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「修士」という学位取得が目標だった日

こんにちは,お久しぶりです,研究職がしたいんじゃーと修論提出後からまたドタバタ過ごしていた院生です.
久しぶりの記事なのですが,一昨日・昨日と実は企業での研究の報告会と地方紙の初新聞取材という貴重な体験をしてきた出張帰りです.

ダイヤモンド富士山ならぬダイヤモンド桜島ですかね.
朝見た時は火山灰…となってましたが風向きの関係で昨日は市内の方まであまり飛んできませんでした.

と,今回はちょっと明日卒業式,そして学位授与式ということで色々あった修士の3年間をざっと振り返ってみようとか,なんかそんな感じです.軽い気持ちで是非読んでやってください.

大学院入学したけど絶望的すぎ!

研究テーマが決まらなかったのは第一の試練のようなものでした.ざっくりとこんなことがしたいとは決まってはいたものの,実際に話しても話しても教授からはその発展のさせ方が見えてこない,別の方がいいとか好きなテーマでいいとか,いろんなことを言われました.
学部卒業を目前にして発症したパニックや自律神経失調症をまだまだ引きずっており,週1ペースで通院しながらの大学院生活,そして実家通いだったため電車もまだまだ乗れず,ゼミ中に感情のコントロールがきかなかったりとかなりアレでしたね,今考えると後輩相当引いてたと思いますよ笑
院で一番忙しいと言われていたM1前期をなんとか終えて中間発表も終わった後,案の定教授に呼び出されて休学を勧められました.本当にしんどかったです.大学院は受け身の授業だけじゃなくて自分の専門の授業とかもっと深く突っ込んだ授業があるので学部の座学や制作授業よりも断然面白かったのですが,授業だけでなく教授のプロジェクトや自分の研究(一番疎かにしてはいけないもの)でまず躓き,そして精神状態がそこまで回復していなかったこともあり,休学期間に突入です.

やりたいことだけやって見つけたのはやっぱり知る楽しさ

とりあえず半年休学期間を取りました.嬉しかったです.
あんなに遠いところまで電車に乗らなくていい!ゼミがない!毎週のゼミ前日のストレスがない!
ということで引きこもりのように,当時は起立性調節なんとかという起きようと思っても起きれない,自律神経失調症からくるものも併発していたので早起きを無理にする必要もなく,毎日が休日でした.しかし同時に湧き上がってくるのは,このままでいいのだろうかということや,周りに置いていかれるんじゃないかという不安だったり,なぜ自分だけこんなことになったんだろうかとか.同じように大学生活をしてきて,ストレートできて留学もして,順風満帆そのものに見えた大学生活も突然目の前が真っ暗になったように,進路も未定,まだ就職なんて到底考えられないほどの体調でした.
母が私にまず命じたのは,一日一回散歩をすることでした.そうしないと本当に外出しなくなりますし,通院時以外は家にいるような感じで一日中リビングか自室で過ごしていたので虚無感しかありませんでした.とりあえず近所を散歩してみたり,たまには4駅先の商業施設まで歩いて行ったりして疲れて帰ってくるとか.
その中で私が唯一楽しく没頭できたのは,学部3年の頃からちょっとずつ活動していた作家としての展示制作,イラストレーションやギャラリーでの活動でした.休学になったので,絵を描く時間だけは無限にあり,銀座の馴染みのギャラリーに行って,休学したので絵描きます!みたいになってほぼ毎週のように展示していました.色々と原画販売にあたってのノウハウはプロデューサーさんから教えていただき,また在廊時には美術界での今の流行やどんな絵柄が売れているか,そして可愛いと思わせたりその原画が欲しいと思わせるような人物画とか,マーケティングや裏話を聞かせてくださいました.
あとはその間に装丁やDM制作,画集制作にあたって,今まで学校の課題制作くらいでしか使ってなかったアドビ製品をめちゃくちゃ使うようになったのでそこで習うより慣れろ感覚でスキルは覚えました.
一番面白かった話は,「実際よくよく見たらそんなに可愛くないのにぱっと見が可愛くて上手く見えて原画が売れる」という話ですかね.これは衝撃的でして,スキルがある人が売れるのは勿論ですが,スキルがまだ不十分でも「可愛いの法則」や可愛いと思わせる人物画が売れるというお話でした.少しそれは戦略的な話になってしまいますが,端的に言ってしまえば,パースが多少狂っていたり細かく専門的に見るとイマイチでも,それを凌ぐ戦略的な視覚的可愛い!や美しい,上手い!があるとおじさまや美術商の方は将来の見込みも含め,欲しいと思い原画を買うのだそうです.いかに視覚表現がマーケットをこんなに動かしているかですよね,みたいな.そこがどこか計算されたデザインにも似ているようで,それがまた研究の鍵となりました.

