を増やすための具体的な活動を考えている人の参考になれば幸いです。


1. 増やしたいのか、減らなければいいのか

そもそも増やさなくてもいい、既存の書店を守れればそれでいいという考えの人もいると思います。特に、既存の書店を経営している方の多くはまずは自店が生き残ることを考えていらっしゃるかと思います。

一方で、既存の書店が淘汰されていくのは時代の流れなので仕方がない。新しい時代に合った新しい形の書店を増やしていこう!という考えもあると思います。

もちろん、既存の書店も新しい書店も、あればあるほど嬉しい!という人もいますよね。(私です)

新しい書店といっても、既存タイプの書店もあれば、目新しい取り組みをしている新しい形の書店もあります。そこで、ひとまず以下の3つの視点に分けてそれぞれについて少し考えてみたいと思います。

(1)既存の書店を守りたい。

既存の書店が30年近くかけて半減してきたということは、減少した理由を考えてみる必要があります。深く研究するのは別途やるとして、現時点で個人的に考えられる要因は以下の3つです。

①時代の変化(インターネットなどによる娯楽や情報収集手段の多様化)
②出版業界の商習慣・制度に問題がある
③接客サービス業としての一面を意識していない書店もある

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①時代の変化
「インターネット」「読書離れ」「電子書籍」というキーワードが良く出てきます。これらは時代の変化でもあるため、具体的にここに働きかけて書店減少の流れを大きく変えるというのは、かなり難しい話かと思います。何らかのブームを仕掛けることは可能かもしれませんが、主流の方向性は変わらなそうです。

一方で、「やっぱり紙の本が良い」「リアルの本屋さんに行くのが楽しい・情報収集にコスパがいい」などの声もよくあるので、時代の流れで減ってしまう部分もあるけれど、リアル本屋さんのニーズはゼロになることはないのでは・・・と思っています。

②出版業界の商習慣・制度
以下の仕組みを変えていかないと書店を守るのは厳しいかなと思います。でも、既得権益の塊&大規模で関係者がたくさんいすぎるので、一筋縄にはいかなそうです。それこそ政府が介入して大がかりな改革をするしかない部分かと思います。
 ・1冊の本を売ったところで書店の取り分が少ない
 ・再販売価格維持制度:原則として本の価格を書店が変えられない
 ・仕入れる本が書店が主体的に選書したものではないパターンも多い
 ・委託販売:返品が当たり前の商習慣

また、比較的即効性のある政府の書店への特別支援のひとつとしては、家賃や光熱費の何割かを政府が援助するなどの、会計面の資金援助が有力な気がしています。

③接客サービス業としての一面を意識していない書店もある
リアル店舗に集客したいのであれば、書店だけでなく一般的な小売り店舗として、

・道を歩いている人が見つけやすい。
・入りたくなる外観で、物理的にも入りやすい。
・店内が居心地の良い空間かつ、動き回りやすい。
・店内外ともに清掃が行き届いている。
・品揃えが良く、よく手入れされていることがわかる。
・店主の人当たりが良さそうで、声をかけやすい。

などといった部分は当たり前に努力されているはずなのですが、意外とこういった部分まで手が回っていないような書店も多くみかけます。

立ち読みやマナーについても、お客様によっては注意する必要がある方もいらっしゃるとは思いますが、「書店で立ち読みするとハタキで叩かれるから怖くて行けない」なんて昔の怖い雷親父を想像してしまうと、やはり書店に来てもらえなくなりそうですので、何事も度合というが大事だなと感じています。

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一方で、既存の書店が新しく取り組んでいることとして、

・選書サービス
・本関連グッズ(ブックカバー、栞、バッグなど)を売る
・雑貨を併せて売る
・オンラインショップも出店する
・セミナーやワークショップ、イベントを開催する
・入店料を取る
・他業種とのコラボ
・予約制

などがあり、それぞれ応援していきたいところです。
が、これら各書店がそれぞれの特性を活かして開発していく分野であるので、政府による書店への特別支援の主軸にはならない(しないでね。もっと根本的かつ政府だからこそできることをちゃんとお願いしますね。)と思っています。
ナレッジとして、取り組みの種類を集約し、効果を検証するのは一助となるかもしれません。


(2)書店を増やしたい(既存タイプの書店)

2022年は閉店数が477店舗だったのに対して、新規店数は81だそうです。(参照:日本の書店数 | 出版科学研究所オンライン (shuppankagaku.com)

大手チェーン店が新規出店する場合と、個人が新しい書店をオープンさせる場合があると思いますが、近年個人で新しく書店をオープンされている方々は、それぞれ何らかのこだわりやコンセプトが明確なことが多いように感じます。(そういう書店が取り上げられやすかったり、自己発信が上手なので多く感じてしまってるだけかもしれません)

よほど強い想いやコンセプトがないと新規出店のハードルをなかなか乗り越えられないのではないでしょうか。

政府の書店への特別支援のひとつとして、この新規出店時の資金援助や書店出店時の経営ノウハウなどのレクチャーを仕組みとして提供することは、候補として考えられます。

(3)書店を増やしたい(新しいタイプの書店)

カフェを併設している本屋さんはここ15年ほどですっかり定着していて、もはや新しいとは言えない気もしますので、現時点で思いつくものを数点。
ニュースになることも、本に取りまとめられることも多いので、意外と情報量は豊富な気がしています。今回のノートが一段落したら、まとめたいと思います。

・シェア型本屋(一箱本屋)
・無人本屋
・ホテル×書店
・クラウドファンディング出店
・誘致
・コンビニ併設書店


(4)まとめ

以上、既存の書店とこれから新しく出店する書店(既存タイプ・新しい形タイプ)に分けて、それぞれについて書いてきました。
既存の書店を守りつつ、新しく出店する書店も増えればいいなというのが個人の意見ですが、支援等を具体的に考えていくには適宜分けて、分析や建設的な議論をしていく必要があるように感じました。

また、これらを受けて町の書店を増やす方法については、この2つのアプローチをそれぞれ考えていきたいところだと思いました。
①新規開店の様々なハードルを低くすること
②今ある書店も新しく開店する書店も、持続可能な仕組みや取り組みを考えていくこと



次回予告

2.増やしたいのは「誰?」「何のため?」

3.「書店は地域の文化拠点であるから守りたい」を段階的に考えていく

4.本:誰がどんな本をどんな風に読めばいいの?

5.書店:求められる役割について考える


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