Tetsuro Kato

Ka na ta designer Twitter @kanatadesign In…

Tetsuro Kato

Ka na ta designer Twitter @kanatadesign Instagram @kanatadesign

マガジン

記事一覧

かなた旅館は土と糸へ

かなた旅館という旅館がありました。 それはKa na taの根元でもありました。 この場所を作ったことによって この場所があることによって Ka na taは かなたでいること…

Tetsuro Kato
3か月前
15

Ka na ta への手紙

2023年12月1日。記す。 加藤哲朗から Ka na taへ向けて。 あなたはいつも、ただの布でありたいと願うので なるべくあなたが、記号にならないように努力しました。 あな…

Tetsuro Kato
4か月前
32

Ka na ta 最後の日々へ

おはよう。8月26日の朝、この手紙を書くために久しぶりに家を離れて長野のホテルで朝を迎えた。 変わらないことは、長野の山奥でメリーときゅうと暮らしていること、きゅ…

Tetsuro Kato
8か月前
10

Coci la elle と Ka na ta

お久しぶりすぎて忘れ去られているかもしれません。 Ka na ta ではないこと。それが初めてのことなのでここに言葉を落とそうと思いました。 7月23日、新しい服の発表…

Tetsuro Kato
3年前
13

わたしはないの

服を脱げば わたしがあると 服を着れば わたしになると 思っていたのです 思っているのですが 見つからないの とてもわたしが ことばを 吐くの あなたに 挿すわ…

Tetsuro Kato
4年前
5

かなた 無謀な初めての歌

明けましておめでとう。ここに言葉を落とすのも、ずっと以来だ。 みんな生きてますか? 2019年のことは話さない。いつか話せる時が来るかもしらんし、きっと忘れることも…

Tetsuro Kato
4年前
2

ふ安定を集めるの

5月26日が終わって5月27日になりました。 ぼくの命がしてきたことについて、考えている。 大きなソファで横になったら昼間に出た、今はもういない汗の残骸を首筋に感じた…

Tetsuro Kato
5年前
5

苦しさについて

年を越して、色んな事が起きた。 誰かが苦しんでいて、その誰かが苦しくなくなるようにしたら その隣にいる誰かが苦しくて 今度はその誰かが苦しくないように、しようと…

Tetsuro Kato
5年前
9

Ka na taの2019年について

結局おはようございます。 おやすみなさいを言うつもりだったのに身体が一向に動かない。毎日コテを握って壁を塗っているせいで、右手がずっと痺れている。 昨日かなた旅…

Tetsuro Kato
5年前
8

皮膚をください

午前2時を超えた。 アトリエでミシンの音が聞こえる。縫製のくまちゃんが踏んでいる。 パターンを触る音は紙の味がする。 じゅんきが新しい服のパターンを作っている。 …

Tetsuro Kato
5年前
9

SHOW by Ka na ta 2018 の詳細

SHOW by Ka na ta 2013年 飴屋さんと 新宿三丁目どん底にて 2014年 西日暮里のプールにて 2016年 吉祥寺キチムにて かなたのえんげき そして 2018年 12月19日-21日ま…

Tetsuro Kato
5年前
8

あずさ

あと少しであずさが上諏訪に到着する。 あずさじゃない。この子はスーパーあずさだった。 僕は松本に向かっている。北陸新幹線に続いて、あずさにも全ての座席にコンセン…

Tetsuro Kato
5年前
3

11月3日

台風が過ぎた。 晴れ。 背中の痛みが少しひいた。10月30日は中野サンプラザで過ごした。気づいたら10月31日の朝になっていて、目が覚めたら八王子に居た。 あの夜のこと…

Tetsuro Kato
5年前
6

Ka na ta 秋と冬の服

おはようございます。月曜日の朝。 長野と東京を行き来して週末は新潟で壮平のライブがあった。 このツアーをみるのは2回目だけど相変わらず涙、流れしこと。明後日は中…

Tetsuro Kato
5年前
5

暴風警報

walking in the she. と、そうへいの歌を空耳して笑った。 前にブログを書いたのは 写真家の奥山の結婚パーティーの前日、千葉のホテル。 あの日の予告通りに暴風警報が…

