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私が働くドムドムハンバーガー

1. はじめに

私は、ドムドムハンバーガー(以下ドムドムと記す)でアルバイトをしている。働くきっかけがなければ知ることもなかったハンバーガーチェーン店。それまでは、マクドナルドやケンタッキー、モスバーガーなどといったよく耳にする、見かけるお店に足を運んでいた。私と同じように、ドムドムの存在は知らず有名ハンバーガーチェーン店に行っているのではないか。それはその通り、ドムドムは全国に400店舗以上あったが、現在では27店舗しかない。しかし、あることがきっかけでV字回復をすることができた。一度衰退したにも関わらずV字回復を遂げた理由について分析していく。

2. ドムドムについて

1970年(昭和45年)、東京・町田の「原町田ショッパーズプラザ」に1号店がオープン。また、日本最古のハンバーガーチェーンである「ドムドムハンバーガー」。最盛期の1990年代には全国で400近くあった店舗は、現在27店舗となり¨絶滅危惧種¨とも言われていたが、2018年に藤﨑氏が社長に就任してから、イベントに参加すれば即日完売、コラボ商品を販売すれば大人気。さらに2019年に発売した「丸ごと‼カニバーガー」(以下カニバーガーと記す)はSNSでも大評価となった。2021年3月には、コロナ渦であるのにも関わらず、決算で黒字化を達成し、事業再生の道筋をつけた。

絶滅危惧と言われているドムドムがなぜV字回復したのか、以下のようなことである。①ECサイトの設立。ECサイトとは、自社の商品やサービスを、インターネット上に置いた独自運営のウェブサイトで販売するサイトのことである。これを活用して、ハンバーガー以外にマスクやぬいぐるみ、Tシャツ、バッグなど自社ブランドの様々な商品を販売している。きっかけとして、コロナ渦にマスクを作ったということである。はじめは、藤﨑氏がスタッフを守るためと思い、ドムドムのキャラクター「どむぞうくん」の織りネーム(タグ)を付けた洗える布マスクを作った。それが世の中のためになるように、レジ横で販売をし、一人の顧客がTwitterに取り上げたことで大きな反響を生んだのである。

②デリバリーサービスは使わないこと。ドムドムは、コロナ渦の中でも一過性の売上を取りにいくのではなく、お客さん目線が最も重要とする。また、店舗数は少なく小さい、売上高もよくはない。そのため、大量の注文をさばくための設備も人的リソースもない。従って、従業員のことを考えると仕事の量を抑えられ、お客さんにとっても待ち時間の発生もない。

③ドムドムの人気商品「甘辛チキンバーガー」を作れる方法をTwitterにて紹介をした。また、カニバーガーが流行するにあたって、調理風景をSNSに載せたりYouTubeで紹介したりする。店舗で購入するだけではなくECサイトでも購入することができる。SNSに力を入れる一方で、「フォローしてくれたら○○をプレゼント」というキャンペーンやSNSの露出のために広告費を払うことは一切行わない。「一過性の伸びしか期待できないので意味がない。今見てくれている人たちを大事にする」と社長の方針は一貫している。

④アパレル展開である。アパレルブランドのFRAPBOIS(フラボア)の声掛けがきっかけである。それには2つの問題点があった。ハンバーガー屋がアパレルするのと、商標権の管理が難しいということである。社内では反対の声も挙がった。その意見に社長は背き、ドムドムのキャラクターが外に出ると、どのような状況で通用するのか見ることができるのか、また、外に出ていく必要があると述べている。2022年3月には「niko and ...」とコラボ。コラボパンをniko and ... COFFEE全店舗で売り出すほかに、どむぞうくん(ドムドムのイメージキャラクター)とのコラボTシャツやバッグなどを発売した。このように、アパレルブランドとコラボしたことにより、認知度は高まり、お客さんの年齢層も下がっている。

