かもめマシーン

2007年より東京都を中心に活動。個人的な身体と社会との関わりにフォーカスを当てた作品…

かもめマシーン

2007年より東京都を中心に活動。個人的な身体と社会との関わりにフォーカスを当てた作品を上演することを特徴とし、気功や太極拳などの身体メソッドを応用しながら独自の身体を模索 https://www.kamomemachine.com/

最近の記事

交わって流れた10日間 - 日中当代表演交流会 レポート

「日中(中日)当代表演交流会」というグループを組織して、第1回のイベントとしてディスカッション&ワークショップを北京・南京・上海で行ってきた。結果的に、すごくいいイベントになったのではないかと思うし、なんだか、みんなで旗揚げ公演をしたような感覚を覚えたのも嬉しい。この活動について、少し長く記したい。 (萩原雄太) 準備 たしか昨年の夏だか秋だか。僕がNYに滞在しているとき、北京の振付家・王梦凡(ワン・モンファン)から唐突に「日中の交流会をやらないか」という連絡が来た。彼

    • 電話演劇とその分身

      はじめに 2020年7月、わたしたちは途方に暮れていた。 当時、コロナ禍という誰も経験したことのない出来事を前にして劇場はその扉を閉め、数多くの劇団が公演を中止せざるを得なくなった。わたしたちも例にもれず、20年秋に予定していた公演の中止を決定し、活動の目標を失っていた。けれども、それが原因で途方に暮れていたわけではない。 これまでのような公演活動ができなくなった一方、多くの演劇の作家たちは「何かをしなければ」という焦燥感を抱えながら、劇場を使わなくても実施可能な「オン

      • 「他者」に届く形を与える──那覇・わが街の小劇場滞在制作記

        かもめマシーンでは、5月8日〜21日にかけて、那覇・わが街の小劇場にて滞在制作を行った。22年から開始した南京事件をモチーフとした新作を創作するにあたって、ひとつの足がかりをつくるために行われたこの滞在制作。結果を先に言えば、諸手を挙げて大成功という形にはならず、むしろ、南京事件という歴史問題の扱い方や集団創作の難しさ、あるいはわたしたちの間の人間関係の問題など、色々な問題点が可視化されるような2週間であった(伊藤新は、私がもうかもめマシーンを辞めてしまうのではないかと心配し

        • 電話演劇の演技について

          毎公演ごとに「今回は何をしたいか」ということを話し合いながら作品を作っているのだが、『もしもし、あわいゆくころ』では、俳優が「話す」という行為を立ち上げてみたいと思っている。 俳優は言葉を話すのだから、それは、ひとく当たり前のように聞こえる。けれども、そこには、これまで培ってきた俳優術ではたどり着けないような根本的な変更が要請されているのではないかと思う。 そもそも多くの演劇は、はじめに言葉があり、その言葉を再生するために俳優は訓練を行っている。言葉を再生するために、彼ら

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          「俺が代」上演にあたり、3つの変更点

          12月、STスポットにて日本国憲法を用いた『俺が代』を上演するので稽古をしている。 https://www.facebook.com/events/3417944768530381/?ref=newsfeed 2017年の劇場版初演から数えたら5年、2015年のパイロット版から数えると7年間もやっている。 再演するたびに、以前見た人には「どこか変わるんですか?」と聞かれる。集客的には「すごく変わりましたよ!」と言ったほうが「じゃあ見に行こうか」という気持ちになる。でも、

          「俺が代」上演にあたり、3つの変更点

          かもめマシーンの身体訓練──新作集中クリエーションを終えて

          我々は、これまで創作してきた作品の中でも「俺が代」と「しあわせな日々」をレパートリー作品として上演している。2017年にSTスポット横浜にて「俺が代」をつくってから意識的に上演作品をレパートリー化しているのは、とても小さなカンパニーである我々の機動力を活かすためにはレパートリーという形が適切であること、日本の小劇場演劇における新作主義に対して距離を取りたいと思ったこと、作品を深めるためには1回のクリエーションだけではもったいないこと、そもそも年齢を重ねてきたことによって、新作

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          「痛み」を共有した時代の憲法──日本国憲法を読む会レポート

          かもめマシーンの場合(そして、多くの演劇作品の場合)、中心にあるのはテキストです。テキストを中心にしながら、どのように作品を立ち上げていくのかを話し、悩んだら、テキストに立ち戻る。数ヶ月の稽古期間中、ずっと、繰り返しテキストを読み、話し合いながら、上演にまでたどり着きます。 そんな演劇の「読む」という技術を応用して行われるのが「日本国憲法を読む会」。 去る5月28日、かもめマシーンでは「日本国憲法を読む会」を行いました。日本国憲法をテキストとして使用した作品『俺が代』の関

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          小さく、細かく、具体的に──『もしもし、あわいゆくころ<試演会>』座談会

          2020年より、かもめマシーンが取り組んでいる「電話演劇」の最終章としてつくられた『もしもし、あわいゆくころ』。この作品は、瀬尾夏美による『あわいゆくころ』(晶文社)と、吉田恭大による『光と私語』をテキストとして、電話回線上で上演されます。 2022年4月、6月に予定された本公演に先駆けて、この作品の試演会を実施。携帯電話と携帯電話をつなぐという環境は、特設の電話ボックスを使用するという本番の環境とは異なるものの、本公演を前にしたトライアルとして、12名の観客に、いち早く本

