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マーケティング・消費者行動・ブランドを学ぶ学生・社会人におすすめ、読んで欲しい書籍 (2024/07更新)

ゼミ生や大学院生、消費者行動論の履修者からもっと勉強したいという嬉しいコメントをたまにいただきます。その際、おすすめの書籍を教えて欲しいと言われるのでいくつかここにまとめます。学部生が知って欲しい基本、院生が知って欲しい応用という形で各分野ごとに2冊ぐらい紹介します。大学院のゼミ希望者は目を通してください


消費者行動論

田中先生の消費者行動論のテキストです。基本から応用まで幅広く紹介されています。これを抑えておけば消費者行動論を学んだと十分言えます。本書の特徴は後半の応用部分で、消費者文化 (消費文化理論) や自己と他者のようにテキストでは書かれることが少ない一方で、アカデミック的に関心の高い分野もしっかりまとめられている点です。また、重要な箇所が太字になっているなど、初学者でも読みやすくまとめられています。消費者行動の視点から分析をする際、様々な理論や概念が紹介されているのまず参照してください。

大学院で学びたい、論文等にも利用したいということであればソロモンがおすすめです。欠点は高い、重い、分厚いです。個人的には読み物として読むというよりも、気になった点を深めるためとして利用することをおすすめします。コトラーのように百科事典のような感覚です。このあたりで興味のある分野がわかれば、専門書もしくは論文を読めば理解が深まります。事例が日本向けではなくて学生が持ってくるのも大変なので個人的には輪読には向いてない気がします。分冊版もあります。参考文献もしっかり載っていて参考になります。

消費者行動論の教科書にはいくつか課題があります。端的に言えば、(1) 重要概念に関する説明はしているものの、それらがどう関連しているかについてはあまり触れていない、(2) マーケティングとの関わりがわかりにくい。こういった点をカバーするのが本書です。2024年に出版されたこともあり、制御焦点理論や解釈レベル理論等、最近の議論もカバーされています。一方で、ブランドに関する議論はここまで紹介した書籍ではあまりされていません

マーケティング

石井先生の新書です。持ち運びもしやすく、わかりやすくマーケティングが説明されていて誰にでもおすすめできます。個人的に好きな本です。おそらく学生よりも社会人のほうがしっくりくると思います。

テーマ別研究演習で輪読している書籍です。身近なUSJをテーマにマーケティングが学べます。読みやすさで言えばダントツです。6章ぐらいまでがマーケティングとやや戦略の話で学生にも身近な話題で個人的にも面白くて好きです。ただ、ベースはP&Gのマーケティングなので、一般的なテキスト等に書かれていることや表現と少し異なることがあります。注意してください。

読み物というよりも、テキストという感じです。こちらも幅広く専門的に書かれているのでおすすめです。少し難しい気がしますが、学部生でも十分読めると思います。章が多いので講義には使いにくいですが、自分自身これを院生や教員になってから復習として読んでいます。マーケティングの理論や概念を用いた分析を行うならこれを参考にしてください。

ブランド

ブランドと言えばアーカーというぐらい有名な人です。これまでのアーカーの議論 (30年分ぐらい) がまとめられているので、はじめてブランドを勉強するには適しています。分量も多すぎず、文章も平易です。これを読めばブランド・エクイティやロイヤルティ、アイデンティティ (ビジョン) 等基本的な概念が学べます。本書で指摘されていますが、アーカーはブランド・アイデンティティという表現はしっくりこないのでビジョンと概念名を変えています。でも浸透していません。

ブランド論に関する議論が一通りまとめられています。百科事典のようにも使えますし、全体を読んでいくことでブランドという概念がどのように変化したのか、どういった点が議論されてきたのかを理解できます。ブランドづくりのプロセスがまとめられており、実務家からの評価も高い本です。ブランドの起源については田中先生独自の解釈がされていて、興味深く読めます。

拙著です。昨今注目されているブランド・コミュニティを勉強する上で役立つかと思います。本書からもブランド論の変遷を掴むことができますし、リレーションシップ・マーケティングについても丁寧に記述しています。ブランド・コミュニティを運営する上で何かしらのヒントが得られるかと思います。その他、卒論や修論・博論作成時、レビュー、定性的調査、定量的調査の流れは参考になるのではないでしょうか。広告学会の奨励賞もいただいています。

行動経済学 (意思決定)

再現性の問題も指摘されていますが、実験の考え方やアカデミックへの関心の入り口として勉強になるので目を通して損はないと考えています。なにより読み物としても面白いです。行動経済学関係は図書館にもたくさん置いているので読んでみてください。

研究手法

ケーススタディについてはこれらで初学者も幅広く学べます。方法論についても丁寧に書かれていますし、なにより実際のプロセスが載せられているのが魅力的な点です。下はエスノグラフィです。

少し毛色は違いますが、科学哲学の話や消費者行動論という学問分野そのものについて学びたい場合は阿部先生の本がおすすめです。

その他、定量的な調査に関する本はいくらでもあるので好きなものを、特定の方法論については論文を中心に学んでください。このあたりは指導の先生と話してください。

大学院受験用

多くの大学院では筆記試験があります。その際、特定の分野だけが出題されるわけではありません。年度によって出題者も異なります。商学であれば幅広くマーケティングや消費者行動論について勉強しておきましょう。もちろん、経営学も出題範囲になることがあります。こちらもしっかりと抑えておきましょう。私は受験時にはゼミナールで勉強していました。

最後に、論文やケーススタディに考えをまとめていくときは以下の記事を参考にしてください。


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