⑤丸ごとカニバーガーの販売。新メニューは定期的に販売している。そこで、商品開発を担当する浅田裕介氏から「ソフトシェルクラブ(脱皮したての柔らかいカニ)を使ったらどうか」という提案から始まった。しかし、インパクトが強すぎる見た目と、原価率を鑑みた想定価格がドムドムのメニューにふさわしくないという意見が上がり反対された。インパクトに印象が引っ張られ、味は何度も食べたくなるほどの自信から、奇抜さを狙ったメニューとして戦う決心をした。一般的なハンバーガーの価格帯には収まらない原価だが、それに見合った顧客満足が提供できれば、費用対効果で消費者の理解は得られると考えた。見た目のシュールさ、バンズからはみ出るほどのカニが丸ごと一匹挟んであることに加えて、爪楊枝を使った小さな旗を付けた。それをカニに持たせ写真を撮るという行為から、SNS効果も狙いつつ、プラスアルファの顧客体験を提供する新しい試みをすることができ話題となった。

カニバーガーの価格は、単品990円、セット1,350円。
2019年10月に販売及び2020年9月19日に再販。※現在販売はしていない

3. 5Aを用いた分析

ここまでドムドムのV字回復についての理由を述べてきた。実際5Aを用いてV字回復したかについて考えていきたい。5A分析とは、「近代マーケティングの父」や「マーケティングの神様」と呼ばれているフィリップ・コトラーが、マーケティング4.0とともに、新しいカスタマージャーニー(消費者プロセス)「5A理論」、SNS時代を反映させた購買プロセスを提唱した理論のことである。今までは、無意識・注目・比較・購入などが一般的であり、最終的なゴールは「購入」にされることが多いが、「5A理論」では他人に勧めることを究極のゴールにするのが特徴である。

そこで活用されるのがSNS。SNSが普及した今、自己実現を達成して満足したユーザーが、レビューを投稿するハードルは非常に低くなっている。ユーザーにSNSで投稿してもらったり、周りに口コミしてもらったりなど、どのようにしたら良いのか、あらかじめ考えておくことで、ブランド認知拡大や、ユーザー拡大へと繋がる。従って、SNSを利用して拡大したり、検索をかけて調べたりして様々なところに行ったり見たり食べたりなどといった情報取集は簡単にできる。

また、大いにSNSの重要性も高いといえる。Instagramで「#ドムドムハンバーガー」「#丸ごとカニバーガー」と検索かけると5,000件以上・500件以上もヒットする。また、Twitterでは最新情報が公式サイトにて発信されていたり、アパレルの情報も流れていたりしている。今でも変わらず、ドムドムのブランド発信やレビューを見受けられる。このことから、ドムドムハンバーガーはSNSとの関連性が高いと考えられ、5A分析に適していると考えられる。

5A分析について詳しく述べていく。5Aは、認知(Aware)→訴求(Appeal)調査(Ask)→行動(Act)→奨励(Advocate)のこの5つのAから消費者の購買行動についての理論である。広告や口コミによりブランドを、「認知」し、ブランドを識別、記憶し「訴求」、友人の評価やネットの検索を通じて「調査」し、購買し「行動」、他社に「奨励」するという購買プロセスがあるため、それぞれのプロセスにあったマーケティング・アプローチをするべきだという考え方である。そして、コトラーは、「マーケティング4.0の究極の目標は、顧客を認知から奨励に進ませることである」と述べている。具体的に述べていくため、筆者の実体験を踏まえて考えていきたい。

①認知(Aware)は、カスタマジャーニーの入り口である。顧客が当該ブランドを含むたくさんのブランドを「知っている」という状態を指す。顧客が「認知」に至るプロセスとしては、たまたま当該ブランドの広告(オフライン・オンライン問わない)に触れる、他者からブランドの口コミを聞かされる、過去の経験を思い出すなどがある。

