記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

恋愛をクジャクに例える漫画『あくまでクジャクの話です。』

「こんな例え方があったんだ」と思わせてくれた漫画を紹介します。

『あくまでクジャクの話です。』というタイトルで、現在は2巻まで発売されています。

以前にも軽く紹介したのですが、もともと『iメンター すべては遺伝子に支配された』という漫画が好きです。

作者の小出もと貴さんが描く、女性キャラクターの線は特に綺麗だと思います。

そして、『あくまでクジャクの話です。』も同じ作者です。

最初にXで見つけたときは、「これ、あの作者じゃないか?」とすぐに気づきました。

『あくまでクジャクの話です。』のあらすじ

”男らしさがない”という理由で、彼女に浮気されフラれた教師・久慈弥九朗。

世の中ジェンダーフリーのはずでは…!? と苦悶する彼の前に、モデルでインフルエンサーで成績優秀で“生物学部”部長の女子・阿加埜が現れ、生物学部の顧問になってくれと迫る。

そして、なぜ結局「男らしさ」がモテるために必要なのか、クジャクの派手な羽を例に“生物学的”な説明を始める…!

身も蓋もない残酷な真実を突き付けまくる、生物学コメディ!

コミックDAYS


モテない理由を生物学的に解説する

『あくまでクジャクの話です。』は、日常の出来事や恋愛を、生物学をもとに解説する漫画です。

♯1「性淘汰」では、「なぜ自分たちはモテないのか」とはじまります。

それに対して、生物学部の部長である阿加埜が、「メディアのせいではない」と指摘する、大胆な切り口が印象的でした。

そこから、恋愛をクジャクに例えて解説します

このご時世においては炎上しそうな内容ですが、生物学をもとに解説する設定は、とても面白いです。

出典:小出もと貴/講談社『あくまでクジャクの話です。』1巻より
出典:小出もと貴/講談社『あくまでクジャクの話です。』1巻より

この漫画は、しっかりとしたコンセプトを持って描かれており、パターンとして完成されていると思いました。

出典:小出もと貴/講談社『あくまでクジャクの話です。』1巻より

『あくまでクジャクの話です。』の系譜

この漫画を読んで、思ったことは二つあります。

一つは、漫画としての独自の立ち位置です。
『あくまでクジャクの話です。』を読んでいると、「ああ、こういう例え方ってあるんだな」と感じました。

そこから連想したのが、コンテンツの楽しみ方を伝える手法についてです。例えば、昔のテレビ番組では「ワイプ」がよく使われていました。

ワイプとは
・テレビ番組や映像作品でよく使われる技法で、画面の隅に小さなサブ画面が表示される形式
・メインの映像に加えて、視聴者や出演者のリアクションやコメントを、同時に表示できる
・バラエティ番組では、出演者の表情をリアルタイムで視聴者に伝えるために、使われることが多い

また、最近だと千鳥の『相席食堂』や、Netflixの『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』も、手法が印象的な番組です。

これらの番組では、映像を見ながらツッコミを入れ、視聴者を巻き込みます。
あれこそ、千鳥の芸風だと思いました。

他には、作品内で解説するという手法もあります。

具体的には、アニメ『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』の「説明しよう!」というナレーションです。
これが解説パートのはじまりではないでしょうか。

また、同じような手法は、漫画にも取り入れられてきました。

たとえば、『範馬刃牙』で刃牙がカマキリを想定して戦うシーン。
これも解説が印象的なコマです。

出典: 板垣恵介/秋田書店『範馬刃牙』2巻より

さらに、わかりやすい例は『テラフォーマーズ』だと思います。


その系譜に、生物学と恋愛を掛け合わせて解説する『あくまでクジャクの話です。』も位置すると、僕は感じました。

また、掛け合わせという点では、「人間×チンパンジー」の『ダーウィン事変』も思い浮かびます。

どちらの作品からも、世の中の出来事を、生物学的な視点で捉えようとする姿勢が感じられました。

加えて、『あくまでクジャクの話です。』は、「生物学」の真っ当さをコメディにすることで、表現を和らげていると思います。

これはドラマ『不適切にもほどがある!』で、不適切表現の注意喚起するテロップを2回流していたことと、通ずるものを感じました。

出典:小出もと貴/講談社『あくまでクジャクの話です。』1巻より

生物であることのシンプルさ

もう一つは、生物のシンプルさと、社会の複雑さとの対比です。

人間は道具を使う動物だと言われますが、それは猿も同様だと僕は思います。
また、人間は思考によって多くの良い判断を下せる反面、物事を複雑にしているようにも感じてきました。

新札発行をきっかけに考えたこと

2024年7月に新札が発行されました。
この機会に改めて、お金について考えた人も多いのではないでしょうか。

新札は共通の貨幣として正しいものです。
それとは別に、貨幣があることで、お金を持つことの代償がついて回るのではないかとも思いました。

この代償とは、資産か資産でないか、という指標で測られることです。それは、幸せの価値観に近いようなものを、決められる感覚に近いと思います。

また、僕がこういうことを言うと批判されるかもしれませんが、生物にとっては、「子孫を残し、種族を存続すること」が大命題だと考えています。

動物は本能的にそれを実行していますが、人間というカテゴリーになると、そこに複雑さが増していると思いました。

たとえば、「結婚して子どもがいないといけないのか」といった話題から、ダイバーシティの在り方や、LGBTQの課題も絡み合い、

結果として、議論が炎上に発展したりと、難しい世の中です。

しかし、生物学的に捉えると、その複雑さを吹き飛ばす視点が見えてきます。

出典:小出もと貴/講談社『あくまでクジャクの話です。』1巻より

この漫画からは、「生物であることのシンプルさ」というメッセージが、伝わってきました。
複雑な現代社会において、こうした視点も重要ではあると感じます。

一方で、それを実際に実行できるのかは疑問です。

漫画だからといって綺麗事を言っているわけではなく、その通りだと思える点もあるからこそ、

今の世の中は、生きやすいようで生きにくいかもしれない、と思いました。

そんなことを考えるきっかけになった本作は、生物学の例えが興味深い漫画です。

ぜひ読んでみてください。

この記事が参加している募集

良いと思ったらサポートお願いします。嬉しいので。 もちろんちゃんと返信させて頂きます。