台風の目の中
いま 自分がいる場所は
台風の目の中で
あと少ししたら、もう一度暴風が吹くと分かっている。もう一つ分かっていることは台風の去った後は死ぬほど晴れることだ。
僕は千葉の勝浦にいる。10年前にのばらチャックさんの別荘にメリーと2人で泊まりに来たことを思い出した。いまは3人でここにいる。
ここに居てはいけないし、ここに居なくてはいけない。そういう不思議な1日を、見知らぬホテルで過ごしている。波の音が聞こえるような気がするし、風の音のような気もする。なんせ僕は台風の目の中にいて、明後日が来ればまた暴風の中に戻っていく。
長野の自宅の改装を考えている時に、東京の自宅の屋根が消え去って必然的に改装に入り、Ka na ta旅館の改装がもう少しで始まってしまう。3つの家の改装を同時に考えているのは、まるで建築家になったような錯覚に陥る。
3つ。3人。
明日は大切な友人の結婚パーティーがあるから僕はいまここにいる。雨を見るたびに、消え去った屋根の代わりをしているブルーシートを想う。
服を作らないといけない。新作の発表まで2ヶ月ちょっとしかない。と焦るのはいつも通り過ぎて焦らない。
台風の目の中の穏やかさに溺れてしまおう。泣いても笑ってもまた風がくる。
どこに向かうかな。
と、言ったって意味がない。どこかに連れていかれるんだ。
新しい場所に着いたら、この台風にきっと感謝するだろう。
そう信じて、風を待つ。
おやすみなさい。
台風の被害を友達に伝えたら全員笑った。
これは喜劇だ。
僕が一番好きなやつだ。
悲劇と見せかけて喜劇。
かならず。
そういえばブルーシートって演劇をずっと前にみた。トイレにはその戯曲がおいてある。
僕の人生いろいろあるからまだまだおもろそう。
おやすみなさい。
また明日。ね。