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短編小説:「わたし史上最大の作戦」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。
今回は〝先生と生徒の恋愛〟で考えました。
ちょっと前にお題を頂き、そこから考えました。
また少し長くなってしまいましたが。
楽しんで頂けると幸いです。


【わたし史上最大の作戦】

作:カナモノユウキ


今日が最終決戦、卒業前のラストチャンス。
…そう意気込むと、いつも通りにからかえないんだよなぁ。
わたしは、気持ちを伝えたいのか、そうでないのか。
未だにその〝答え〟は出ていないけど。
……とりあえず、決戦の放課後はもう直ぐ。


―――この作戦が開始したのは、選択科目を選んでからだった。
わたしは理系を選び、そこで出会ってしまった、担当の小林先生に。
身長はやや高めの178センチ、そこ以外は特に見た目のとりえは無し。
明るい性格で、男女共々から人気がある。
いや、正確に言うと皆が好む、この独特な〝安全な空気〟と〝優しそう〟というダブルポイントで。
女子生徒から受けがいい。だからこそ、小林は他の女子生徒から狙われ続けている。
「小林さん、さっき他の子からプレゼント貰ってませんでしたか?」
「小林さんじゃなくて〝先生〟と付けなさい。」
「いやいや小林さん、話を逸らさないでください。プレゼント、貰ったんですか?」
「……貰ったよ。」
「あら~、顔赤らめて、嬉しかったんですかぁ?」
「そりゃあ!プレゼントだからな!好意を喜ばないやつはダメだろ。」
「へぇ~、その好意はライクなのかラブなのか、そこが問題ですねぇ。」
「望月!そういうのは良くないだろぉ~。どちらにせよ好意は好意だ。」
「どちらにせよ……ねぇ。」
小林はこういうとこがある、好意を全て〝ライク〟に変換してしまう。
だからわたしは作戦を立てた。
題して【小林〝ライク〟より〝ラブ〟作戦】‼
作戦名のまんまな内容、小林がいつもライクに変換してしまう所をラブに変えてやろうという作戦。
……当初は、案外簡単だろうと思っていた。
「小林さん!放課後、勉強教えてください!」
「先生を付ける気もう無いね望月くん。おお、なら他の子も誘ったらどうだ?」
「え、二人っきりに決まってるじゃないですか。」
「二人っきりだと、前みたいにスマホゲームし始めるから駄目だ。」
「しましたっけ?」
「ガッツリしてたし、俺の話も上の空だったろ。」
先ず一つ、わたし自身の欠点。
『男性と一緒に居ると、緊張して集中できない。』
これを失念していて、ターゲットの小林に成れるのに1年掛かった。
わたしは男性が苦手だったみたいだ。
ちょっかいをいっぱい掛けて成れたあと、丁度修学旅行の最中。
自由時間に二人っきりで京都を歩くチャンスがあった。
「小林さん、なんかデートみたいですねぇ。」
「デートって、望月が迷子になっただけだろ。」
「いやいや、これも〝作戦〟ですから。」
「なんの作戦だよ。」
「ん?小林さんをからかう作戦に決まってるじゃないですか。」
「望月は俺をからかうことしか頭にないのか?」
「いえいえ、ちゃんと勉強も青春も考えてますよ?」
「ならいいけど、先生は心配だよ。」
「……心配なら、もうちょっと別の所も気にかけて欲しいんですけどね。」
「何か言ったか?」
「いいえ、なんにも言ってません!」
「お!ここでお参りでもしてくか?」
そこは有名な観光スポット。
縁結びに定評のある『八坂神社』に辿り着いたのは、京都の神様がくれた奇跡!そう思うことにした。
鳥居をくぐり、中を散策しながら進み。
調べてどーしても行きたかった『大国主社』へ。
「ここって、〝縁結び〟に定評があるみたいですよ?」
「へぇ~、先生には全く縁が無いから関係ないなぁ。」
……ムードも何もない男性教師と言うのも、考えものだ。
ただ嬉しいことはあった。
「せっかくだし絵馬でも書いてくか!」
そう言って小林は、ハートの形の絵馬に【望月の合格をお願いします!】と書いてくれた。
それがとても嬉しかったのは、今でも忘れない。
「望月にも買ったから、これに何か書いてみな。」
そういう小林の横で堂々と、【小林が落ちますように。】と書いてやった。
しかし小林は「やめろよー、何に俺は落ちるんだよ。」とアホな答えを返す始末。
手ごわい、脳の中身に恋愛って回路が存在するのか怪しくなってきた。
ただ、また見つけたわたしの欠点。
『わたしは凄い不器用で、色恋とかの駆け引きが下手。』
自覚はしたけど、改善して必ず小林を〝ラブ〟な状態にする!
って意気込んだけど、高校二年は割と忙しすぎた……。
学祭に冬休み、そしてテストのオンパレードで、あっと言う間に二年は終わった。
このままでは、【小林〝ライク〟より〝ラブ〟作戦】が失敗に終わる!


