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【演劇】ハムレットQ1(感想)

 2024年6月2日(日)、渋谷のPARCO劇場に『ハムレットQ1』を観に行きました。東京公演は千穐楽でした。感想など書いてみようと思います。

■はじめに&PARCO劇場

(1)作家、演出家、出演者について

 私は、演劇の感想を書く時、「公演概要」など出演者やキャストの方の名前を記録として残すことが多いです。ただ、そこまで詳しい訳ではありません。他の舞台を観劇した時、「あっ!前の舞台の人と同じだ!」と、後から追って気づくことが多いです。

 今回、シェイクスピアの『ハムレット』です。「吉田羊(主演)✕森新太郎(演出)✕松岡和子(翻訳)」とありました。森さんが演出された舞台で、最近『メディア/イアソン』を観ていることに気づきました(後追いですみません!)。
 作家や演出家、出演者とその作品について、もう少し俯瞰して捉えることが出来るようになりたいなぁと思います。

(2)劇場について

 そして、渋谷の「PARCO劇場」です。以前来たことがあります。インターネットの事前調査(笑)でも段差があり観劇しやすい劇場とあり、懐かしく思っていました。

 しかし、驚きました!改装されていたのです。
 確かに、私が観劇したのは2016年の美輪明宏主演の『毛皮のマリー』で、一時休館(改装)前と言っていた気もします。当時も段差があった気がします。段差好きですね。

 そして、「つかこうへいの大同窓会」なるものに参加したことがあるのですが、拠点として、新宿の紀伊國屋ホールと並んで、渋谷のPARCO劇場の名前が出ていたような気がします。(間違っていたら、本当にすみません。後で削除します。)
 歴史がある劇場で、こうした劇場(と劇団の関係?)についても、長期的に捉えたいです。建物としての劇場も好きです。

■全体的な感想

 「シック」というか、舞台は落ち着きつつ、荒廃した印象で、登場人物たちの心情や人間関係を反映しているのかなと思いました。関係ないかもしれませんが、ロビーも落ち着いた印象です。

 前半は、出演者の方々が話すシェイクスピアの台詞に耳を傾けながら観劇しました。松岡和子さんの翻訳です。出演者の方々の話しぶりがすごく聞き取りやすく、一語一語伝わって来ました。反面、シェイクスピアの台詞は難しいなぁと思ったりしました。翻訳であり、詩的で多様に解釈出来そうであり。

 後半は、後述しますが、慣れて来たこともあってか、登場人物たちのキャラクターが際立ってくる感じがしました。次の項は少し登場人物について記載します。

■大臣ポローニアスの家族

 ハムレット役の吉田羊さんについて、感想を先に記載すべきなのかもしれませんが、今回私は、大臣ポローニアス(演:佐藤誓)の家族について先に記載しようと思います。
 息子と娘がいます。兄のレアティーズ(演:大鶴佐助)と妹のオフィーリア(演:飯豊まりえ)です。レアティーズが留学先に旅立つとき、三人で語らう場面があるのですが、光が差し込んだような印象を私は受けました。ハムレットの家族がどうかは分かりませんが、ポローニアスの一家は「幸せな家族なのだなあ。」と思いました。

 後半、大臣ポローニアスは、ハムレットに殺害され、「生きていたときは無駄口たたくおしゃべり爺だったのに。」と言われる始末。もっとも、この台詞自体、文脈や演じ方で解釈も変わるのかもしれませんが。
 そして、オフィーリアは発狂します。発狂の仕方もリアルに描かれているように感じて、苦しみや悲しみが伝わってくる気がしました。

 私の中で(今回)は、ハムレットたちに巻き込まれた家族という印象です。

■ハムレット(吉田羊さん)

 いよいよハムレットについてです。
 最初私は、女性の吉田羊さんが青年のハムレットを演じることに面白みや斬新さがあるのかな、と思って観劇に臨みました。ハムレットは若者であるが故に、女性も演じやすいのかなと思ったりして。

 しかし実際に観劇して、違った角度からの印象を強く受けました。吉田羊さんは声を使い分けます。①真剣な台詞を言うときと、②笑いを交えて台詞を言うときです。
 公演プログラムに、森新太郎さんと松岡和子さんの対談が掲載されていましたが、吉田さんのユーモアや、ハムレットの諧謔かいぎゃく精神について記載されていました。ナイーブというか諧謔的なハムレットなのです。
 以前、野村裕基さんがハムレットを演じる舞台を観たことがあります。その時は肉体を持った若者の印象を強く感じ、当たり前といえば当たり前ですが、演じる人によって役から受ける印象は変わるのだなと思いました。

 後半は、吉田羊さんの演じるハムレットについて、自分なりの解釈(というか割り切り?)をして舞台を観劇したので、シニカルな要素も含む吉田羊さんの笑いを一緒に楽しむことが出来ました。すごく良かったです!

■ラストの場面

 ラストの場面で、次々と登場人物たちが亡くなります(身も蓋もない表現ですみません)。
 ハムレットの母であるガートルード(演:広岡由里子)が毒をあおり、ハムレットの親友であるホレイショー(演:牧島輝)は生き残ります。毎回ですが、私はここで満足感に浸ってしまいます。古典的とも言えるこうした場面が私は好きなようです。

 そして、ハムレットがレアティーズに放つ台詞に、「これははあり得ない台詞だ!」と思った部分がありましたので引用します。

〈前略〉
では誰の仕業か?ハムレットの狂気だ。とすれば
ハムレットも被害者の一人。
彼の狂気は哀れなハムレットの敵だ。
どうか、みんなの前で
悪意はなかったという僕の弁明を
寛大に受け入れてくれ。
放った矢が思いがけず屋根を越え
自分の兄弟を傷つけてしまったのだ。

『ハムレット』ちくま文庫・松岡和子訳

 今回の上演は『ハムレットQ1』で、『ハムレット』の中では短い作品のようで、上記した台詞ももう少し短かかった気がします。しかしながら、自らの復讐心から多くの人を巻き込み、最後は開き直きなおっているようなハムレットの姿に驚きました!ここも解釈や演じ方によって変わるのかもしれませんが。(追記:解釈というより、シェイクスピアによって作品が書かれた「時代」における「狂気」の解釈に依るのかもしれないと、後日思いました。)
 演劇には「悲劇」「喜劇」という括りがありますが、その境は曖昧なのかもしれません。古代ギリシャでの定義など調べてみたくなりました。

■最後に

 東京公演の千穐楽ということもあり、カーテンコールが繰り返されました。また、舞台に森新太郎さん、松岡和子さんも登壇されました。
 千穐楽とはこういうものか、と感じられて良かったです。

 今日はいつもより長く記載しました。内容はともあれ、すっきり記載出来たと思います。最後までお読み頂き、本当にありがとうございました。


■公演概要

(1)作品概要

  • 作:ウィリアム・シェイクスピア

  • 訳:松岡和子

  • 演出:森新太郎

  • 出演:吉田羊、飯豊まりえ、牧島輝、大鶴佐助、広岡由里子、佐藤 誓、駒木根隆介、永島敬三、青山達三、佐川和正、鈴木崇乃、高間智子、友部柚里、西岡未央、西本竜樹、吉田栄作

(2)公演スケジュール

  • 2024/5/11(土)~6/2(日) :東京・PARCO劇場

  • 6/8(土)・6/9(日) :大阪・森ノ宮ピロティホール

  • 6/15(土)・6/16(日) :愛知・東海市芸術劇場 大ホール

  • 6/22(土)・6/23(日) :福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール

 以上です。

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