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長編小説『くちびるリビドー』第10話/2.トンネルの先が白く光って見えるのは(4)

私も今ならわかる。あの感じこそが、恒士朗の「他人に気に入られようという下心の一切ない、純粋な品のよさ」なのであり、決して冷たいわけでも感じが悪いわけでもないのだ。だけど、他人への興味がまるでない彼の嘘のないその在り方を前にすると、何かが完全に遮断されているような心もとなさに包まれる。//物語は第2部――あのとき下した決断の延長線上に、彼はいた。

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くちびるリビドー


湖臣かなた




〜 目 次 〜

1 もしも求めることなく与えられたなら
(1)→(6)

2 トンネルの先が白く光って見えるのは
(1)→(6)

3 まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風
(1)→(8)


2

トンネルの先が
白く光って見えるのは


(4)


 くらくらしながら露天風呂を出て、恒士朗が眠る部屋へと戻る。
 和モダンの素敵な和洋室。二つ並んだローベッドの右側で、恒士朗は私と抱き合ったあとの状態のまま、まるで誰かにスイッチを切られたかのように爆睡していた。外したコンドームを包んだティッシュペーパーの塊が、その枕元に転がっている。

 私たちが抱き合うことなんて、もう一生ないかもしれない。

 そう思っていたのに、コンドームを持って来ていたなんて意外だった(恒士朗にとってそれは絶対必需品で、それなしにセックスすることなどあり得ない。だから少なくとも彼は、こうなる可能性を想定していたのだろう)。

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“はじめまして”のnoteに綴っていたのは「消えない灯火と初夏の風が、私の持ち味、使える魔法のはずだから」という言葉だった。なんだ……私、ちゃんとわかっていたんじゃないか。ここからは完成した『本』を手に、約束の仲間たちに出会いに行きます♪ この地球で、素敵なこと。そして《循環》☆