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岸田首相襲撃事件 単独テロ(ローンウルフ)の動機は「自暴自棄」

岸田首相を襲撃した木村隆二(24)について、テレビ朝日が専門家に聞いていた。

その中で、「ローン・オフェンダー(ローンウルフ、一匹狼)」テロと「自暴自棄犯罪」の増加に触れている。


(Q.去年7月、安倍元総理の銃撃事件を起こした山上徹也被告との類似点は感じますか)

福田充教授:「安倍元総理の襲撃で、山上被告がヒーローのように扱われ、注目されました。社会的弱者が報復に成功して、ヒーローに見えた可能性があります。山上被告と自分を同一視させることで、自分自身も選挙期間中に総理を襲えるかもしれない。手製の武器を作れるかもしれない。そういったことを、山上被告から学習した模倣犯と言えるかもしれません。類似点は、両者とも社会的に孤立していたことです。被害者感情も持っていたかもしれません。しかし、引きこもりの人は全国にいて、そういう人たち全員がテロ事件を起こすわけではありません。こういう大きな事件を起こしてしまう人の共通点は、論理が飛躍することです。個人的な怨恨を社会のせいにして恨みをはらそうとする。近年増えている自暴自棄犯罪にも近いですが、そういった傾向にある『ローン・オフェンダー』と言えるかもしれません」


(Q.ローン・オフェンダーは、最近の概念ですか)

福田充教授:「かつては“ローン・ウルフ型”“一匹狼型”と言われましたが、近年は、テロ対策の研究や報道でも、単独で攻撃する『ローン・オフェンダー』が使われるようになってきました」


ローンウルフ型テロについては、昨年12月にnoteに書いた。


【Disney +】「ウォルサム殺人事件」単独テロ(ローンウルフ)時代への教訓


今回の犯行に関しては、世をあげた「統一協会騒ぎ」など、安部元首相暗殺事件以降のメディアや政治の問題がある。

ただ、山口二矢の例をあげるまでもなく、「単独テロ」は昔からある。

ネット時代になって、爆弾や銃器などを自作しやすくなったのはあるとしても、単独テロ自体は現代に特有というわけではない。

単独テロ犯はいつでも生まれ得るので、基本的には警備を厳重にすることと、テロの兆候をいち早く察知できるようにすることしかないのではないか。


上の記事で取り上げた「ウォルサム殺人事件」というドキュメンタリーは、2013年のボストンマラソン爆破テロ事件の犯人を描いたものだ。

犯人はイスラム系の兄弟だったが、テロ組織とは関係ない「単独テロ」である。

ドキュメンタリーの主題は、マラソン爆破テロの前、犯人はすでに事件(ウォルサム殺人事件)を起こしていたのに、なぜ当局はそれを見逃していたか、ということだ。

上の記事でも書いたが、思想犯は「犯行を繰り返す」。最初の段階でつかまえないと、大変な事態につながるのだが、その兆候を発見するのが難しく、発見しても予防できるかわからないのが問題だ。


テロ容疑者を予備的に拘束することには人権的な問題がある。

SNSで危ない発言をしている奴を、片っ端からしょっぴくわけにはいかない。

そのあたりは、法律学、犯罪学、その他、学際的な研究者と政治家が連携して予防策が追求されなければならない。


9・11やボストンマラソンテロのような「無差別テロ」の場合、テロ犯に同情が集まることはほとんどない。

しかし、安倍元首相や、岸田首相のような特定個人が標的だと、その個人に関する「世論」が影響し、犯人が同情されたり、それが政治的に利用されたり、事件再発防止が妨げられたりする。

誰が犠牲になるにせよ、殺人は殺人であり、テロはテロだということが最初に確認されなければいけない。

そして、「動機の解明が必要」という声が虚しいのは、彼らローンウルフの言う動機は行動の合理化・正当化にすぎず、第一の動機は「自暴自棄」だからだ。

特定個人が標的のようで、実は、世の中全部が気にくわない。その意味で「無差別」と同じなのだ。

それが理解されないと、おかしなことになる。

安倍元首相の事件で、おかしなことになった結果が、今回の襲撃事件だった。

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