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漣の果てに。

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連載小説「漣の果てに。」のマガジンです。 「さざなみのはてに」は2012年に執筆しました。当時闘病中だった亡き父へのエールとして書き始めたもので、エールではありますが、テーマは…
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#長編小説

漣の果てに。 第1話

平穏な水面は一つの滴でざわめく。──波紋。 揺れる。わずかに揺れる。 それは不規則に、静か…

漣の果てに。 第2話

「ナイスショット!」 伝統ある名コース箱根カントリークラブは、外輪山、内輪山に囲まれた…

漣の果てに。 第3話

高校二年時の同級生だった親友、大川佑の結婚式に出席した。附属高校だったため、大学も必然…

漣の果てに。 第4話

土砂降りの雨の音──雨はキライだ。 理由の一つに「傘」がある。差してても濡れるんだもん…

漣の果てに。 第5話

親父からの電話ですっかり目が覚めてしまった。おふくろが死んでもう一年になる。結局、おふ…

漣の果てに。 第6話

おふくろの一周忌。縁も所縁もないが、鎌倉の寺で一周忌法要を行うこととなった。寒さ厳しい…

漣の果てに。 第7話

赤坂。TBSのオールスター感謝祭で芸能人が走り回っていた街。正直それぐらいしか印象にないよね、実際。と思いながら、赤坂見附の駅を降りた。早く着きすぎたのでちょいと下見。青山通りに沿って歩き、お話し合いが行われる予定の料亭に向かう。 吹き抜けるビル風。家を出るときは晴れていたが、いつの間にかどんより空が重い。冷たい風が春の侵入を阻む。 寒がりの俺だが、今日は一張羅。先日オーダーメイドしたロロピアーナのジャケットの上は何も着ていない。「寒いなぁ。やだなぁ、寒いの」ぶつぶつ

漣の果てに。 第8話

しばしの沈黙を破ろうと親父がもごもごと何かを言ったとき、廊下でスッスッともトコトコとも…

漣の果てに。 第9話

トイレの小便器に向かい、並んで用を済ませる。男の性(さが)でこの瞬間は無言だ。上品かつ清…

漣の果てに。 第10話

家に帰ってシャワーを浴びる。ネットで海外サッカーの情報を軽くチェック。もうすぐヨーロッ…

漣の果てに。 第11話

「ねぇ、あなたならどうする?」 「え? 何が?」 「あのね、大学に向かう途中のバスに、…

漣の果てに。 第12話

「おはようございます」 社長室の前で白尾副社長とすれ違う。 副社長は手を挙げただけで通…

漣の果てに。 第13話

社長に内線で呼ばれたので、社長室に向かう。靴紐がほどけていることに気づき、しゃがんで結…

漣の果てに。 第14話

落ち着け、俺。落ち着くんだ、俺。 何度だって落ち着きを失いかねないが、今のこの状況を何とか整理しろ。できるだろ? この男たちは"誰か"に頼まれて俺を脅迫している。雫に害が及ぶことは、ない。脅迫の内容は、俺に親父を殺せ、というもの。親父を殺さないと俺の命も、ない。そして、親父の死は日本を救う。親父を殺せば俺は生き残れる。脅迫グループの雰囲気は、さほど怖くはない。業界の人、という感じもしない。脅迫の教科書に載っているような手口。乗せられた車種はプリウス。 ……しかし、親殺