あんた退学して何するの?働くの?

半年というのはあっという間で,同期の卒業式もあり大学に久しぶりに行ってみましたが,同期の門出を祝う反面,自分は何をしているんだろうと帰ってからまた鬱状態になりましたね.自信もなく,絵を描くだけの毎日,親には迷惑をかけ,いっそ死んで保険金でも出ればとか考えたりしたこともあります.学部1年の時から働いていた自宅から徒歩1分の某レンタルショップでは,リーダーさんに自信がないならもう半年休んじゃえば?というお言葉をいただきました.というのも自信がないまま復学しても,また周りとの差を感じたりして悪化してしまう可能性があったからです.
その一言でもう半年休学しましたが,結局その中で突発性難聴や拒食,色々あったのでやっぱり休んで正解だったんだと思います.
そして一年の休学期間が終わりを迎えようとした時に,復学するのか,それともどうするの?という話になって母には退学してハロワ行って働く?まだできる状態じゃないでしょ,とバッサリ斬られました.
それでもこれ以上両親に迷惑もかけたくないし,でも働くのは二週に一度のバイトが精一杯,それから絵での収入がほんの少し.
私に一体何ができるんだ…ということでまた鬱です,鬱多すぎますね苦笑

「修士号を取ります」

ということで家族会議をした結果,まずは大学院を卒業するということ,修士の学位を取得することを目標として復学することを決心しました.そしてまた両親には迷惑をかけることとなりますが,父の海外赴任が決まっていたにもかかわらず,電車での通学がまだ困難だったため下宿を許可してくださり学校へは徒歩通学ということで夏休みに引っ越し,教授とも面談をして研究を少しずつ進めていきました.
まずは実家のように誰も起こしてくれる人がおらずまだ時間通りに起きれなかったため,夏休みという期間を利用して起きる練習をしながら毎日散歩感覚で大学へ行き,研究をなんでもいいから手をつけてやってみるということをしていました.
学年に1人以上は必ず大学に住んでいるような,行ったらいつでもいるような人っているんですよね,何故か笑
なので誰かしらどこかの研究室に夏休みもいましたし,うちの学域の中では留学する人は少なかったからか,フランスに留学していた人として今の同期の代でも割と名前は知ってるという方がいたみたいです.あとは研究室の同期がよくしてくださったおかげで本当に後期からの授業も不安は徐々になくなり,研究も自分なりに色々とやっては現地調査をしたり,楽しくなってきました.

「いやあ,面白かったです」

M1後期の中間発表で,私はロングセラー商品のお菓子のパッケージデザインの研究をしておりますが,副査の先生は美術評論家とインターフェースデザインという全く違う分野の先生でしたが,本当に私はこの2人の先生を敬愛しています.そしてこの美術評論家の先生の研究室に来月からお世話になるのですが,中間発表を行った時のコメントで,「発表聞いてて思わず食べたくなっちゃいましたね,久しぶりに感じて」という先生の意見が嬉しかったですね.もとよりパッケージデザインの正面部グラフィックなんて商品の顔ですし,それによって食べたいと思うか思わないか,というのは先ほどの視覚表現によるマーケットを左右するまさにこれだ!という感じで,インタフェースデザインの先生はもう少し工学的なのでAIでの検証の提案や色々とまた面白い別の視点を与えてくださいました.分野がこんなにも違うのに,私の研究を面白いと思ってくれるんだ,というのがとても嬉しかったのと,それならもっと徹底してやりたい,知らないことは知りたい,という思いが強く,周りは就活に向けてポートフォリオ制作やインターンに行っている最中,私はもうほとんど就活という選択肢を捨てており博士課程への進学を決意しました.それは第二の目標でした.とりあえずは修士の学位を取得することを目標として復学したのできちんと取ろうという気持ちでした.
なのでスタートは遅いものの,学会に初めて参加したり,就活をしないためその時間を研究に充て,その時点で皆とは進路が違っていたので当然といえば当然なのですが,皆との違いなどは感じていました.不安がないと言ったら嘘になるので笑