Tetsuro Kato
5年前
18

台風の目の中

いま 自分がいる場所は 台風の目の中で あと少ししたら、もう一度暴風が吹くと分かっている。もう一つ分かっていることは台風の去った後は死ぬほど晴れることだ。 僕は…

Tetsuro Kato
5年前
8
かなた旅館は土と糸へ

かなた旅館は土と糸へ

かなた旅館という旅館がありました。

それはKa na taの根元でもありました。

この場所を作ったことによって

この場所があることによって

Ka na taは かなたでいることができたのだと思います。

最後の展示会でも、かなた旅館はこの先どうなりますか、なくならないですよね、と何度も聞かれました。

結論から言うと、かなた旅館はすでにもうありません。

ありませんが、土と糸、という名前の

もっとみる
Ka na ta への手紙

Ka na ta への手紙

2023年12月1日。記す。

加藤哲朗から Ka na taへ向けて。

あなたはいつも、ただの布でありたいと願うので

なるべくあなたが、記号にならないように努力しました。

あなたの名前は、Ka na ta ですが、服の上にはそれを証明するタグはありません。

服が、衣服を超えて特別な意味や価値を持たないように、ただひたすらに纏う身体に寄り添うように、あなたと歩んできたつもりです。

あなた

もっとみる

Ka na ta 最後の日々へ

おはよう。8月26日の朝、この手紙を書くために久しぶりに家を離れて長野のホテルで朝を迎えた。

変わらないことは、長野の山奥でメリーときゅうと暮らしていること、きゅうはもう小学2年の夏休みを終え、里山の集落は今日も優しさがこぼれていること。

変わってしまったことは、愛猫のアメが亡くなってしまったこと、今は3匹の猫といる。

あとちょっとで変わること、メリーのお腹の中には女の子が羊水の中で浮かんで

もっとみる
Coci la elle と Ka na ta

Coci la elle と Ka na ta

お久しぶりすぎて忘れ去られているかもしれません。

Ka na ta ではないこと。それが初めてのことなのでここに言葉を落とそうと思いました。

7月23日、新しい服の発表があります。

コシラエルとかなたで作った服。

コシラエルは、傘をずっと作っていて、僕の自宅にも2つのコシラエルの傘がある。雨の日、コシラエルの傘は空になる。その小さな空を見上げては、綺麗だと何度思ったことか。

7月1日、コ

もっとみる

わたしはないの

服を脱げば

わたしがあると

服を着れば

わたしになると

思っていたのです

思っているのですが

見つからないの

とてもわたしが

ことばを 吐くの

あなたに 挿すわ

いつも こころは

追いつかせるの

見つからないよ

とても あなたが

誰かの 見る が

わたしを 刺すの

こわくなるけどね

すべてを 脱ぐの

残った 水い 塊が

からだの 涙

戻ってゆくのです

どこ

もっとみる

かなた 無謀な初めての歌

明けましておめでとう。ここに言葉を落とすのも、ずっと以来だ。

みんな生きてますか?

2019年のことは話さない。いつか話せる時が来るかもしらんし、きっと忘れることもできる。

ずっと旅館を作ってきた。かれこれ、ずっと初めてのことをしている。服だけ作ってればいいんだよ、お前は。あの日、売れない芸人に言われたことを時々思い出す。

でもそうすると、きっと服を作れなくなってしまうから、そうやって生き

もっとみる

ふ安定を集めるの

5月26日が終わって5月27日になりました。

ぼくの命がしてきたことについて、考えている。

大きなソファで横になったら昼間に出た、今はもういない汗の残骸を首筋に感じた。きっとそれを集めて舐めればしょっぱいんだろう。

生命から出る残骸っていうのは大体、塩が水に溶けているから海水なんだ。涙も汗も鼻くそも。ぜんぶ海の水なんだ。水だけがどこかに消えて、皮膚の上には塩分だけが残るんだ。しょっぺーな。

