【Netflix】「ロロ・アンド・ザ・キッド」 鬼でも泣くベタな人情話<推薦>
【概要】
ロロ・アンド・ザ・キッド
lolo and the kid
2024 | 年齢制限:16+ | 1時間 37分 | ヒューマンドラマ
詐欺師の男は、引き取った幼い少年と協力し、日頃から富裕層をカモにしてきた。だが、人生を一変させるようなチャンスが訪れたことで、固いきずなで結ばれたふたりの関係は危機を迎える。
出演:ユーワン・ミカエル、ジョエル・トレ、フアン・カルロス・ラバホ
(Netflix公式サイトより)
予告編
【評価】
8月7日に世界公開されたNetflixオリジナルのフィリピン映画。
タイトルとあらすじを見て、ピンとくる人はいるだろう。はっきりと銘打たれていないが、チャップリンの1921年のサイレント映画「キッド」の翻案的映画である。
この映画では、成人した「キッド」をフィリピンの大人気歌手、フアン・カルロス・ラバホ(Juan Karlos Labajo) が特別出演で演じているのも話題。
フィリピンでは、当然のごとく、今週のNetflix人気ナンバーワンだ。(Wikipedia「Lolo and the Kid」)
気持ちよく泣きたい人向けの映画。
とくに老人の涙腺を刺激する。
俺も泣いちゃったから100点満点で70点あげちゃう。
貧しい親子が、社会の裏側で、非合法的な生き方をしている。そこにも純粋な親子の愛が育まれるが、やがて別れのときが来る・・
「キッド」の翻案映画やドラマ、小説や漫画やアニメは、この100年間、世界中で無数に作られただろう。
チャップリンの最初のヒット作「キッド」は、「映画史上初めて喜劇と悲劇の融合が効果的に取り入れられた長編喜劇映画」と評される(Wikipedia「キッド」)。
チャップリンは、20世紀初頭のイギリスでの貧富の格差を身をもって体験した。そのチャップリンの社会主義的心情がもろに出た映画である。
是枝裕和の「万引き家族」だって、「キッド」の変化球的な翻案と言えなくもない。
この「ロロ・アンド・ザ・キッド」には、「万引き家族」のような、すかした批評性や、ひねくれたリアリズムはない。
とても映画賞をとるのは無理なベタな人情話であり、最後はベタベタである。
でも、このストーリーには、どんなひねくれた人でも100%泣かせる魔力がある。
社会に階級があるかぎり、貧富の格差があるかぎり、浮浪者やホームレスがいるかぎり、人びとを泣かせつづける物語だ。
この監督は、無理に現代風にせず、「昔ながらの話」をストレートに描いている。
現代の話のはずなのに、携帯もスマホもほとんど出てこない。代わりに主人公たちはポラロイドカメラを使う。そういうところにも、「昔ながらのベタベタをやりたい!」という監督の意思を感じる。
もっとも、同性愛カップルが出てきたり、今風な味つけがないわけではない。
親子の年齢を、老人と孫の年齢差にしたのも(「ロロ lolo」 は「おじいちゃん」の意味)、性的搾取や人身売買を連想させないようにするためだろう。Netflix的なポリコレとも言える。
それでも、この映画にも英語圏で「不道徳だ」「筋がとおらない」という評があった。
「万引き家族」にも「不道徳でけしからん」という批判があった。日本でも金持ちの整形医がそんな悪口を言っていた。例外的に、貧乏を知らない人には響かないらしい。
いや、これは一種の寓話、ファンタジーなんだけどね。リアリズムや遵法精神を求められても困る。
監督のベネディクト・ミクは脚本家出身。本作では脚本、プロデューサーを兼ねる。映画制作会社「ローンウルフ」を主宰。
チャップリンの「キッド」では子役(ジャッキー・クーガン)が有名になったが、この映画の子役、ユーワン・ミカエルも素晴らしい。男の子だけど、表情や雰囲気は子役時代のクロエ・グレース・モレッツみたい。
「ロロ」役のジョエル・トレは、浮浪者役にしては知的すぎ、かつ太りすぎている。でも、的確な演技でドラマを牽引している。
脚本家出身の監督らしく、ストーリーテリング中心で、演出や撮影にとくに特徴はない。テレビ的。
マニラでロケされたようだが、とくに街の魅力や特徴を引き出そうともしていない。
それでも、海の場面が美しく、心に残った。夏休みに家族で見るのにちょうどいいのではないか。
それにしても最後はベタベタになりすぎて、話も蛇足に思われる。これは特別出演のスター、フアン・カルロス・ラバホに見せ場を作り、花をもたせるためだと思う。許してあげてほしい。
フアン・カルロスが劇中歌「Through the Years」を(ベタに)朗読する動画↓
主役二人による宣伝動画↓
<参考>
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