②訴求(Appeal)は、たくさんのブランドを「認知」した顧客は、それまでに他者から聞かされたり、与えられたりした情報を一旦頭の中で整理し、その中から自分にとって好ましいと思う、少数のブランドだけに引き付けられること。

③調査(Ask)は、顧客は、その少数のブランドの中から、魅力に感じたブランドについて調査するようになる。友人に電話をしてアドバイスを求めることもあれば、オンライン上で製品レビューをチェックする場合もある。あるいは価格を比較したり、コールセンターに電話したりするかもしれない、販売員と話すことでもっと情報を得ようとするかもしれない。

④行動(Act)は、調査段階で詳しい情報を手に入れたら、行動へと進む。必ずしも購買行動だけではない。顧客は、消費や使用はもちろん、アフターサービスを通じてもブランドとさらに深く交流することになる。その全ての行動のプロセスで顧客に満足してもらえるよう、ブランドは関心を注ぎ、顧客に解決策を届けなければならない。

⑤奨励(Advocate)は、顧客にブランドに対する強いロイヤルティが芽生えたら顧客維持率、再購入率、そして最終的には他者への推奨率として表れる。熱心な推奨者は、自分の大好きなブランドを自発的に他社に推奨し、伝道者になる。

認知の段階では、まず消費者に知ってもらう必要がある。ハンバーガーチェーン店の括りでみると、マクドナルドやケンタッキー、モスバーガーなどはふと思い浮かべられる主流なお店ではないか。そこから他社のハンバーガーチェーン店となると、SNSの広告や駅周辺や商業施設などで通りすがりでお店を見る、ブランドコラボするなどというルートではないかと考えられる。筆者自身、最初にドムドムを知ったのは、アルバイトをしないかという声かけである。全く聞き覚えのなく、なんと家から近場の商業施設内にあるフードコートのお店だったのが衝撃過ぎて、それが気になりどんな商品やどんな場所なのかなど知るきっかけとなった。母の年代では、昔ながらあったということで知っているのもあるが、私たちの年代では、あまり見られないお店のため、行ってっ購入したいという意欲は湧かなかった。

訴求の段階において重要なのは、ドムドムを消費者にとって好ましいブランドだと引き付けることである。認知の段階で、消費者はドムドムというお店を知っている状態だと考えられる。そうなると、その中から選んでもらうには、他者の違いが必要になってくると考えられる。ドムドムは、V字回復した理由のところで述べた通り、従来のハンバーガーチェーン店とは異なるような、新メニューの奇抜な商品開発やブランドコラボなど販売している。また、SNSを通じて作り方の発信、デリバリーサービスを行わないなどといった販売促進である。これによって、他者との差別化を図ることができていると考えらる。一番惹かれたのが、主流のお店にはない、独特な新メニューや人気ブランドとのコラボ商品があるというところである。

調査の段階では、消費者自身がそのブランドを詳しく知るために調査を行う。そのためには、実際食べたことある人の口コミやブランドのコラボ商品を購入した人たちの口コミが必要である。食べログやSNSの最新情報、各口コミサイトの書き込みなどといったことが、情報取集するにあたって重要な役割を持つ。ドムドムでアルバイトを始めてから、良くGoogleの口コミサイトや食べログ、Instagramなどでどのようなかんじなのか調べるようになった。情報取集するにあたって、低評価や高評価の星の数や意見、SNSでの写真付きの意見などが取り入れることができるため、ドムドムを全く知らなくてもどのような感じなのか雰囲気だけでも確認することができ参考になる。現代の口コミを参考するにあたって、口コミが有意であるという仮説を裏付ける調査をなされている。井上実―(2009)「クチコミ・マーケティングの視点から見たネット・コミュニティ」※ROM(Read Only Member:ネット・コミュニティ内で発言することがなく、RAMのコミュニケーションを黙って聞いているメンバー)※RAM(Radical Access Member:収集した情報や評価情報を他の人々に積極的に教えたがる傾向)この結果は、広告会社である廣告社が2003年1月に口コミに関する消費者調査を調査会社インフォブランドのインターネットパズル600人にアンケート調査を実施した。その結果、パネラーは大きく4種類に分けられた。

