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「国民日常大鑑」代表者 石黒専之助   題字 子爵 渋沢栄一

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発行者 国民教育会  大正十四年十月九日 発行 題字・序文 法学博士高田早苗 題字 前司法大臣  小川平吉
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記事一覧

国民教育会編集国民日常大鑑東京 国民教育会蔵版

序 

 国民教育会において編纂された「国民日常大鑑」は、一般国民が個人としても、また一国民としても知らねばならぬ事を細大となく載せてある。誠に便利でかつ有益な書物である事は論をまたない。

 この書物を座右に備えて置けば、事に当たってまごつかずに済むのであるから、この上なき重宝なものである。

 しかしながら今日の国民が知らねばならぬ事柄はこの書物の中に見るような事柄には止まらないと思う。立憲政

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本書発行に就いて

  世は刻々に進化しつつある。それも最近おおよそ半世紀の我が国の変化ほど、世を挙げて目まぐるしい推移は、東西古今未だ例を見ざる所であろう。

 永き封建の夢から王政維新の大業へ、日清日露の両役から欧州大乱戦の渦中へと、その間幾多の物質文明は輸入され、幾多の新思想の潮流は来襲した。 

 而も(しかも)人文日に進みいわゆる昨日の淵も今日の瀬となって、全くその帰趨を知らないと言う有様である。従って我等

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第一 知らねばならぬ日常礼法、公式儀式

礼の本旨 

 礼とは心に起こった恭敬の念が、外に現れたものであるから、およそこの世に社会生活を営もうとする者にとっては、何時如何なる時、如何なる場所でも、必ずこれと離れることの出来ないものである。   

「作法の根本」 

 作法と言えば直ぐに小笠原流、伊勢流の堅苦しいのを思い出すのが我が国民である。そしてこれを形式と言い、因習と言って敬遠したがるのが当今である。しかしこれにも一面の理由がある

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第一  皇室及び公式の場合の心得

 皇室に対し奉る心得 我が国は建国以来万世一系の皇統を戴いているだけ、皇室に対し奉る礼儀は、心からの尊敬の念をもってして、いやしくも不敬のことがあってはならぬ。   

 「敬称」 天皇、太皇太后、皇太后、皇后に対して奉っては陛下、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃、親王、親王妃、王、王妃、女王、王族に対し奉っては殿下と申し上げる。(皇子より皇玄孫に至るまで、男を親王、女を内親王と申す。また、五世

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第一  婚姻の儀式作法

婚姻の儀式作法   

 婚姻の大要 

 結婚は人一代の大慶事であるから、出来るだけ盛大に厳粛に行うがよい。しかし身分不相応、いたずらに儀式のみを華美にしたり、披露会の盛大を誇ったりすることは無意義なことである。 

 結婚に関する儀式は、古来微に入り細にわたって色々説かれている。しかも土地に依り、流派に依り、格式に依り、異なっているので、ここにはただその要領要点のみを述べることにする。   

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第一 三、葬祭の儀式作法

三、葬祭の儀式作法                  

 凶事の作法 凶事の作法とは、自ら喪に居る心得及び他の喪中に処する心得である。自ら喪に服して居る間は十分に謹慎して、死者に対して深く哀悼の意を表すべきことは申すまでもないことである。又他の喪中に処するとは、例えば朋友、知己、上長、下輩等の喪を尋ねる場合のことであるが、その死者に対して十分の哀悼の意を表すべきは勿論、その遺族に対しては深く同情

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第一 三、葬祭の儀式作法 続

葬祭の儀式作法 続

祭祀供養   

 「神式の霊祭」 

 神道では五日祭、十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭、百日祭があるが、略して十日祭、五十日祭を重しとし、又一年に一周祭、五年祭、十年祭、二十年祭、三十年祭、四十年祭、五十年祭、百年祭等をする。

 「仏事」 

 仏道では初七日、二十七日、三十七日、四十七日、五十七日、六十七日、四十九日、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十

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第一  四、祝事賀宴の一般

祝事賀宴の一般  

出産に関する礼儀 

 宮中に於かせられては、別に御義式は行わせられないが、五十日目位に賢所に御参拝あられる。出産は一家に於いては勿論、国家にとっても最も祝福すべきことで、往古に於いてはその式礼も極めて丁重であったが、今は甚だ略されて来た。   

 「帯の祝」 

 先ず出産に至るまでに行われる式は、多く懐妊五ヶ月目、五月帯をする着帯式である。これは帯の祝いとも言って、宮中

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第一  五、贈答の礼と作法

五、贈答の礼と作法 

 一概に贈物と言っても、婚礼、年賀、誕生、栄進等の祝賀を始め、火災、水難等の不幸時の見舞、弔問答礼、送別、安着等色々の場合があって、それぞれ時に応じてその種類を異にするが、要するに自分の誠意好情のあらわれでなければならない。従ってその価格も自分の分限に応じ、その時その場の軽重に依って定めねばならぬ。いたずらに身分不相応な物を贈って、かえって先方の不快をかったり、疑惑を起こさ

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