「格差と貧困のないデンマーク~世界一幸福な国の人づくり」という本を読んで日本の高等学校の在り方に疑問を持った
なぜ誰もが高校に進学しなくてはいけないのか。
高校は高等教育を必要とする人が受ければいい。
そう、筆者は問いかけます。
たしかに。
なぜ、わたしは、日常生活に不必要な、微分積分、三角関数などを必死に勉強したのでしょう。
今となっては、不思議です。
日本の高校への進学の一般化は「高校くらい卒業していなければ」という考えが社会全体にあるからです。高校を卒業しないと就職ができない。だから「高校くらいはでておけ」になるのかもしれません。
「高校くらい」って、とりあえずなら「どんな高校でもいい」ということでしょうか。
どんな高校でも学歴は「高卒」になりますよね。
デンマークでは高等学校へは、将来の目的や希望を叶えるために高等学校、大学への道をたどるのです。
将来高等学校の教育を基盤にして、さらに上級学校へ進む人のみが進学します。上級学校、つまり大学へ進学する理由は「将来自分がなりたい職業が大学を卒業しなければならない」からです。
日本では、なりたい職業の希望を抱いても、「まずは高校を卒業してから」というのが普通で、将来なりたい自分の姿にたどり着くには、ずいぶんと遠回りさせられています。
「これがいままでの常識だから」というフィルターで子どもの進路を見てしまうがゆえに、日本国中の大部分の大人たちがよくも悪くも、青少年たちを自ら選択して人生を歩まないレールに乗せてしまっているのです。
たしかに。
自分で決めているようで、教師や親に誘導されていたりするかもしれません。
他者が敷いたレールに乗って生きていくことは簡単ですが、他者が決めることに慣れてしまえば、人間は考えることをやめてしまいます。
進路指導とは、たんに進学先を決めるのが仕事ではありません。子どもたちの人生の進路指導をしているのです。日本の中学校の生徒は、その後の進路を決める時、どこの高校に入れるか、どこの高校に行かなければならないのかが最大の悩みでしょう。
同じ時期、デンマークの生徒は、自分はどのような仕事をして、どのような人生を選ぶのかを一生懸命考えます。子どもは、自分がなりたい職業に就くには高等学校に進学するのか、職業別専門学校へ進学するのかといったことを調べます。デンマークでは、国民学校を卒業する15~16歳には自立がある程度完成されているのです。
日本では、高校や大学卒業前、どの仕事に就きたいかを考えるときに、何も思い浮かばないのはどうしてでしょうか。日本人がこのような状態に陥ってしまうのは、進路を考える時期が遅すぎるからです。
中学生のうちにやりたいことを見つけても「その職業に就くのはいいけれど、高校だけは出ておきなさい」と親に説得されてしまいます。もちろん、親は子どもをいじめるためにやっているわけではありません。子どもの将来の選択肢を増やすために「高校へ行け、大学へ行け」と言っているのでしょう。
でも、それは間違った愛のムチなのです。親は、自己決定がどういうものなのかを理解しなければなりません。決定権は子どもにあるのです。少し遠回りでも本人に考えさせないといけないのです。
「とりあえず高校へ行け!」という考え方を改めなくてはと思います。
デンマークの親は、勉強で人生の善し悪しが決まってしまうとは考えておらず、自分の子どもに合った人生を歩んでもらうことを何よりも願っているのです。
そう聞いて、頭では理解しても矛盾した行動に出てしまうものです。
いざ自分の子どものことになると、やはり「大学くらい行きなさい」あるいは「高校だけでも出ておきなさい」になってしまうのです。子どもたちに学歴よりも実力を備えることを教えるのには、いままでの概念を変えるという意識改革が必要なのです。
自分の子どもに対する意識を変えようと思いました。
でも、わたしは、かねてから日本の「高校受験」に疑問を持っています。
「高校受験」があるから中学で受験で点数を取るための勉強しか教えられていないのではないかと。
ちなみに、デンマークでは日本の高校入試のような入学試験はありません。
デンマークでは高校や職業学校へ進むために学習塾に通うなどしてしゃかりきになって勉強することも不要で、子どもたちはゆっくりと過ごすことができます。受験がないのだから学習塾も予備校も存在しません。その結果、生徒たちは感受性豊かな時期に、さまざまなことを自由に経験できる時間を手に入れられます。
子どもの限りある時間を自分の本当にやりたいことに使えるというのは、大変うらやましいです。
デンマークは地下資源がないので、人材、いわば子どもが資源となるわけです。子どもは将来の労働市場の担い手ですから、国は教育を重視しています。
日本ではみんなが大学に入学できるように子どもを育てていて、デンマークでは国に必要な人間味のある人を育てている。
教育の目的が違うのですね。
わたしの息子は今7歳ですが、自分で考える力を育てるため、対等の立場で対話をしていきたいと思いました。
最後に、著者の千葉忠夫さんから読者へのメッセージを載せておきます。
長いですが、大事なことだとわたしは思います。
『現代社会には、100近くにもなる職業があると思います。
それらの職業の大部分は高等学校で習得しなければならない知識を必要としない職業だと思いませんか。「高等学校だけは卒業」という無意味な考えから卒業しませんか。その考えが子供たちの希望の芽を摘み取ってしまっているのです。
パン屋になりたい、美容師になりたい… 、子供たちがなりたい仕事は山ほどあるのです。この夢を抱いている子供たちになぜ高等学校を強いるのでしょう。
みなさん、今一度あの高等学校の教育内容を思い出してください。あの教育内容はすべての子供達に必要なのでしょうか。高等学校卒業という資格を取得することが目的ならば、もっと実のある資格の取得を目指したらいかがでしょうか。
子供たちが自分のなりたい職業に直結する高等教育を受けられるようになれば社会への希望の芽を持ち続け、学ぶことの喜びも失うことなく、次のステップへ進めるのではないでしょうか。
現在、高等学校卒業の資格を必要とする職業、たとえば医師、教師、などを目指す子供は、高等学校の普通科で学び、それ以外の職業を目指す子供は、職業別専門高等学校で学ぶようになれば日本国民は99%高校卒と世界に誇れるかもしれません。』
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