読了本『52ヘルツのクジラたち』
「2021年本屋大賞」ノミネート作品の町田そのこさん『52ヘルツのクジラたち』を読みました。
町田さんの本は2016年に「女による女のためのR-18文学賞」を受賞した作品を含むデビュー作『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』以来2冊め。
『夜空に泳ぐ〜』を読んだときは、とてもデビュー作とは思えないその完成度の高さに驚き、感動したのを覚えています。
本作は、児童虐待やLGBTQという重いモチーフを扱いながらも、読後感は温かく穏やかなものでした。
残酷で、哀しい描写がたくさんあるのに、ある意味ファンタジーのようにも感じる、美しい物語です。
作品の中でとても印象に残っているのは「魂の番(つがい)」というワード。
主人公の発言に、このように登場します。
「ひとから言われた言葉なんだけどね、ひとには魂の番がいるんだって。愛を注ぎ注がれるような、たったひとりの魂の番のようなひと。あんたにも、絶対いるんだ。あんたがその魂の番に出会うまで、わたしが守ってあげる」
なんて救いのある言葉なのかと思いました。
この数年、「ツインレイ」とか「ソウルメイト」というワードを聞くようになりました。
私は“スピリチュアル”なものにすごく苦手意識があって、なんとなくそういうカタカタの呼び名に不信感がありました。
でも「魂の番」って、本のタイトルにもある「クジラ」に通じていて、すんなり浸透してきたんです。
そんな存在が自分にも、みんなにも、いたらいいなぁと素直に願いました。
もう一つ、主人公に投げかけられた言葉で心に残っているものがあります。
「恩で死ぬの?」
「死ぬくらい追い詰めてくるものはもう『恩』とは呼べないんだよ。それは『呪い』というんだ。」
なるほど、と。
何より判断能力が鈍っているときに、こんなふうに言い切ってくれる人が近くにいたら、すてきですよね。安心できます。
似たようなモチーフを扱うマンガなどもあるのですが、私は全く気になりませんでした。
ちょっと疲れている人や、行き詰まり感がある方におすすめしたい一冊です。
春の静かな夜に、ゆっくりと読んでみていただきたいと思います。
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2月末で「2021年本屋大賞」の投票は締め切られ、あとは発表を待つばかり。
他にも何冊か読み終えているので、また感想を書ければと思っています。
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