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江戸の川柳 「気ばかりさ」などと御隠居 酌へさし 柄井川柳の誹風柳多留五篇①

 年寄りも酒を飲みながらお姉ちゃんと一緒にいたい。そんな思いを五七五で表現する。子どもや若い男女だけでなく、老人を詠んだ句もある江戸川柳。
 俳句や短歌(和歌)は学ばなければ創れない。けれど五七五の川柳は誰でもすぐに創られる。江戸時代に名もなき一般の人々が創って柄井川柳が選んだ川柳のベスト本「柳多留やなぎたる」が毎年作られ、五冊目となった。「誹風柳多留はいふうやなぎたる五篇」の古川柳紹介全五回の一回目。
 読みやすい表記にしたものの次に、記載番号と原本の表記、前句を記す。
 自己流の意訳を載せているものもあり、七七のコメントもつけているものもある。

 


「気ばかりさ」などと御隠居ごいんきょしゃくへさし

11 気ばかりさなどゝ御隠居ごいんきょしゃくへさし  いつ見てもよしいつ見てもよし

 七七の前句を出題され、「いつ見てもよい(いつ見てもよし)」ものをさがす。これが「誹風柳多留はいふうやなぎたる」のスタイル。こんな情景はどうかなと作者が選んで創ったのが、これ。
 若い頃はビンビンだったけれども、年を取ると本当に精力がなくなる。「やる気だけはあるんだけどなぁ。役立たずさ」とぼやきながら女の人と飲んでいる。「やらせろやらせろ」と言うんじゃなく、回りくどくくどいているのかも。こんな情景がエロくていいんだろう。
と言いつつ、この御隠居と同じで、いくつになっても隙あらばエッチしたいと思うのが男の本能。

ホテル行こ もう立たぬから大丈夫
どの口が言う口説き文句よ


 

銭のないやつは窓から首を出し

27 銭の無い奴は窓から首を出し  いつ見てもよしいつ見てもよし

 こちらの「いつ見てもよし」は、「いい情景」を見ている人を詠んだのだろう。いいのは、綺麗な女の人がいっぱい通る情景。町の中を女の人が歩いている。見ている人物は「銭のないヤツ」。銭がないから遊びに行けず、窓から外をながめているだけ。
 薄着の季節になると、こんなの着ているのかというすごい露出の服の女性も多くなる。それをながめるのも街へ出る楽しみの一つ。あっ、俺のことか。



 間男のふんどしをとく旅の留守

216 間男のふんどしをとく旅の留守  てうどちょうどよいことてうどちょうどよいこと

 前句は「ちょうどよいこと(てうど能こと)」。なにがちょうどよいかといえば、旅に出た夫の留守。夫の留守に連れ込んだ間男のふんどしを解く女房。
 男が遊女屋で遊ぶだけでなく、女も性を謳歌していた江戸時代。

亭主留守男のパンツ脱がす妻
亭主は風俗互いの性活



一人者客にしばらく留守をさせ

277 壱人者ひとりもの客にしばらく留守をさせ  てうどちょうどよいことてうどちょうどよいこと

 こちらの「ちょうどよいこと」は何か。家を留守にできない時の独身男。ちょうどよい具合に客が来た。

「ちょとだけ留守番たのむ」と家を出る
使えるものは何でも使う


 

 タイトル画像は、当時流行した曲亭きょくてい馬琴(滝沢馬琴)読本よみほん南総里見八犬伝」の表紙絵より。「八犬伝」にちなんでストーリーとは関係なく、犬をデザインしたもの。 



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