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「町の書店を増やしたい」を考える   2. 増やしたいのは「誰?」「何のため?」

前回までのお話・・・

1.増やしたいのか、減らなければいいのか

既存の書店も守りつつ、新規出店(既存タイプも新しいタイプも)も増えるといいなというお話と、それぞれについての考えの整理を行いました。
また、町の書店を増やすには以下の2つのアプローチが必要そうだと考えています。
①新規開店の様々なハードルを低くすること
②今ある書店も新しく開店する書店も、持続可能な仕組みや取り組みを考えていくこと

続いて、考えていきます。

※このページは、思考を整理するための自分なりのノートです。勉強不足の部分や考察を別途深めたい部分も多いので、随時書き加えたりする予定です。このノートが、書店を増やすための具体的な活動を考えている人の参考になれば幸いです。




2.増やしたいのは「誰?」「何のため?」

(1)国や地域、社会全体のことを考えている人

多くの民主主義国では、政治が国民の幸福や利益を追求することが期待されています。今回、国が書店振興プロジェクトを立ち上げる目的としても、それが最終的に国民の幸福や利益に繋がると考えられていると思われます。

また、今回の「書店振興プロジェクトチーム」は経済産業省の斎藤健経済産業大臣直属ですが、その大臣は以下のように話したそうです。

齋藤経産大臣は「街中にある書店は、多様なコンテンツに触れることができる場として地域に親しまれており、創造性が育まれる文化創造基盤として重要だと考えているが近年激減している」

https://news.yahoo.co.jp/articles/0c440854e2dbe311aa1deebd914f6b7df9dd6556

国という単位ではなくても、国や地域、社会全体のことを考える視点から、
「何のために書店を振興させたいのか」ということを少しだけ段階的に考えると

文化の拠点として地域に親しまれる書店がある
⇒市民・国民の生活の一部に文化や情報が自然と取り組まれる
 &創造性が育まれる
⇒文化レベルや民度の向上
⇒国力や国民の幸福度があがる

といった図式になるかと思います。どうでしょうか?
ひとまず、これに沿って考えを進めます。

ここで、疑問として出てくるのは
・文化とは
・特にどういった人をターゲットに考えているのか
・本を読みさえすればいいのなら紙の本でなくてもいいのでは?
・紙の本を買いさえすればリアルの書店でなくてもいいのでは?
・書店がありさえすれば①が向上するのか?(本を買わなくてもいいのか)
・その観点からリアル書店に何を求めているのか?交流か?
・本を買いさえすれば読んでも読まなくてもいいのか?
・どんな本でも文化・教養は向上するか?

といったところでしょうか...。
これらの疑問については 3.以降で深堀りしていきます。

(2)出版業界に勤務している人たち

著者、出版社、取次、書店。自分や自分の会社に勤務する人達の生活を守るために、増やしたい、少なくともこれ以上減らしたくない。

※(1)(3)の視点を併せ持つ方も多くいらっしゃると思います。

(3)書店好き・本好きの消費者

①自分のため
自分が行く先々や生活圏内に書店があって欲しいから。
書店があると落ち着くから、自分が興奮するから、幸せだから。
自己研鑽の場として便利だから。

ちなみに、「書店好き」と「本好き」は重複する部分としない部分がありますね。
「読書は実はそこまで好きじゃないけど、書店という空間が好きという人」
「読書は大好きだけど、出会ったり入手する場は、必ずしも書店でなくていいという人」
一緒くたにすると何かを見落としてしまいそうなので、念のためメモしておきます。

②人のため
自分と同じように、書店や本から得られる喜びや気づき・癒しなどを他の人にも味わってほしいから。

③交流・共有したいから
より多くの人と本についての議論を交わしたり、感想を共有したいので、本を読む人口を増やしたい。こういった人たちのうち、社交的な人はセミナーや読書会、SNSなどで積極的に本を介在とした交流を図っています。

④内省的で非社交的な自分と同じような人が増えてほしいから
人間関係に疲れてしまう人にとって、本が友達だったりします。そういった人にとって、「本好きなんだから読書会しようよ」という誘いは胸がキューっと痛くなることがあります。本は好きだけど人と交流したいわけではない。人との交流から距離をおいて、一人の世界で自分を癒したいから本を読みたいのです。
そうではなくて、みんなも自分と同じように、静かな書店でじっくり本を選び、一人の世界に没入して本を読んでくれたら、嬉しいな…という淡い期待から「書店が増えたらいいな」と考えることがあります。

非社交的で本が友達、という自分が、決して取り残された孤独な存在じゃなくて、みんなそうだよという安心感が欲しいのかもしれません。


この後は、(1)の「国や地域、社会全体のことを考えている人」の視点から、「国力や国民の幸福度を上げるために、文化の向上を図るべく、
文化の拠点としての書店を増やしたい」という部分について考えを深めていきたいと思います。


次回予告

3.「書店は地域の文化拠点であるから守りたい」を段階的に考えていく

4.本:誰がどんな本をどんな風に読めばいいの?

6.書店:求められる役割について考える


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