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ショートショート:「居合わせた死神」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。
今回は〝死神〟で小話風なお話です。
ゆるくブラックコメディ的に書いてみました、今回も息抜き回です。
楽しんで頂けると幸いです。


【居合わせた死神】

作:カナモノユウキ


高層マンションのエレベーターに、怪しい人が入ってきた……と言うか、人なのか?
黒い…ローブ?に、ドクロの…マスク?
そして銃刀法違反にしか見えない、デカい鎌。
これってアレだな、ゲームとかでよく見る……〝死神〟ってヤツだな。
『暑いのに大変ですね、デリバリーですか?』
「え?あ、ええ。このマンションにお届を。」
『オンラインフードデリバリーって言うんでしたっけ、そういうお仕事。』
「そうですね……、そんな感じです。」
『……あー。僕のこと、気になります?』
「え?あー、まぁ。それってコスプレですよね?」
『いやいや、これ全部本物なんですよ?ホラ。』
そう言って被っていたフードを取ると、顔面にはドクロだけがあって。
筋肉や内臓といったモノは一切見受けられない……。
『こうしたら分かり易いですか?』そう言ってドクロを外し、首から上には何もなくなって。
その外したドクロがケタケタと笑っている。
「うーわ……マジもんっすか。」
『マジもんです、ビックリしました?』
「そりゃあもう、しっかりと。」
『にしては落ち着いてますね~。』
「……フードデリバリーって、結構色んなとこ行くから変なもん見るんで、何か馴れてるっつーか。」
『なるほどですね~、都内せせこましく動いてるだけはありますね~。』
「まぁ……、あの一応確認していいですか?」
『ハイ、何でしょう。』
「貴方……〝死神〟ですか?」
『もちろん!この地区の死神です。』
そう言って懐から名刺を出してきた、そこにはしっかりと【死神:ゴトウヘブン】と書いていた。
「ゴトウ……ヘブンさん。」
『ハイ!何でしょうか。』
「ゴトウさんは、ここに何しに?あのやっぱり、誰かを迎えに?」
『あー、お迎えサービスはまた別な奴がやっていて、私はデリバリーです。』
「デリバリー⁉え、死神デリバリーですか?」
『そうなんですよ~、裏サイトで広告出したらバズりまして。《死にたい方は刈り取ります!》って出したら人気出て。今では日に数十件注文があるほどです、いやぁ~、ウイルスで忙しい中の新事業だったんで不安でしたが良かった。』
「凄いですね、一件どれくらいで引き受けてるんですか?」
『あー、料金は頂いてません。その代わりに、刈り取らせていただく方の残り寿命を頂きます。』
「その刈り取った残りの寿命って、どうするんですか?」
『もちろん、有効利用しますよ。延命処置が必要な方に提供したり、被災地に出向いて寿命分けたりね。』
「死神さんてそんなこともしてるんですね。」
『皆さんから悪いイメージとか、パンクなイメージ持たれてますけど。これでも一応神様なんでね。生き物の命と死を扱う者として、誠心誠意向き合わないとといけませんので。』
「なんか、そっちの方がやりがいありそうだな……。」
『お、今のお仕事がご不満ですか?』
「不満って訳じゃないけど、何かずーっとやっていたい仕事でもないですし。俺いろんな仕事するんですけど、やりがい感じたこと無くて。27歳でデリバリーで金稼いで生活して。〝いつかはやりがいのある仕事がしたい〟って夢見てるんですけど、そしたら自分のやりたいこととか色々。どんどん分からなくなってきて、気付いたら無心にデリバリーの仕事続けてるって感じで。」
『中々生きることに憤りを感じているのですね、では今度ウチでアルバイトしますか?』
「え!人間も働けるんですか⁉」
『もちろん、うちは人材不足で困っていたので助かりますし。丁度今から仕事なので、良ければ見学します?』
「あ、でも今からデリバリーがあるんで……。」
『ならそれが終わった後にでも、何階ですか?』
「75階ですね。」
『偶然偶然、僕も75階です~。アレ?何号室ですか?』
「えっと……7501ですね。」
『あらあら、一緒じゃないですか!』
「え‼この人殺しに行くんですか?」
『ご注文がありましたのでね、でも不思議ですねぇ。死ぬ前にデリバリーなんて。』
「……最後に、好きなもん食って死にたいとかですかね。」
『なるほど!〝最後の晩餐〟ってやつですね!ならこの出会いも運命ですね。』
「なんか、複雑な気持ちですけどね……。」
『さぁ、では早速職場体験いたしますか?』
「あー、とりあえず考えさせてください。」
会話が終わるころには、エレベーターは目的地に到着していた。
なんか……届けたくないなぁ。
ゴトウさんは後ろでデリバリーが終わるのを待つようで、表情は分からないけど……多分笑顔だ。
何か複雑な気持ちだけど、まぁいいか。
何事も他人事だ、気にするな……気にするな……。

――ピンポーン――

「お待たせしましたー、ウーバンイーツです。」
「おっせーよ!さっさと持って来いよ!ホラ、金ここ置いとくからな。さっさと消えろカス。」

――バン‼‼‼――

床に散らばった千円札と小銭……、さっきまでちょっと複雑な気持ちの俺がバカみたいだな。
「あの……、死神さん?」
『ハイ!なんでしょうか!』
「アルバイト、今からで良いですか?」
『ハーイ!喜んで~~‼』
〝ヤリがいのある仕事〟、見つけた……かも。


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

何だかダークで軽い話が書きたい気分で、〝ポップな死神〟をイメージしたら、何故かデリバリーになりました。
正直、こんな仕事あったら嫌ですけど。
色々と解決できることもあるのかな~、なんて想像を書き終えてからしていました。

力量不足では当然あるのですが、
最後まで楽しんで頂けていたら本当に嬉しく思います。
皆様、ありがとうございます。

次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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