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【詩】光冠の下

黒々と灼けた気怠さは 身を深く野に刺して
薄い雲の光の潤んだところを ひとは睨んでいた
けれど重たげな空は 肝要な雪を降らすだろう
乾いた目に 幸福に飢える冬の世に

僕は静かに夜を生きた 吹いて過ぎる雲の尾に
しおらしく垂れ下がり 休息に眠るふりをして ……
溢れて花やぐ桃色と 草むらを行き交う風の音とを
窓の外に 記憶の淵に 遠い夢を見ていた 

いま消えていった灯が あることを歌い 
東の空を見つめる 寒々とした木々の梢に
風が寄り添うように触れている
しかし星々も 山々も 憂鬱に臥せて   


(ひとは睨んでいた 薄い雲の光の潤んだところを !)


虫の音は方々に 忘れることもなく囁き(何をとも言わず)
ひとは古めかしい言葉を抱いて 眠るだろう
美しかったものを なおも美しいと思いながら
ひとも自然も幸福も すべては変わらずにあれと ……

さようなら嘗ての夜 僕はあるがままの幸福として
変わってしまった世の隅々を 目に湛える
身を深く野に刺して 雪中にさえ花が咲けば と


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