この中でアクティブ(自分の体験を口コミする度合いが高いタイプ)は自ら情報発信をするタイプであることからRAMと判断することができ、他のエフェクト(知人・友人が推奨したものに関心を寄せる度合いが高いタイプ)、情報フォロワー(自ら情報発信することは少ないタイプ)、ジャッジ(他人の意見ではなく自分の判断を重視するタイプ)はいずれも自ら積極的に情報発信することはないため、ROMと考えられる。構成比をかけ、総体で見てみると表2のような結果となり、これをRAMとROMに分けると表3のようになる。

表3のように、総体で考えるとROMはRAMに対して、口コミ情報へ関心度が3.4倍高く、口コミ実施可能性(情報伝播)において、1.5倍、インターネットの口コミサイトが購買のきっかけになる割合(1次購入)で4.9倍も高くなっており、口コミに大きな影響を与えている。これらから、総体で考えるとROMの口コミにおける情報伝播はRAMに対して相対的に高く、コネクターの役割を担っているものと推察することができる。

従って、自分で体験した(アクティブ)ことを大いに評価していることが分かる。また、その体験から評価に対する値となりコメントを残していることが分かる。つまり、情報を発信するユーザーであるか否かを問わず口コミサイトは購買行動に最も影響を与えている。以上のことから、調査の段階における消費者は、先に商品を購入し、実際に体験・経験したことを素直に言葉として残し参考することが分かった。

行動の段階では、実際に消費者が商品を購入する状態のことである。必ずしも購買行動だけではないが、アフターサービスを通じてもブランドとさらに深く交流することも行動の段階に含まれる。ドムドムは全国に27店舗しかないという希少価値なお店となっている。見かけたら珍しいハンバーガーチェーン店として足を運びやすいのではないか。また、ECサイトの開設からグッズなども手に入るようになった。私は、アルバイトをしている人たちや、昔ながら知っている母や祖母から聞いて、実際に行って購入した。知らないお店を検索して口コミや公式サイトを見て、迷わず期間限定商品を購入することができた。

最後に奨励の段階では、調査の段階で述べた通り、消費者の意見を見て参考にしている人たちがいることが分かった。訴求の段階で商品を購入した者が口コミに残し、評価をしていることがいえる。また、SNSの投稿でレビューしている必要がある。いち消費者が口コミを残し、その中から参考にした者がまた口コミを残すといった連鎖が行われ伝道者になることができる。

以上、考察を通じて、ドムドムは長年から知られている人たちからの情報や上手くSNSの活用、口コミによりV字回復を遂げたと考えられる。

4.まとめ

ここまで、なぜドムドムはV字回復したのかについて考えてきた。5Aでいえば、口コミは他者の影響力、参考になっていることから、訴求の段階で重要であることが理解することができた。また、調査の段階では、飲食店でもどのような場所なのかと検索したり、有名ブランドとコラボすることによって記憶に残ったりする。SNSを通じてドムドムの個性的な商品を発信しているため、人の目を付きやすく注目する。絶滅危惧種と言われているが、それなりの活躍で名を残していることが分かる。SNSや口コミサイトは、企業側も見ることができるため、よりよい商品開発をする上にあたって参考すべき1つの道具であると考える。丸ごとシリーズを定番化していけば、顧客獲得、ブランド拡大はもっと広まるのではないかと考える。

【参考文献】

写真:https://diamond.jp/articles/-/274867 2021.7.8 藤﨑忍 
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/040600346/?P=2 2022.4.8 尾越まり恵
https://diamond.jp/articles/-/300701  2022.4.18
https://diamond.jp/articles/-/274866 2021.7.6
https://pickles.tv/blog/archives/5298/ Pickles Inc.
https://jissen.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=194&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1 2009.井上実

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