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鬼才高畑勲『おもひでぽろぽろ』のすべて

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91年公開のジブリ映画、『おもひでぽろぽろ』を紐解いていきます。なぜ山形が舞台なのか?なぜ野鳥がたくさん出てくるのか?トシオがタエ子に実はアプローチしていた?トシオのカセットテー… もっと読む
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見解1『おもひでぽろぽろ』タイトル画面の意味

この見解のマガジン(全9話)は はじめましてKakanと申します。 高畑勲が鬼才と呼ばれる理由。 それは遺作「かぐや姫の物語」を観てもよくわかります。 しかし同じ鬼才が手掛けたこの「おもひでぽろぽろ」は、子供の時に観てあまり面白い印象がありませんでした。 大人になった今、このあまり考察されていないこの映画を紐解く事で、新たな発見やこの映画の面白さ、鬼才と呼ばれる理由に気付けるのではと思い、あえて個人的に徹底分析に至りました。 いざ観てみるとそれは「かぐや姫の物語」

見解2『おもひでぽろぽろ』 タエ子は源氏物語がモデルだった!

前回は  第2回の今回は岡島タエ子について見ていきましょう! 昭和31年2月22日生まれ(27歳、10歳)の東京都生まれの東京育ち、三姉妹の末っ子で都内で新聞社の企画部に務めている。 この映画の主人公です。 タエ子の周りで起きた描かれていない出来事をあげてみましょう。 ・ナナコとミツオの結婚式に参加  (ナナコがビートルズの話をしている電話の相手はミツオと思われます) ・1年前に田舎で稲刈りを手伝っている。  (この時にトシオはタエ子を見ています) ・最近姉妹で集

見解3『おもひでぽろぽろ 』思い出のスイッチを探せ!

前回は  全9話の今回第3話は、思い出の秘密に迫ります。 タエ子が昔を思い出す時、必ず何かを見てまたは感じて昔を思い出します。いくつかのエピソードの何がスイッチになっていたか見ていきましょう! ①夏休みの田舎のあこがれエピソードは、休暇届けを見て思い出しています。 絵コンテ集では☆印で「休暇届である事がわかればよい」と書かれています。 ②パイナップルのエピソードは駅に向かう途中の果物屋のパイナップルとバナナを見てスタートします。 実際にいったんパイナップルに

見解4『おもひでぽろぽろ』ちょっと怖い思い出を食べるタエ子の話

前回は 高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ 』の見解コラム。全9話の第4話です。 以前『となりの山田くん』の制作中に、高畑監督がアシスタントの提案に対しとても嫌がっている映像を見た事があります。 その内容は地面に対し腕を水平に正拳突きしているキャラクターが、疲れてどんどん腕が上がってしまうという内容を、こっちの方が面白いのでは?と監督に見せたところ、監督は変化を加えるとそこに意図や意味が生まれてしまうと言い却下したという内容。 アシスタントが面白いからといって描いてしまうと、

見解5『おもひでぽろぽろ 』挿入歌の秘密

前回は 〜 高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ 』の見解コラム。この映画を徹底分析した結果いろんな事が見えてきました! 高畑監督は劇中に流れる音楽にもちゃんと意味を込めています。一番のこだわりはやはりトシオのカセットテープだと思われます。 あのテープには大きな秘密が隠されていますがそれは後ほど! 今回はそれ以外の高畑監督が選曲したこだわりを一挙に見ていきましょう! ではドンドン行きます。 ①夏休みの大野屋に着くシーンです。 近江俊朗(おうみとしろう)「湯の町エレジー」が流れ

見解6『おもひでぽろぽろ』カセットテープの秘密

前回は 〜 前回高畑監督の挿入歌をいくつか紐解きましたが、高畑監督の音楽遊びはさらに深くしっかりとした意味が加わってきます。 では見ていきましょう。 ①タエ子にとって小学5年生時代はやはり人生のピークなのです。実際、前にも説明したとおり、好きな思い出を何度も思い出しています。そう、『はやにえ』の話です。 見解4『おもひでぽろぽろ』ちょっと怖い思い出を食べるタエ子の話 つまり彼女にとって小学5年生時代の思い出は聖地なのです。 いやいや聖地って大袈裟でしょうとお思いでしょ

見解7『おもひでぽろぽろ』タエ子を引き戻した本当の理由は車中で...

前回は〜見解6『おもひでぽろぽろ』カセットテープの秘密〜でした。 高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ 』の考察コラム。 ネガティブな見解が高畑監督ですしどうしても多くなってしまいますが、今回はこの映画で唯一と言っていいほどポジティブでドラマティックな考察をしていきたいと思います。 トシオは、山形駅に急に迎えに行く事になったと言っていますが、本当の理由はわかりません。 しかし、1年前大勢の男達の中でタエ子を見に行った1人ですし、一夜漬けの豆知識や蔵王デートの誘いなど、やはり誰

見解8『おもひでぽろぽろ』夢見る母と子の末路は?

前回は〜見解7『おもひでぽろぽろ』タエ子を引き戻した本当の理由は車中で...〜でした。 前回はとてもロマンティックな話でしたね! トシオ本当に素敵でした! 今回はこの映画の核芯に迫りたいと思います。 田舎のおばあちゃんがタエ子にトシオの嫁に来てくれと言うシーンで、ナナ子の旦那さんであるミツオが、 『東京の人になってしまったから代わりに』という言い方をしています。 また、映画の冒頭で現在のナナコとタエ子が電話するシーンでは 『もしもし岡島ですが』と名前が変わっていない事が確

見解9『おもひでぽろぽろ』は鶴の恩返しだった!(最終回)

前回は  まるでよくあるジブリ映画の都市伝説の様なタイトルですがご安心をw 今回で9回に渡り1991年作品。高畑勲監督のジブリ映画『おもひでぽろぽろ』を紐解いてきましたが今回で最終回。今までのいくつかの疑問が解決するはずです。 まず、本題に入る前にどうしてもお伝えしなくてはいけないこの映画の表現方法があります。 それはいくつかのシーンはことわざにちなんだ表現をしているという事です。 例えば以前お話しした、学校で読書感想文を褒められた事をお母さんに伝えるシーン。話の途中で給