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続編が作られるべきだった(でも作られなかった)映画ベスト5

頼みもしないのにくだらない映画の続編がいくつも作られる一方で、続編が作られるべきだったのに、いろんな事情で実現しなかった作品がある。

以下、私が考える「続編が作られるべきだった映画」ベスト5です(順位優劣なしで5本選んだ)。


1 「いとこのビニー」


いとこのビニー


先週、「My Cousin Vinny」がアメリカのツイッターのトレンドワードになっていた。

「まさか、もしかして続編か!?」と思ったら、マリサ・トメイの58歳の誕生日(12月4日)を祝福し、彼女の代表作「いとこのビニー」をみんな話題にしていたのだった。(それで、この記事の企画を思いついた)

トメイにアカデミー助演女優賞をもたらした「いとこのビニー」(1992)は、コメディの大傑作だ。

世界一頼りない高卒弁護士のビニー(ジョー・ペシ)と、彼と結婚したばかりのヤンキー女、リサ(マリサ・トメイ)の抱腹絶倒の法廷劇。

ビニーが法廷で失敗を繰り返し、敗北必至の情勢を、リサの意外な助勢で一発逆転する。エリート臭ただよう法廷で、労働者階級コンビが自らの流儀で勝利する。痛快きわまりない映画だった。

だから、みんな続編を期待していた。

実際、「いとこのビニー2」の噂は聞いた。しかし、結局実現しなかった。本当に惜しいことだった。

理由はよくわからないが、ご承知のとおりジョー・ペシはそもそも出演作が少ない。仕事を厳選するタチなので、仕方ないと諦めるしかなかった(そのわりに「リーサル・ウェポン」に出すぎだったと思うが)。

ジョー・ペシのコメディの代表作は「ホーム・アローン」ではなくこっちだ、と思う人は多いだろう。彼とマリサ・トメイのケミストリをもう一度見たかった。


2 「レモ/第1の挑戦」


「レモ/第1の挑戦」のフレッド・ウォード(左)とジョエル・グレイ


「第1の挑戦」だけで終わってしまった1985年の映画。

映画好きなら、私の言いたいことはもう分かるはずである。

この映画を見た人なら、ジョエル・グレイ演じる「謎の韓国人」をもっと見たい! とみんな思ったはずである。

政府公認の暗殺者に選ばれた「レモ」(フレッド・ウォード)に、朝鮮の古武術を教える老人役だ。

小柄で飄々とした武芸の達人で、得意技は弾丸を自由自在に避ける術。この映画から「マトリックス」のシーンが生まれたのは有名な話である。

しかし、ジョエル・グレイもまた、めったに映画に出ない人だ。「キャバレー」(1972)でアカデミー助演男優賞をとった後、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000)とか数えるほどしか出ていない。(90歳でまだ健在)

むしろ、名優がこんな映画によく出てくれた、しかも「謎の韓国人」役で、と感謝すべきなんだろうが。「レモ/第2の挑戦」というより、あの韓国人を主役にしたスピンアウトが見たかった。

(ジョー・ペシ、ジョエル・グレイ、ダニー・デビートは、わが愛しの3大チビ名優である。それについては別に書きたい)


3 「監視者たち」


監視者たち


この2013年の韓国映画、続編の可能性が完全に消えたわけではないが、たぶんもうないだろうと感じる。惜しいと思う。

韓国警察「監視班」に配属された新人刑事(ハン・ヒョジュ)と、その上司(ソル・ギョング)を中心にした物語。チョン・ウソンの悪役も印象的で、韓国でも大ヒットした。

ご承知のとおり、これは香港映画「天使の眼、野獣の街」(2007)のリメイクだ。私はそれも見たが、レオン・カーフェイやサイモン・ヤムなどが出るオリジナル版が、そもそも名作である。

だから、どちらの続編でも作られてほしいのだが、実現していない。

「監視」のエキスパート、「監視して、記憶する」という特殊技能で凶悪犯罪を解決する、というフォーマットが面白いと思うのだ。

だが、考えてみると、これだけ監視カメラが街に氾濫すると、そういう技能の使い道がなくなったのかもしれない。


4 「スリ」


スリ


香港映画といえば、ジョニー・トーの新作の話を最近聞かない。

ジョニー・トーの傑作「エレクション」「PTU」「暗戦」などはそれぞれ続編が作られた(「エレクション死の報復」「タクティカル・ユニット」「暗戦リターンズ」)が、私が続編が作られるべきだったと思うのは、2008年の「スリ」だ。

香港の4人組スリ集団と、大物ヤクザとの対決を描いたこの作品は、トーの作品の中でもベスト5に入ると思う。

社会からはみ出した4人の男たちの友情やユーモア、香港愛に溢れた叙情的映像の魅力とともに、「スリ」の技術をスリリングに見せるのが見所。

ここでのスリは、日本のスリのイメージとはちょっと違って、集団で一人の標的を狙い、カミソリで鞄の底などを切って中を抜き取る。国際観光都市でよくおこなわれているヤツで、カミソリの使い方がポイントになる。一歩間違えると血が流れる、高度で危険な技術だ。(だから映画の案内の中で「決して真似しないでください」という警告が出た)

まあ、やっぱり、犯罪の手口を実際に見せるところがコンプライアンス的に問題なのか。

しかし、スリという一瞬の手技に賭ける男たちのドラマ、面白かったんだけどなあ。もう1度見たかった。


5 「スマグラー」


スマグラー


日本映画では、2011年の「スマグラー」。

「闇金ウシジマくん」の真鍋昌平原作。非合法の運び屋(スマグラー)を描いたアクション映画だが、出演者が豪華すぎて、収拾がつかなくなっていた。

妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、満島ひかり、安藤政信、高嶋政宏、小日向文世、大杉漣、松田翔太・・

そんなにたくさん名優はいらない。

しかも、安藤政信とか、高嶋政宏とかが、「キャラ立ち」合戦で目立ちすぎたおかげで、逆に主役陣がかすんでしまった。

そのため、永瀬正敏の静かな名演が見逃されてしまった。

この映画は、運び屋のリーダー「ジョー」役の永瀬正敏がひたすらカッコよかった映画である。

労務者風がバッチリ決まる永瀬正敏

人生で失敗し、非合法の仕事についているが、本物の悪とは一線を画し、おのれの正義をつらぬく男。ウシジマくんのシニア版的なカッコよさで、俺は惚れたのだ。

名優・永瀬正敏は、このまま終わるのは惜しい。彼も役を選びすぎて、人々の印象に残る役が少ないと思う。

「ジョー」は彼のハマり役になる可能性があった。永瀬主演で続編、というか、「スマグラーのジョー」でシリーズ化してほしかった。



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