斈蔵 環

まなくら・かん と読みます。

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マガジン

  • グレイゾーン・シンドローム

    小説「グレイゾーン・シンドローム」のまとめ用マガジンです。 2018年6月11日より連載開始。

最近の記事

「きのう何食べた?」が流れるお正月

お正月進行のテレビをザッピングしている中。 「きのう何食べた?」の再放送と正月特番を見ていて、あぁ、このドラマが地上波で流れている正月ってなんかいいなぁ、と思った。 なんかいいなぁ、を言葉にするのが物書きのしごとなのかもしれないと思って筆をとる。 「ノンケもゲイも悩んでることは一緒じゃないか」、というようなことを、主人公のシロさんが言っていたのが印象的だった。 結婚しろだとか、子どもを作れだとか、まわりにあーだこーだ言われるのは、ある一定の年代の男女には『あるある』だ。 そ

    • 夏の桜

      桜が散った頃 私は新緑を眺めて 毛虫に想いを馳せました 私の中に 降りてくるものと 私の中を 湧き上がるもの 私の中はいつもぐちゃぐちゃで 私の外もいつも傷付いた世界だった 桜の樹に触れて 微生物が私の掌を侵食した頃 私の心の一部分も死んでいった 涙にもならず ただぼとぼとと泥のように積もっていった私の心を 誰も掬わず かみさまがまた一人死んだのだと さようならを繰り返す 私がまた少し欠けただけだった さようならを繰り返して 泥になった私を残して 新緑のトンネルを

      • 半身(半神)

        私がもう一人いたら 私のからだのすみずみまでを 的確にマッサージできるのにな、と思う 私がもう一人いたら 私がピアノを弾きながら 私がマイクを持って歌えるのにな、と思う 私がもう一人いたら 私がお散歩しているあいだ 家事も済ませられるのにな、と思う 私は私の片割れを 探そうとか、作ろうとか、 昔はそう思ったけれど、 だいぶ前に諦めてしまった 自分が半分のままだと不完全な気がしてならなかったけど 私の不完全さを 誰か他人が愛してくれるわけでもないので、 私はびっこひき

        • 無題(生活への介入、恋、それから)

           食器を洗いながら、恋について考えていた。  遠距離の恋人を思うのと、空想上の恋人を思うのは、何がどう違うだろう、どこに共通項があるだろう。  最初に思いついたのは、「空想上の恋人とは電話はできないな」、だった。ひとりでご飯を食べているとき、今目の前にいない人のことを考えることはできるかもしれない。「あの人は今何をしてるだろう」「晩ご飯は何を食べるのかな、ちゃんと寝られてるかな」とか。自分の思考の中に、他人の生活が入ってくるのは、好きな相手のことならどことなく嬉しい。少しだけ

        「きのう何食べた?」が流れるお正月

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        • グレイゾーン・シンドローム
          1本

        記事

          プロローグ

           六月、昨日から雨が降り続き、灰郷(かいきょう)にもあちらこちらに大きな水たまりができている朝。  空蝉(うつせみ)はかっぱらってきていたよれよれのビニール傘を差し、いつものように顔なじみの地区を散歩していた。  空蝉はこの地区の千代(ちよ)ばあの家――家と言っても打ちっぱなしのコンクリートで囲まれただけの空間で、家具と呼べるものはすべて捨てられていた廃棄品を集めてきたものだった――に住んでいる。  目と足を悪くした千代ばあの代わりに、同じ地区に住む人たちの安否を確認するの

          プロローグ

          週末作家のはじまり

           みなさま、こんにちは。  この度、昔作っておいたアカウントを使い、小説を連載してみようと思い立ちました。  今の世の中、いろんなアプリやサービスで、いろんな夢が叶いやすくなりましたね。  私が幼い頃は、小説を連載しようと思ったら既成の雑誌に投稿したり、今のものと比べれば本当に簡易な同人誌を作ったり、というアイデアしか思い浮かびませんでした。  少し年齢が上がってからは、インターネットで公開することもできるようになりましたが、それも自分でホームページを作るスキルがなければ出来

          週末作家のはじまり

          ホメオスタシス

          焼け野原に佇む二人 お墓の前で項垂れる一人 いつまでたっても癒えぬ身体は 時間が解決するはずもなく せめて化膿は免れ 訳も知らず 教えられず 見つけられず 立ち止まったら足を取られ 身体はまだ癒えぬ それほどまでに深い傷が いっそ殺してくれたらいいのに 何故かいつまでも私を生かす

          ホメオスタシス

          非日常が集合体になって 言葉がぽろぽろとこぼれていく 今朝の透き通った空気の中 降り止んだ雪が道に残り 畑には霜柱が立ち 窓の向こうに富士をのぞんだ 今夜は一年ぶりに オリオンとシリウスがわたしの前にあらわれる

          季節外れの桜

          季節外れの桜が散った そんな予感は少ししていた 新しく泣き出した子どもは いつの間にか 目に涙をためたまま桜の木をじっと見ていた 終わるのを待つ 終わるのを待つ なすすべはなにもない コントロールの外れた 雪の上を歩いていることは 大地を歩いていることにならない気がして いつの間にか もう小さな子どもではないことが なんとなく、わかった気がした

          季節外れの桜

          一線を越えて

          日付が変わる少し前に 人の多い電車に乗る みんな向かう方角は同じなのに 向かう先で待っている人は違うんだろう 疲れた顔をしている人の多さの中 私だけは 「これからあなたのところへむかいます」と きらきらした顔で窓に映る私を見る 特別なような、なんでもないような、 一日がもうすぐ終わるけれど お腹が空いたので 夜はもう少し長いままでいて

          一線を越えて

          プロフィール

          斈蔵 環 まなくら・かん と読みます。 好きなもの:食べること、寝ること、散歩。 読書、映画、美術館、ピアノを弾く、風呂で歌う。 noteは連載小説メインで更新。他にも詩を書いたり、随筆を書いたり。 blogでは二次創作をこっそり書いています。 最近のマイブーム:英語の勉強中。イギリスの発音が好きです。

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