もっとみる

苦しさについて

年を越して、色んな事が起きた。

誰かが苦しんでいて、その誰かが苦しくなくなるようにしたら

その隣にいる誰かが苦しくて

今度はその誰かが苦しくないように、しようとした。

なんとなく、それらの誰かが笑顔になったら

今度は、全く別の角度から、苦しい、と声にならない声が聞こえた。

大切な人のくるしいは、くるしくない、にできるならしたい。近い場所だったらとくに。

そうやって生きてると、ぼく苦し

もっとみる

Ka na taの2019年について

結局おはようございます。

おやすみなさいを言うつもりだったのに身体が一向に動かない。毎日コテを握って壁を塗っているせいで、右手がずっと痺れている。

昨日かなた旅館の客室の壁を塗り終わった。左官は水を理解しないとうまくいかない、と職人が言っていた。まさか。まさに。

沢山失敗して悔しくて、夢の中でも壁を塗っていた。でも最後には、良き壁になった。そこで過ごす人を包むものだから、布を作っている気がし

もっとみる

皮膚をください

午前2時を超えた。

アトリエでミシンの音が聞こえる。縫製のくまちゃんが踏んでいる。

パターンを触る音は紙の味がする。

じゅんきが新しい服のパターンを作っている。

ずっと見たかった景色が、やっとさっきみえた。

やっとさっきみえたんだ。

沢山のいろんなことを無視してやっと見つけたのは、

彼女から彼女を無くす方法について。

12月を超えて発表の19日まで2週間を切った。毎日新しいトワルを

もっとみる

SHOW by Ka na ta 2018 の詳細

SHOW by Ka na ta

2013年 飴屋さんと 新宿三丁目どん底にて

2014年 西日暮里のプールにて

2016年 吉祥寺キチムにて かなたのえんげき

そして

2018年 12月19日-21日までの3日間

吉祥寺キチムにて ショーをすることにしました。

【SHOW by Ka na ta 2018】

" I are a body "

日時 19時 open 19時4

もっとみる

あずさ

あと少しであずさが上諏訪に到着する。

あずさじゃない。この子はスーパーあずさだった。

僕は松本に向かっている。北陸新幹線に続いて、あずさにも全ての座席にコンセントが装備されている。

みんな充電がしたいんだ。

あと少しで屋根が完成する。今日は一日かけて掃除をした。ほんとうに丸一日掃除をすると、ちょっと洗われた気がして明日いいことあるかな、思ったりした。

あと少しでスーパーあずさが岡谷に到着

もっとみる

11月3日

台風が過ぎた。 晴れ。

背中の痛みが少しひいた。10月30日は中野サンプラザで過ごした。気づいたら10月31日の朝になっていて、目が覚めたら八王子に居た。

あの夜のことは話さないでおこう。

ふらふらになりながら東小金井の自宅へ。喉が枯れていた。屋根のない2階からブルーシートを眺めていた。綺麗、思った。

しばらくして松本行きのあずさに乗った。

茅野駅で降りた。かなたの店長の地元、茅野市は建

もっとみる

Ka na ta 秋と冬の服

おはようございます。月曜日の朝。

長野と東京を行き来して週末は新潟で壮平のライブがあった。

このツアーをみるのは2回目だけど相変わらず涙、流れしこと。明後日は中野サンプラザでツアーファイナル。

うた。

今日新作のトワルチェックをしたのち、東京に向かう。屋根があと少ししたらできる。

屋根が飛んだこと、歌になって大切な人たちがうたってくれたこと。

うた の 世界にはたくさんの大切な人がいて

もっとみる

暴風警報

walking in the she.

と、そうへいの歌を空耳して笑った。

前にブログを書いたのは 写真家の奥山の結婚パーティーの前日、千葉のホテル。

あの日の予告通りに暴風警報が発令した。

身体の調子を完全に崩して人生ではじめての抗うつ剤を飲むと、少し痛みが和らいで笑った。

まさか、たった一粒だけとはいえ、あの僕が抗うつ剤を飲む日が来るとは。

きっかけは台風24号だ。でもたぶんそれよ

もっとみる

台風の目の中

いま 自分がいる場所は

台風の目の中で

あと少ししたら、もう一度暴風が吹くと分かっている。もう一つ分かっていることは台風の去った後は死ぬほど晴れることだ。

僕は千葉の勝浦にいる。10年前にのばらチャックさんの別荘にメリーと2人で泊まりに来たことを思い出した。いまは3人でここにいる。

ここに居てはいけないし、ここに居なくてはいけない。そういう不思議な1日を、見知らぬホテルで過ごしている。波の

もっとみる