          小さく、細かく、具体的に──『もしもし、あわいゆくころ<試演会>』座談会

          だらしなく、いっしょに生きる──大崎清夏『炊飯器』が描く政治

          世の中には「政治的な」作品というものがある。 リアルな政治的な問題を取り扱った作品は、演劇においても数多く作られてきて、私自身もそれに加担してきたという自覚がある。日本国憲法を使った作品や、原子力発電所の事故を背景にした作品を上演しているのだから否定しようにも否定できない。 でも、私自身は、永田町の動きに詳しい人間では決してないし、社会正義に溢れる人間でもない。恥ずかしながら、選挙に行くようになったのだって、選挙権を獲得してからだいぶ後のことである。 今回は、私が「政治

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          文化芸術復興創造基金 活動報告

          かもめマシーンでは、YPAMフリンジ参加作品として『もしもし、シモーヌさん』を上演しました。この公演は、芸術文化振興基金の「文化芸術復興創造基金」に採択されて、100万円の助成金を得て行われた活動です。 この助成金の概要は以下の通り。 本記事では、この助成金に採択された活動報告として、「もしもし、シモーヌさん」に至るまでの経緯、そして成果を記します。 電話演劇とは? かもめマシーンでは、2020年より「電話演劇」という形態の作品を上演しています。これは、電話回線を通じ

          文化芸術復興創造基金 活動報告

          3分でわかる! かもめマシーンの2021年

          案の定コロナ禍が終わらず、舞台芸術界隈は引き続き難しい活動を強いられた2021年。しかし、かもめマシーンでは、例年にも増して多くの活動をし、活動ごとにしっかりと成果を得ることができ、充実した1年となりました。 とはいえ、そもそものキャパが少なかったり、地方での上演だったりばかりが続き、なかなか活動を追うのが難しい。そこで、2021年の振り返り! 1.もしもし、わたしじゃないし 2月に開催されたTPAMフリンジにて実施。さらに、6月から早稲田大学演劇博物館で開催された『ロ

          3分でわかる! かもめマシーンの2021年

          演劇と信託──かもめマシーン沖縄滞在制作記

          沖縄が好きだ。 これまで足を運んだのは3〜4回に過ぎないが、気候は温暖だし、空気の密度もゆるい。まぬけな顔をして美しい自然をぼーっと堪能することもできる一方で、太平洋戦争のことや、基地問題を始めとする周縁の地政学についても真面目に考えられる。独自の信仰やそれに基づく民俗芸能などもたまらない。つまり、とても肌に合っている。 かもめマシーンでは、2021年10月、那覇市にある『わが街の小劇場』で、『しあわせな日々』の滞在制作および発表公演を行った。もちろん、この背景には「沖縄

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          演劇と信託──かもめマシーン沖縄滞在制作記

          なぜ、電話演劇か ── 薄暗い場所から公共を生み出すこと

          「コロナで劇場が使えないから、変わった演劇を始めた」 そのように直接言われたわけではないけれども、我々が行っている「電話演劇」という形に対して、少なくない人がきっとそのように受け取っているんじゃないかと思う。まあ、そりゃそうだ。「普通の演劇」とは異なって、劇場を使わずに電話ひとつでできるし、照明や音響なども必要ない。一回の上演につき、一人しか参加することはできない。リアルタイムで言葉が向けられるのは普通の演劇と一緒だが、「自分だけに対して」というシチュエーションはだいぶ意味

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          なぜ、電話演劇か ── 薄暗い場所から公共を生み出すこと

          「聞くこと」のインタラクション ── 『もしもし、わたしじゃないし』参加者座談会

          21年2月11日〜14日、かもめマシーンではTPAMフリンジの参加作品として、『もしもし、わたしじゃないし』を上演した。2020年9月に初演されたこの作品は、今回、20ステージが行われ、20人の観客が自室や屋外など、それぞれの場所で「口」の話に耳を澄ませていた。 この作品は、電話回線を通じて1対1で上演される。それは、俳優と観客とが同じ時間・場所を共有しないという意味での特殊な体験となるのみならず、観客と観客ともまた同じ時間・場所を共有しないことを意味する。 それぞれの観

          「聞くこと」のインタラクション ── 『もしもし、わたしじゃないし』参加者座談会

          かもめマシーン2020年の活動まとめ

          かもめマシーンでも例に漏れずコロナ禍で大きな影響を受けましたが、通り一遍な挨拶は省いて、そんな中で行っていた活動の紹介! (萩原) 俺が代 無観客公演@本多劇場5月には、ルーマニアで『しあわせな日々』を上演予定だったものの延期。その代わり『アートにエールを!』に参加するために、空いていた本多劇場を使って俺が代の無観客公演を実施。撮影は、京都公演の折に出会った丹下紘希さんです。 もしもし、わたしじゃないし 9月には新作「かもめ」の上演予定だったので緊急事態宣言の中でもずっ

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          「もしもし、わたしじゃないし」  参加者座談会レポート<後編>

          (前編はこちら) 電話線を舞台に、観客と1対1で行われる演劇作品『もしもし、わたしじゃないし』。この作品の上演終了後、参加者の方々とともにオンラインでの座談会を開催。この第2回目の模様をまとめた。 6人の参加者が加わって行われた2回目の座談会では、電話で行われるこの形式ならではの体験をしたという肯定的な意見の他にも「どう聞けばいいのかわからなかった」といった戸惑いの言葉を語る参加者もみられた。また、イレギュラーな形で参加することで、他の参加者とも異なった体験を獲得したとい

          「もしもし、わたしじゃないし」  参加者座談会レポート<後編>