なんで「マーケティング」はややこしくなったのか
トライバルメディアハウスという私が所属している会社では、クライアントのマーケティング課題の解決をお手伝いしています。
突然ですが、なぜマーケティングに関係する言葉ってあんなにややこしいんでしょう。
常に答えのない案件ばかりだからこそ面白さを感じているのですが、日々あたらしい手法が生まれては消えたり、言葉の定義と解釈が人によって異なっていたりしますよね。
まずは歴史に学べ、という言葉もあるくらいですし、こちらの本を読みました。すごい分かりやすくまとまっています。1時間半くらいでサッと読めるのでとてもオススメです。
この本を元に、すごいざっくりとマーケティングの歴史と現代のマーケティングが複雑な理由をまとめてみました。「そうゆうことね」って少しでも感じていただければ嬉しいです。
作ってから知ってもらえばOKのマーケティング1.0の時代
マーケティングの歴史は、アメリカでT型フォードという自動車が生まれた時代からはじまったと言われています。
この時代、人々の主要な移動手段は馬車でした。
世話が不要で、燃料さえあれば目的地にたどりつくことができる車という存在は、馬に代わる新しい移動手段として売れに売れました。
その陰で何をしていたかと言うと、「馬の代わりにもっと便利なの作ったよ買ってね」のメッセージを届けること。
つまり利便さを知ってもらえすれば、売れた時代です。
この時代ではどんなメッセージを、何を使って伝えればよいかさえ考えればよい時代でした。
差別化しなきゃいけないマーケティング2.0の時代
車が売れたことで、他にもお金を稼ぐために車を作る会社が増えました。真似する人たちが増えたということです。まったく同じもの作っても売れないから、どこか違う部分を作って売り出します。差別化をする必要が生まれたのです。そうすると、他と何が違って何がよいのか。それをしっかり知ってもらう必要性が生まれます。
そこで生まれたのがSTPです。
S:セグメンテーション
T:ターゲティング
P:ポジショニング
市場を区切って(S)どこを狙うか決めて(T)どう思ってもらうか(P)を定める。ちなみにS→T→Pで決めていく必要はないそうです。
商品を作るときに、「10代女子向けに作ろう(ターゲティングの話)」からスタートする可能性もあるわけなので。
ちなみに、セグメンテーションとターゲティングは企業視点(どう区切ってどこを狙うかは、企業の視点で考える)、ポジショニングは顧客視点(どう思ってもらおうかは、顧客の視点で考える)になります。
まぁ、STPを語る主語は企業なんですけど。
そして、定めたSTPに沿う形で売れるようにする仕組みを作るため、4Pをどうするかを決めます。
Promotion(どう宣伝する?)
Product(どんな商品にする?)
Place(どこでどう売る?)
Price(いくらで売る?)
めちゃくちゃかいつまみましたが、ここまでがマーケティングの基本中の基本です。
なぜマーケティングはややこしくなったのか?
ここで本題です。答えは単純で、商品やサービスが増えた結果、STPだけでは通用しなくなったからです。
大きなセグメントからニッチなセグメントに至るまで商品やサービスがあふれています。生きている中ですぐに思いつくレベルの不便は、ほとんどないレベルを通り越した。けれども、それでもなお商品やサービスが生まれ続ける。
マーケティング2.0までは、不便な社会であることが前提でした。
しかしその時代は終わり、いまは企業は何を作ればいいかわからないし、顧客は何が欲しいのかをわかっていません。
多くの人が声に出して「あー!これめっちゃ不便!!」ってなるようなことは、もうほとんどない。パッと思いついて口に出せるような顧客のニーズはほとんど満たされてしまいました。
そして人々は不便から解放されたので、思い思いに感情的や情緒的な部分を求めて商品やサービスを消費するようになる。すると、同じ30代男性であっても価値観や好みが一人ひとり異なっていく。さらにインターネットが招いた情報爆発が、一人ひとりの個性の差をさらに広げていく。
こんな状態で、どうやってセグメントを切り、ターゲットを定めて、望み通りの認識を持ってもらうことができるのか。そりゃ無理です。
それでマーケティングにも進化が求められるわけですが、決まった方向に進化させることが難しくなりました。STPの時代と異なり、すべての会社に通用するベストプラクティスなんて存在しないからです。だから派生していろいろな『◯◯マーケティング』が生まれているんですね。
マーケティング2.0以後を紐解くキーワード
一人ひとりがバラバラな個性を持っている今、書籍によればいかに一人ひとりの「主観的価値」を満たすかがキーワードになるようです。その主観的価値を満たすことで、一人ひとりに不可欠と感じてもらうことが今の時代において重要なのではないでしょうか。そのためには、3つのアプローチが挙げられます。
・便利
・愛着
・社会貢献
最初の便利は、顧客一人ひとりにとっての効率と利便性を追求することです。one to oneマーケティングやインバウンドマーケティングの一部はここに含まれそうです。また、顧客に聞いても欲しい製品が出てこないから、行動を観察して発見する調査のアプローチもここに該当します。
その次の愛着は、利便性ではなく顧客一人ひとりの精神面において不可欠となる存在を目指します。そのためには認知だけでは足らず、一人ひとりの頭の中で好意的な印象を持ってもらうためにはどうするか、という観点でアプローチが必要です。ちなみに、ブランディングもそのために必要なものだと私は解釈しています。
そして最後の社会貢献は、商品やサービスを使用することで、自身が社会に貢献できているという気持ちを醸成させるアプローチです。一人ひとりの貢献欲求に働きかけるアプローチであるとも言えるでしょう。
バズワードとしての『◯◯マーケティング』はいくつも世の中に生まれていますが、最終的にはこの3つ(便利・愛着・社会貢献)のどれかを目指すためのものとして帰結するのではないでしょうか。
そして大切なことは、「主観的価値」という名のとおり、価値とはもはや企業が決めるものではなく、個人が決めるものという前提条件を忘れないことでしょう。企業主語で一方的な押し付けができる時代は、もう過去のものです。
もはやマーケティングとはビジネスそのもの
先程挙げたようなアプローチを行っていくには、企業総体でどういった戦略や戦術を採択するかを考え、組織を構築する必要がありそうです。
手法としての『◯◯マーケティング』に溺れるのではなく、本質はなにかを常に考え続けていきたいなと思いました。
ちなみに、愛着についてはこんな記事も書かせていただいたのでぜひご覧ください。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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