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エッセイ

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当然、読まなくていい。
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#思い出

孤立の味

孤立の味

悪癖がある。

ふざけてしまうのだ。

あの〜、ね?
他者に囲まれたシーンでは特に、他者への恐怖が凄まじい気持ち、分かるよね。

僕は他者にめっぽう弱く、別に誰も見てないっていうのは心の奥底で理解していても、どうしても他者の目が怖くなってしまうときがある。みんなにもあると思うが、僕はみんなより絶対に、そういう場面が多い。多いからな!!僕の方が多いから!!😤

まあ兎角、他人の目が本当に怖い。

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涙の掃除機

涙の掃除機

僕は、これまでの人生で二回、泣きながら掃除機をかけた事がある。

一回目は小学生の頃だったか。

朝っぱらから床を汚して親に怒られていた少年の僕は、その日の夕にはそんなこととうに忘れて、友達の家で、相も変わらず、馬鹿みたいに遊んでいた。
親からは「お前自分で掃除したことないからその大変さ分からないんだろ」「帰ったら自分で掃除機かけろ」とか言われた。妥当な説教だったが、当時の馬鹿な僕からしたら、単に

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鍵穴の奥に

鍵穴の奥に

自分には、生来、モノを大切にする心は備わっている、と、そう思っている。その反面、よくモノを失くしてしまうことも、また事実としてある。

小学生の頃、それは、ある日の放課後か。
友人と数名で遊びに出掛け、夕暮れの町。歩いているうちに僕の家の近くまで来たので、僕たちは「水でも飲もうか」ということで一致した。

その時、

遅くも、鍵の紛失に気づいたのだ。
遅い。うん、気づくのが遅い。

遅いが、

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ナンセンスの箱

ナンセンスの箱

小学校生活最後の図画工作に於ける作品は、オルゴール・イン・木箱だった。なんかグレードニ、三個下の「アリス・イン・ワンダーランド」みたいだな。
僕達はその、木箱を作った。

木箱は直方体で、当然六つの面があり、その全ての面のデザインを、自分達で決定することができた。
そこで、確か、

「六年間の小学校生活、その思い出」

こう言ったモノをテーマにおいたデザインをするように言われたことを覚えている。

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兜

小学五年生の頃、「クラブ活動」なる学校の設けた謎の風習により、部活動を悉く回避していた僕だったものは、半ば強制的に、何かしらの文化的な活動に片足を突っ込む羽目になった。

そうして、僕は「折り紙クラブ」を選んだ。

特段折り紙が好きというわけでもなかったし、得意というわけでもなかった。寧ろ手先は異様に不器用で、何かを作ろうとして、出来るのは決まって鮮やかなスクラップだった。もう、それは、一周回って

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ハイウェイ・ゴリラ

ハイウェイ・ゴリラ

高速道路。風を切って走る。
びゅん。
すると、左手に黒い塊が見える。
それは、巨大なゴリラだった。
英字の看板をかっしりと掴み、こちらを只眺めるゴリラ。幼い僕の心を、たった一瞬だけ、その黒の印象で一杯にしたゴリラ。僕がそのゴリラを指差して笑うと、母が、何か適当なことを言って、一緒に笑ってくれた様な憶えがある。

晴れた日の高速道路は特に気持ちが良かった。
視界の澄む心地、煩わしくない湿気の程度、陽

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