――――そんなことを続ける余裕なんて無くなって、受験勉強に突入したわたし。
なるべく小林の傍に居る様にしたけど、わたしに作戦を遂行する余裕なんて無かった。
小林……いや、小林先生は皆の勉強を見る傍ら、わたしに勉強を教えてくれて。
真面目に受験勉強もしてたけど、その時間を楽しんでも居た。
そして、一月。
一般入試当日、家の前に小林先生が居た。
「望月、良ければ送ってくぞ。」
「小林さん、学校は?」と聞くと、「俺は今日半休取ったから。」とドヤ顔でわたしを待っていた。
小林先生は、こう言う所がある。
さっと優しくしてくれて、パっと不安なときに笑顔をくれる。
「望月頑張ったもんな、だから俺は信じてるぞー。」
「ありがとう……小林先生。」
「やっと先生って付けたかー!今日は間違いなくいい日だな!」
わたしの前で笑顔をバラまくこの先生に出会えて、心の底から良かったと思う。
受験会場に着いて、背中を見送ってくれる小林先生。
少し歩いて振り返ると、「ガンバレ‼」って手を振ってくれてた。
ここで落ちたら、恥さらしだ。
小林先生と頑張ったこの一年以上の時間を無駄にしないために。
全部を出し切って、その日を終えた。
しばらくは放心状態だったけど、頭の片隅には、いつも小林先生が居た。


――――そして本日、わたしは長らく保留にしていた作戦を終了させるべく。
小林先生……いや、ターゲットの小林を学校の屋上に呼び出した。
「望月―、なんだ用事って。またからかうつもりか?」
「はい、からかうつもりです。」
「ほう、真っすぐ言うなぁ。もう最後なのに。」
「最後だからです。」
「ほう、なら望月。最後に俺をどうからかうつもりだ?」
「好きです。」
「……望月?」
「ずっと前から、好きでした。」
「……うん。」
見たことない顔してる、多分…わたしも見たことない顔してる。
というか、わたしはどうするつもりだったのか。
そんなことを考えていたはずなのに、口から出たのは随分と自分らしくない言葉だ。
いやいや、これが自分らしいんだ。
とっさに頭が素直になることを選んだ、そういうことだ。
「小林先生は、わたしのこと好きですか?」
「……。」
軽い沈黙が、こんなに心臓を五月蠅くさせるんだ。
早く、早く答えて欲しい……。
「好きだよ、でも今じゃないな。」
「……今じゃないって、どういうことですか?」
「今は、違うと思うんだ。」
「……それは、遠回しにフってます?」
「違うぞ望月。」
小林先生は、わたしの手を包むように両手で握り。
いつもとは違う、優しそうな表情で答えた。
「今はもっと他を楽しめるはずだ、だからそれを楽しみ飽きたら、今度は二人で楽しもう。」
「……それって。」
「待ってるからな、望月。」
最後に小声で、「ナイショだぞ。」と言うと。
先生はわたしを抱きしめて、「卒業おめでとう。」と頭を撫でてくれた。
この作戦は……大成功だったようだ。


――――その後、わたしは無事に大学に進み。
毎日会っていた小林先生…いや、友則さんとは週数回の電話で繋がる関係に発展。
晴れて今年、わたしは友則さんと付き合うことになった。
あの日、理系を選び、友則さんに出会うことができて。
あの〝わたし史上最大の作戦〟に成功した自分を。
これからはタップリと、愛でてもらおうと思う。


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

なんだか爽やかな話を書きたくなったのもあって、
なるべく恋愛感を滲みださないように書いてみました。
最近ドロドロとした話が続いたので、
何だか書けてよかったです。

力量不足では当然あるのですが、
最後まで楽しんで頂けていたら本当に嬉しく思います。
皆様、ありがとうございます。

次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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