懸田冬陽 | Toyo Kakeda

ゆとり世代の平々凡々

懸田冬陽 | Toyo Kakeda

ゆとり世代の平々凡々

マガジン

  • note詩歌を集めましょう

    • 460本

    noteで「詩歌」カテゴリーができるまで、noteに投稿されている詩や短歌、俳句なんかを集めていきましょう。皆さんが見つけた詩歌の投稿、詩歌に関する研究論文など、自由に登録して、シェアしませんか?

最近の記事

  • 固定された記事

【詩集】『宵と灯の詩』

  • 固定された記事

【詩集】『宵と灯の詩』

マガジン

  • note詩歌を集めましょう
    460本
  • 18本
  • エッセイ
    1本
  • 四季詩集
    7本

記事

    【詩】不完全な月

    草の根の底に丸まった 弱々しい虫たちが 目覚めに 痛い光を浴びて 鳴いたり 羽を震わせたりする 僕は ゆるく草叢を撫でて 手が擦り切れるほどの 痛ましい優しさを 施してやった ああ しかしひとつの灯は 救えない 春の底に穴を開けて 夜のなかに沈んでいく 僕は図々しくも 手を差し伸べて ここに 善良な心を求めるのだが 今とひとつの灯を 哀れむように 不完全な月が 眺めているものです

    【詩】不完全な月

    【詩】秋の夜長

    苦しむこともなく 陽は沈むように見えたが その暗がりに 僕は何も愛するものがなく 不穏に波打つ夜の淵で 深い沈黙を湛えている けれど空には 静かな光が灯るだろう 夜風に触れる草花が 暗がりに歌うように 星々はひとつ またひとつと線を引いて 全てはあるがままに 身を委ねている それが疑いようもない幸福だとして ――― どうして僕は佇むだろう この明けることもない夜に 標を見据えた小動物のように 射止められ 紅潮する唇をふるわせて …… 瞼の裏に焼き付いた 淀みない循環に

    【詩】無機質な夜

    光も行かない深い堆積のうえで  焦燥に縫われた足元を見れば 無機質な舗装があるのだと  その重苦しい色調に また重苦しく嘆息する 風は久しく林道を流れたが  常緑に満ちた物憂さに 道の端では 散落した花弁も羽毛も褪せて 胸のうちの不安なリズムを 吹けばこそと思い さよならする 花を模して 如何に寂しい光があるだろう 夜にそびえる 誰のものでもない無機質が 僕の休息を削ぐように一瞥する (脅かされ 乾いた喉よ 意味を吐け!) 僕は重い香りに眩み 夜の懐に身をたおす する

    【詩】無機質な夜

    【詩】光冠の下

    黒々と灼けた気怠さは 身を深く野に刺して 薄い雲の光の潤んだところを ひとは睨んでいた けれど重たげな空は 肝要な雪を降らすだろう 乾いた目に 幸福に飢える冬の世に 僕は静かに夜を生きた 吹いて過ぎる雲の尾に しおらしく垂れ下がり 休息に眠るふりをして …… 溢れて花やぐ桃色と 草むらを行き交う風の音とを 窓の外に 記憶の淵に 遠い夢を見ていた  いま消えていった灯が あることを歌い  東の空を見つめる 寒々とした木々の梢に 風が寄り添うように触れている しかし星々も 山

    【詩】光冠の下

    【詩】卑し子

    仄めいた!(ああ しかし夜・・・・・) カラフルに縁取られた街々が さも酒宴のように酔えば 目に定まるところがない あそこをゆく ひとつの哀愁は 僕の目にはあまりに眩く 伏せた瞼の奥に  またひとすじの光を走らせる 手を引いてやれば 後悔ばかりを連れて その怠惰を心地良いと言う あるいは ひとりでに昏い道を歩き ならば街灯は 堕ちた日の光だと言う まだ微かに明るい 僕の内を お前の内を 眺めながら  この夜が仄めいた・・・・・あれは誰?

    四季詩集(終)

    四季詩集とは 詩誌「四季」の同人の作品を収録した詩集です。「四季」は昭和8年創刊の詩誌で、萩原朔太郎、室生犀星、井伏鱒二、中原中也、伊東静雄、立原道造らが同人として参加し、風立ちぬで知られる堀辰雄が編集に携わっていました。 四季詩集概要タイトル:四季詩集 著者:丸山薫 編 出版社:山雅房 昭和16年(1941年) 価格:3円50銭 発行部数:限定800部 参加詩人: 井伏鱒二、乾直恵、内木豊子、大木実、木村宙平、阪本越郎、神保光太郎、杉山平一、竹村俊郎、竹中郁、田中冬二、立

    四季詩集(終)

    【五行詩】村の夕暮れ

    村の夕暮れ 濃緑の暗くして 月白がまた 心を傾ける 僕に 深い森のなかに 弱々しい光の粒を つぶさに告げる 鳴虫も絶え絶え ひとの夕暮れ ‥‥‥

    【五行詩】村の夕暮れ

    【五行詩】川瀬をゆく紅葉が

    川瀬をゆく紅葉が ただひとつの 取りこぼした色彩のように 恋しい ―― 早朝は灰に霞み せせらぎ 波とゆらぎ ―― 僕は 手のひらに水を転がすと ひとりは こぼれ落ちる色々を見ていた

    【五行詩】川瀬をゆく紅葉が

    四季詩集(6)

    四季詩集とは 詩誌「四季」の同人の作品を収録した詩集です。「四季」は昭和8年創刊の詩誌で、萩原朔太郎、室生犀星、井伏鱒二、中原中也、伊東静雄、立原道造らが同人として参加し、風立ちぬで知られる堀辰雄が編集に携わっていました。 四季詩集概要 タイトル:四季詩集 著者:丸山薫 編 出版社:山雅房 昭和16年(1941年) 価格:3円50銭 発行部数:限定800部 参加詩人: 井伏鱒二、乾直恵、内木豊子、大木実、木村宙平、阪本越郎、神保光太郎、杉山平一、竹村俊郎、竹中郁、田中冬二、

    四季詩集(6)

    【五行詩】夏の夕暮れに肌寒い風が

    夏の夕暮れに肌寒い風が 雨やら嵐やら この上によこす (ああ ピアノが聞こえない) すると草むらに 虫が鳴きだして  ひとはただ そこを行き過ぎる

    【五行詩】夏の夕暮れに肌寒い風が