食べても地獄、食べなくても地獄


私が当時おそらく、摂食障害であったときの話をしてみようと思う。

Twitterで私の写真を見てくれている方はわかると思うが、今の私はほどほどに肉付き、細くもなく太くもないような身体だ。(と自分では思っている)

私が今の身体を受け入れ、作るのにはすごく時間がかかった。

身体というよりは気持ちの方が大きい。

うちは両親が小学生の時に離婚した。
母は身長が高く、細く、白く、友達や友達の母にもモデルさんみたいね、とか、女優さんみたいね、と言われていた。

私は小学生の頃からどちからというとぽっちゃりで、初めて明らかなダイエットをしたのは小学5年生。
母は私に、「大人になったらママみたいになるから大丈夫よ」と言っていた。

当時の数字などは明確でなく比べるものもないため出さないが、ぽっちゃりから細い子、と思えるくらいまで痩せた。それが小学6年生の頃の話。

母親は離婚し家を出て、私の食生活は祖母が支えてくれた。
父は毎日は家に帰ってこず、数日に1回、1週間分の菓子パンを買って帰ってきた。

朝は菓子パン、昼は給食、夜はおばあちゃんのご飯。
成長期ということもあって太らないはずがなく、気がついたら身長147cm、体重が45kgくらいになってた。

それが中二のとき。
そして親が再婚し、継母がやってきた。
継母は、私の父は細い女が好きなんだ。と言う。
だから太れないんだと。

継母は母ほど華奢ではなかったが、細い女性だった。

当時彼氏ができた。
彼はとても細くて、白くて、華奢な男の子だった。身長だけ私より高かった。

細い彼氏、細い女が好きな父親、痩せない理由はなかった。
夜ご飯を食べるのをやめた。
朝ごはんは菓子パンをやめ、豆乳とトーストにした。
おやつはグミを買ったら数日にわけて食べた。

体重はみるみる減っていき、個人的にセーフゾーンの42kgまで落ちた。

彼氏は夏休みの間、家に引きこもりネトゲをしていて、食べるのをおざなりにしますます痩せていった。
初めてハグをした時に細さに驚き、自分の体の厚みが恥ずかしくなった。

さらに食べる量を減らした。
今まで給食はしっかり食べていたのをご飯は半分にして、休みの日は1日ほぼ断食状態だった。

もともと食べることやおやつが大好きだった私は、常に頭の中は痩せたい、食べたい、食べたい、でいっぱいになっていった。

今思うと当たり前なんだが、成長期の真っ最中の体でそんなことをしておかしくならないわけが無い。

夜ご飯を食べないことで空腹で夜、眠れなくなる。
空腹を紛らわし、くびれを作るために父親が腰痛用に買っていたコルセットを1番キツく締めて寝た。

それでも夜中には目が覚めてしまい、朝が来るのを待つ。

私は文化部だったので、体が疲れるほどの運動もたいしてしていなかった。

夜に眠れなくなると自律神経も徐々におかしくなり、授業にも集中出来ず、友達との会話も退屈になり、学校に行くのがだるくなってしまった。
学校に行ったら給食を食べなくてはならない。
でも通学(約40分)の自転車の消費カロリーは捨てがたい。

そんな葛藤の末、学校に行って2時間目には保健室に行く。そして4時間目には帰宅する。

体重が40kgを切り、39kg、38kg…とだんだん減りも減らなくなっていた頃には私は普通ではなかったと思う。

それまでやめていたお菓子を大量に買っては、ファミリーパックだからひとつずつ食べたら辞めたらいい、と思いつつも全て食べ切ってしまう。
お小遣いの殆どをコンビニで衝動的に買うおやつに費やし、そして食べた後には気持ち悪さと罪悪感だけが残る。

吐くことを試みるが、私は昔から嘔吐恐怖症のためそれもできない。

おばあちゃんの買っていたコーラックを本来の量以上に飲み、そして夜中にお腹をくだす。

便が全て出ると、体重は軽くなっていた。

そんなことを繰り返していた。
時系列や、当時のことはあまり覚えていない。
前述の記事でも書いたが、私はたびたび記憶が薄くなっているところがある。

毎日泣いていた。
ノートにカロリーを記入しながら、(当時流行っていたレコーディングダイエットを取り入れた)食べすぎたことに罪悪感を感じ、コーラックを一気飲み、
いつまでこんな地獄が続くんだろう。

今でも鮮明に、床に寝転んで、天井を見上げながら考えたのを覚えている。

体重や体型を気にせず、おばあちゃんみたいに食べたいものを食べて、美味しいものを美味しく思える、そんなふうになりたい。

それでも今の私には細い手足も、顔も、お腹も、洋服も、何もかも諦められない。

おばあちゃんになりたい。
こんな苦しい思いをして生き続けるなら、目を閉じて開けたらおばあちゃんになっていたい。

死んだらどうせ焼かれて骨になるのに。
おばあちゃんになったら体型なんて関係なくなるのに。

先生にある日声をかけられた。
私の苦手な音楽の先生だった。
大丈夫か?○○、急に痩せすぎて心配だって担任も言ってたぞ

私はああ、今の私は以前よりは痩せてみえるんだなあと思った。
それでも雑誌に出てくる女の子よりは太かったし、幼なじみのMちゃんはもっと細くて華奢だった。

彼氏とは別れた。
思ったことを言えず、お互いに話さず、気付いたらすれ違いが拗れて拗れて、ダメになってしまった。

何がきっかけだったかはわからない。
いくらコーラックを飲んでも体重が減らなくなり、むしろ増えてきた。
40kgを超え、43、44kgくらいに戻るのはあっという間だった。

毎日家にあるお菓子を全部食べて、給食も残さず食べた。
そんな自分が嫌で、太っている自分が嫌で、消えたくて、消したかった。

食後の罪悪感と、カロリーを計算する癖と、そして結局それに抗えない自分自身。

いつになったら私は幸せになれるのだろう。

周りのみんなと体型を比べ、体重の増減に一喜一憂し、食後は罪悪感で憂鬱になる。

それは高校に入っても消えず、そして就職する頃には徐々に薄れていった。

それでも自分はデブだという気持ちが消えなかったし、やはり体重に固執し続け、食べ物をカロリーで選んでは心から美味しいと思うより、カロリーを計算してしまう。

そんなのが完全に消えたのはいつだろう。
太っていく自分を、女性らしく丸みのあるからだを、受け入れられるようになったのは本当に最近かもしれない。
 
今は程よく運動をし、好きなものを美味しく食べられる。外食に行ってカロリーではなく食べたいものを食べれる。
食事をすると幸せな気持ちになれる。一緒に食事をする相手と楽しく会話ができる。
食べすぎたと思ったら次の日少しだけ控えたり、運動を多くする。

今、SNSを開くと細くて、綺麗な子の食生活やダイエット方法がすぐに流れてくる。
そういったものに影響され、摂食障害になったり、細くなきゃいけないんだと思い込んでしまっている人がすごく増えてしまったと思う。

でも、成長期の無理なダイエットは身体も心も壊しかねないし、成長期に食欲があるのも、体重が増えるのも当たり前のことなんだ。

食事は幸せで、楽しいことだ。
すこしでも苦しい思いをしてしまう人間が減ってしまうように、心から願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?