現在進行形でおじさんになっていく同級生四人のチームが作ったマガジンです。 4人の趣味、仕事、私生活で役に立った情報やスキな記事を勝手気ままに書き散らします。
この日の少年はどうしようもなく暇だった。 親も仕事でいなかったし、兄達は部活の合宿で県外に出ていた。 二段ベッドの二階、窓から見る空は青く、雲は厚い。 蝉の声は絶え間なく聞こえている。うるさい気がするが、心地よいクーラーの効いた部屋で、布団の中で丸まっている心地よさの方が勝っているので、それほどでもない。 夏休みの宿題は終わった。気乗りのした時に一気にやるのが少年のやり方だった。面白くないものは一息で片付けるのが良い。 起き上がって一回に行く。冷蔵庫にある炭酸のオレ
祖父母の家に行くのは年に2回ほどで、お盆と年始に儀礼的に顔を見せに行くくらいだった。本当は行くのが嫌だったけれど、嫌だと言い出せずに黙ってついていった。昔は携帯用ゲーム機も無かったから、ただひたすら祖父母の広い家の中で肩身の狭い思いをしていた。自宅でもそれほど無邪気に遊ぶ子供ではなかったが、ここではさらに他人行儀になっていた。 あれは私が7つか8つの時だったろうか。例年通り祖父母の家に行って、墓参りをして、出前の寿司を取ってみんなで食べた。お寿司は美味しかったような気も
最近の話。 古くからの友人の結婚式は、市内では珍しいほど周囲に木々が多い式場で行われた。あいにくの雨ではあったが、それを感じさせないほど温かい、笑顔につつまれた式だった。 ネイビーグリーンのスーツとエメラルドグリーンのドレス。落ち着いた、目に優しい色は確かにまぶしかったが、いつまでも見ていられるものだった。 家に帰るとがらんとした部屋が待ち受けていた。 寂しさを感じたのは友人たちと先ほどまでくだらない話をして盛り上がっていたからで、孤独だったからではない。
夜一人で歩くのは実に楽しい行事である。 一人で歩けばこの身に纏わりつく煩わしさから解き放たれる。 夜はよく見えないのも良い。 見えなければ何か無いものを見るのも容易いし、聞こえない音を聞くのも簡単だ。 あるはずのない幸福な生活を見るのも、いるはずのない巨人を見るのもいい。 楽しい時間である。 夜の校庭のそばを通ると、昔見た学校とは違うものが見える。 三年も通っていた校舎は妙によそよそしかった。 この心の冷えようだから、もう心の中にこの場所が占める場所は無い。
膝おり屈むと血も降りて、ぼうっと頭が軽くなる。 地面の色は白く光り、つぶさに見れば黒と緑も。 砂、石ころのツブは厚く、薄く、鋭く、鈍い。 右てのひらで粒を感じて、 細かなトゲが幽かに触れて、その心地よさが癖になる。 雲が陽を隠し、白に影がさすと粒たちは一層冷えて頬がゆるむ。 ずぅっと右手をワイパーみたいに右に左に動かしていた。 するり。 一際大きな粒は、まるで岩のような存在感。 するりするりと撫でていて、ただ触感を楽しんでいた。 冷えたまぁるい石は小指の第
彼はどうしようもなく疲れていた。 疲れ果てて夜勤から帰宅した後は、ずっとネットで動画を漁って笑ったり、泣いたりしていた。 額と頭頂部の丁度真ん中あたり、脳内がピリピリ痛んできても、ノートパソコンの前から離れることができなかった。 彼の楽しみのお供には必ずインスタントコーヒーがあったが、朝方になるとコーヒーカップには乾燥し焦げ茶色の汚れがこびりついていた。 彼はそろそろ眠ろうと思った。 朝方から寝始めると、仕事中もそれほど苦痛ではない。 眠る前
ぼんやり見つめる空間を満たす意識に集中していると、 体の中から数分間、目の奥底から出る意識に泥み、 細くなるそれは脳髄安定に効果がある。 満たされていく空間は見覚えのある色を付け、 ただ空気に思えたあの人の空間を見る。 今眠気を抑えながらあの人を見る。 あの人を見て、毛の穴から意識が抜けた。 枯れた皮膚は永遠に循環を続ける実験場だ。 何をしてもよい、どんな液が流れるとも流れるままがちょうどよい。 満たされた脆い空間をわけて行くと、ただ夢の
個人的に2020年のマイベスト本を書いていきたいと思います。誰かのためになるかは分かりませんが、自分のためにはなると思います。稚拙な文章になると思いますが、書いていきたいと思います。 2020年に読んだ本は何冊なのか、全く覚えがありません。読み始めては止め、新しく買っては積み、の繰り返しだったような気もします。しかし、そのような取り留めのない、文字を追うだけの読書を質的に転換するような本が今年出ました。 読書猿さんの『独学大全』です。 多分ネット上ではすでに話題