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【詩】秋の夜長

苦しむこともなく 陽は沈むように見えたが
その暗がりに 僕は何も愛するものがなく
不穏に波打つ夜の淵で 深い沈黙を湛えている
けれど空には 静かな光が灯るだろう

夜風に触れる草花が 暗がりに歌うように
星々はひとつ またひとつと線を引いて
全てはあるがままに 身を委ねている
それが疑いようもない幸福だとして ―――

どうして僕は佇むだろう この明けることもない夜に
標を見据えた小動物のように 射止められ
紅潮する唇をふるわせて ……

瞼の裏に焼き付いた 淀みない循環に
僕は赤らむ空を待ちわびる 尽きかけた青年期の
肺を締め付け 血を吐くほどの物憂さに!


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