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【歌舞伎】妹背山婦女庭訓 三笠山御殿(2024年6月歌舞伎座)
2024年6月、『妹背山婦女庭訓 三笠山御殿』を観て思ったこと、考えたことを記載します。一幕見席から観劇しました。
■妹背山婦女庭訓について
(1)全体像
『妹背山婦女庭訓』は、明和8(1771)年1月に大坂竹本座で人形浄瑠璃として初演された作品で、同年8月に歌舞伎に移入されました。
飛鳥時代の「大化の改新」を素材にした王朝物で、蘇我入鹿の横暴を阻止しようとする藤原鎌足を中心に展開します。全五段十二場です。
(2)今回の上演場面について
全五段のうち、今回の「三笠山御殿」は四段目の後半です。お三輪を六代目中村時蔵さん(もと梅枝さん)が演じられました。
少し長いですが、あらすじを記載します。今回はネタばれありです。
(鎌足の息子・求女を追って)遅れてたどりついたお三輪は、見たこともない立派な御殿〈三笠山御殿〉で途方に暮れる。応対に出た官女たちは姫の恋敵と勘づき、大勢でお三輪を取り囲み、恋人に会わせると言いながら御殿のしきたりを押し付けたり、歌を歌わせたりして散々にいじめぬく。
だまされたと知ったお三輪がしょんぼりと帰ろうとしたときに、奥から求女と橘姫の祝言を祝う声が聞こえてきた。理性を失い嫉妬に燃え上がったお三輪は眉逆立てて、奥へ駆け入ろうとする。しかしそのお三輪に鱶七が刃を突き立てた。彼も実は鎌足の家来・金輪五郎といい、入鹿を倒すために必要な、疑着の相(=嫉妬の形相)の女の生き血を探していたのだ。入鹿討伐という求女の大望に役に立てると聞かされ、お三輪は未来で結ばれることを願いながら死んでゆく。
■感想など
(1)昨年、初めて観たとき
この「三笠山御殿」を私が初めて観たのは、昨年の国立劇場で、お三輪を尾上菊之助さんが演じた舞台でした。
あらすじを読んだとき「官女たちがお三輪をいじめ抜く」とあり、「嫌な気持ちになったらどうしよう。」「お三輪を応援する気持ちで見るのかな。」など思ったものです。しかも、「いじめの官女たち」は、普段「立役(=男役)」の方々が演じるとあり、恐ろしい場面ではと思ったりもしました。
実際、観劇した際も、この①いじめの場面と、②お三輪が「疑着の相」に豹変する場面のインパクトがあまりに強く、そちらに目が行き、お三輪が最後に命を落とす場面まで、脳内で上手く結びつきが出来ませんでした。
(2)暫くして
1回目の観劇後、しばらくして作品とも距離が出来て、身分違いの恋をする酒屋の娘・お三輪は、姫まではいかなくとも、商家で良いところのお嬢さまなのだろうな、と考えたりしました。
また、私はお三輪の視点で考えがちでしたが、(甚だ僭越であるものの)自分が演じるとしたら、「お三輪」ではなく「(いじめる側の)官女たち」の一人であるかもしれないなぁと思ったり、したたかな「求女」もよいなぁと思ったりしました。
追記:「疑着の相」は、お三輪の育ちや性格に由来するものなのか、誰にでも当て嵌まるものなのか、女性とあるが(より現代的な視点では)男性にも当て嵌まりうるのかなども考えました。
(3)今回観劇して
今回の観劇は、去年の一回目より距離を置いて観ることが出来たせいか、お三輪が最後に命を落とす場面に一番目が行き、しんみりと観ることが出来ました。「自分の命が好きだった人の役に立つのなら。」という気持ちです。新時蔵さんの演技も気持ちにスッと入って来ました。
また、「官女たち」は、小川家の一族の皆さんで固め、新時蔵さんを送り出す形だったと思います。いじめの場面ではあるものの、観客目線というより、役者目線で芸を磨くような演目なのかもしれないなぁと思いました。
歌舞伎(や文楽)では、「結構、エグいなぁ」と思う演目や場面もありそうですが、上手く受け止め、自分なりに消化していければなと思います。この『妹背山婦女庭訓』の「三笠山御殿」や「お三輪」は、これからも考えていきたい演目です。
(4)最近、思うこと
私は学生時代から、明治以降の小説を読むことが多かったので、話の流れや登場人物の気持ちに目を向けることが多かったです。
しかし、歌舞伎では「役者を観に来ている」「〇〇さんが演じる△△を観たい」といった観客の意識を感じることが多く、ズレを感じて来ました。
もちろん、自分の観劇の仕方を無理に周りに合わせる必要はないと思いますが、歌舞伎のみかたなど一種の形のようなものは、身につけていきたいと思います。
今回のお三輪を通して、尾上菊之助さんのお三輪と、中村時蔵さんのお三輪の違いを感じたり、以前より役者に目が向くようになりました。こうした観点は、芝居を通して、そして本などの学びを通して、深めて行きたいと思います。
本日は以上です。
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