見解5『おもひでぽろぽろ 』挿入歌の秘密
前回は 〜
高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ 』の見解コラム。この映画を徹底分析した結果いろんな事が見えてきました!
高畑監督は劇中に流れる音楽にもちゃんと意味を込めています。一番のこだわりはやはりトシオのカセットテープだと思われます。
あのテープには大きな秘密が隠されていますがそれは後ほど!
今回はそれ以外の高畑監督が選曲したこだわりを一挙に見ていきましょう!
ではドンドン行きます。
①夏休みの大野屋に着くシーンです。
近江俊朗(おうみとしろう)「湯の町エレジー」が流れます。
湯の町エレジー 近江俊郎
このシーン自体は小津監督の「東京物語」のオマージュを連想する内容ですが、熱海に行くのでこの曲が流れます。
実はかなり良い選曲なのが、この見解を全て読むと分かります。このエピソードからパイナップルの話、初恋の話と続きます。
「伊豆の山々月あわく 灯りにむせぶ 湯のけむり
ああ 初恋の 君を尋ねて今宵また ギターつまびく旅の鳥」
シチュエーションも合ってますし初恋のエピソードに向かって行ってますし、
注目していただきたいのは最後の自分を「旅の鳥」と表現しています。
この選曲が素敵なのは全ての見解を最後まで見たら分かると思います。
②千疋屋のパイナップルを切るシーンで「椰子の実」が流れます。
みんなの童謡 「椰子の実」
「名も知らぬ遠き島より流れ寄る椰子の実一つ」 これはそのままですね。
③熟れてないパイナップルを食べて期待を裏切られたシーンに西田佐知子の「東京ブルース」が流れます。
東京ブルース 西田佐知子さんの歌唱です
「どうせ私を騙すなら死ぬまで騙して欲しかった」なにやらダジャレ大会になってきてますね。
④学級会の終盤にツネコがビシッと締めるシーン。
植木等の『だまって俺について来い』が流れます。
植木等 だまって俺について来い 1964
この曲は少しだけ気が利いていて劇中で流れる
「そのうちなんとかなるだろう」の前の歌詞で
「ぜにのないやつぁ、俺んとこへこい」とベトナムの話と少し重なります。
以前話したベトナム戦争のスワンダ・プーマにも繋がっていく訳です。
見解2『おもひでぽろぽろ』 タエ子は源氏物語がモデルだった!
⑤「ハンガリー舞曲第5番」です。
ハンガリー舞曲 第5番 (ブラームス)
この曲は給食のシーンで流れます。
タエ子とクラスメイトのスーがそれぞれのミルクのカップを交換するシーン。
映画チャップリンの『独裁者』でも床屋のシーンでこの曲が流れます。また別のシーンで銀貨入りの菓子を交換し合うシーンがあり、『独裁者』のオマージュと政治的な意味が込められています。
⑥初恋のエピソードでは西郷輝彦の『星のフラメンゴ』がたくさん流れます。
西郷輝彦/星のフラメンコ (1966年)
「好きなんだけど離れてるのさ」です。
⑦給食中に生理の事が男子にバレそうになったシーンでは梓みちよの「こんにちは赤ちゃん」が流れます。
梓みちよ こんにちは赤ちゃん Konnichi wa Akachan 1963
これはそのままでしょう。おそらく写真の右にいる子が生理の話をバラした中山君なんでしょう。顔がそう言ってますねw
⑧『整理、整頓!』のシーンでは「藁の中の七面鳥」が流れます。
Turkey in the Straw
日本では「オクラホマミキサー」として通っている曲です。
クラスで生理が流行ってしまい男子生徒が悪ふざけをしはじめます。オクラホマとはご存知の通りアメリカの州名ですが由来はチョクトー族インディアンの言葉「okla」、「humma」を合わせたものであり意味は「赤い人々」という意味があります。
つまり幼稚な男子に生理で翻弄される女子生徒の事を指しています。
⑨分数の割り算のエピソードでは倍賞千恵子がまた登場します。
「さよならはダンスの後に」です。
倍賞千恵子/さよならはダンスの後に
隣の部屋で算数が「2」だという話が筒抜けでタエ子がリンゴを食べるシーンです。
歌詞は「何も言わないでちょうだい黙ってただ踊りましょう」同感ですね。
(これは憶測ですが高畑監督も宮崎駿監督も、絶対に倍賞千恵子が好きだと思うw)
⑩好き嫌いの話でお父さんを肩叩きをしてバッグをおねだりするシーンでシューベルトの「鱒」が流れます。
鱒 シューベルト
歌詞を簡単に説明すると、元気のいい鱒を眺めていると
釣竿持った男が鱒を狙っているが、きれいな水では鱒がかかることはないだろうと安心していた。
ところが男はかき回して水を濁らせ、罠に落ちた鱒を私は見つめていた。
という歌です。
いわゆる「見える魚は釣れません」と言う事です。
タエ子がいくら頑張ってもお父さんはバッグを買ってはくれません。
(11)おばあちゃんがのど自慢大会を見ているシーン。
それにつられておはなはんバージョンのエナメルのバッグものど自慢風に披露しています。
次の人が歌う曲は、素人さんが歌う2回目の「こんにちは赤ちゃん」これも意味はそのままですね。
鐘2つの後、お父さんもタエ子を諦め外に出ます。
その瞬間のど自慢の素人さんが歌う加山雄三の「君といつまでも」が流れます。『幸せだなあ』で玄関が開き、裸足で出たタエ子はお父さんにほっぺを叩かれます。
加山雄三/君といつまでも (1965年)
そして中華料理は中止になり、君といつまでもとなりました。
次回はいよいよトシオの愛車スバルR-2で流れるトシオのテープの謎に迫ります。
次回は
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