修論,そして研究発表

この辺りはサクサク行きますが,まず第一稿を11月末に締め切りとして書き上げまして,それからは校正校正の繰り返しです.冬休みはパソコンを実家に持って帰ったものの,久しぶりの両親の帰国や帰省期間が短かったため実家ではあまり作業をせず,年明けすぐに要旨の提出や色々あったので年末くらいまでが忙しかったです.修論を1/31に提出,2月頭に論文発表会という,まあ審査会ですが学域の教授たちが全員公聴にいらっしゃるので今まで自分の研究を見ていない教授もいらっしゃいます.それでも無事に終わり,それからは私たちの学域特有の,デザイン科なので一般的ではありますが卒業制作展があり,学内,そして研究室だけの学外展,全体の学外展と展示の準備に追われて2月はほとんどそれで終わりました.
3月に入ってもそんな感じでしたね.まず学外展が終わらないと何もできないくらいドタバタでしたし,今年のデザイン学会の申し込みは3月中ですし,両親のところへ行こうとしたら丁度父の都合と合わず変な時期になったりしました.
そして私たちの学年には1人,社会人大学院生がいらっしゃいまして,沖縄からやってきた記者の方でした.その方とは私が復学した後にグループ課題で一緒になって話をしたりして仲良くしていただいて,学年でも私だけタメ口で話していたり,そんな感じでした.彼女は1年休職という形だったのでM1でほとんどの単位を取るというスーパー忙しいスケジュールをこなし,M2は沖縄で仕事をしながらの研究で,発表の時は大学に来る,という感じでM1の頃よりは会える回数が少なくなってしまいました.

なんか研究に興味持った記者さんがいてね…

というのが昨日までの出張だったわけですが.
M2の前期の中間発表だったと思います.久しぶりに彼女に会った時,実は私が研究の対象として取り上げているロングセラーのお菓子はまあ全国区のものなのですが,名産品というか銘菓というか….
彼女は沖縄の記者さんなのですが,たまたま仕事か何かで鹿児島の(あ,言っちゃった)地方紙の記者さんと話していた時に「え,それ研究してる人がいるの!?」みたいになったそうで,私の研究に興味を持ってくださり,機会があれば取材したいとのお話をくださったのです.
本当にびっくりしましたが,そのご協力いただいたメーカーさんとも修論ができたら持ってまた鹿児島来ますと約束もしていましたし,鹿児島に行く予定があった事もあり貴重な機会だと思って承諾しました.
そして一昨日は取材,昨日はメーカーの社員さん達の前での研究発表をさせていただき,謝辞を述べて昨日の夜便で東京に戻ってきました.
企業さんがなんと論文を参考にしたく閲覧したいと仰ってくださり,修論を今朝お送りしました.自社製品のことなのである程度商品に対して知識がある方達の前での発表は緊張しましたが,室長さんとのメールでは,開発担当の方や公聴してくださった社員さんにとっても自社製品に対して考えるきっかけともなったという旨のお言葉をいただきました.
まさか自分がやってきたことがこんなに,自分よりも年上の方だったり働いている方にとって参考にしたいと思っていただけるようなものになるとは思ってもみなかったというのが正直な感想でして,研究にご尽力いただいたことに感謝するとともに嬉しい気持ちです.
明日が卒業式だった事もあり,前回の調査時ほどゆっくり鹿児島に滞在する時間がなかったのは残念でしたが,卒業式の翌日はまた学会で京都に出張じゃないですけど行くのでまだドタバタしています.

博士号を取りたいし研究者になりたい

3/9に修士課程修了者一覧が掲示板に張り出され,成績開示もされ,無事に修士課程の修了が決定し,両親に報告をしました.そして今回復学時に立てたこの目標を達成したことでまた新たな目標ができました.
そして今度は博士課程という厳しい道ではありますが,自分がやりたいこと,信念を持ってできること,仕事として生涯研究がしたいと強く思い,私の軸として今まで以上に研究に対して真摯に向き合い,邁進していきたいと思っております.
明日,ようやくその第一歩である芸術工学の修士号をいただくことができるということで,本日,修士の院生として最後のnoteを書かせていただきました.

また長ったらしくてすみません.
毎度読んでくださってありがとうございます.
私はこれからもデザインを軸として今度はもう少し大正期のデザインを深く研究していきたいと思います.
またぽろぽろと記事を書くと思いますがどうぞよろしくお願いいたします.

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