長ネギとお米のスープをジョバンンナ風に調理してみる
毎年恒例誕生日食事会、今年は14人の着席ランチだったことは先週も書きましたが、大勢の食事の時、問題はプリモ ピアット。
パスタは14人分のパスタを茹でる大きな鍋はあっても、14人分のパスタを濾すスコラパスタ(パスタ用ザル)がなくて5年前は茹でた12人分のパスタをシンクにひっくり返してしまいそうになり、大惨事になるところだった。
スコラパスタを買えばいい?
いや流石に年に1回のために、今後いつまでこんなこと続けるかわからないのに、そんな嵩張るものは買いたくない。
普通は食事会は4-8人程度。
あまり人が増えると皆が同じ話題で話せなくなるから。
ではリゾットはというと調理中ガスコンロについていなければならず、キッチンに篭りきりになるので接客も重要な大勢の会食には不向き。
なので。必然的にスープ類となる。
でもスープ類で「これ凄い」と言うなものは案外少ない。
マウロに教わったキャベツと豚挽き肉のミネストラはとびきり美味しいけれど、何度も作ったので、またこれか、という印象は与えたくない。(こちらも機会を見てレシピを載せます)
そこで今年は以前よく作った長ネギとお米のスープを、昨年仕事で知り合ったイタリアでの人気フードブロガーのジョバンンナ風に調理してみることにした。
ジョバンンナ式に調理するととても濃厚な味になる。
ちょうど仕事を一緒にした頃ジョバンナのブログの冒頭にカボチャのスープのレシピがあった。
(今探したらリンクが見つからないのですが、、)
調理法として興味深かったのは、まずカボチャをオーブンで焼き、それから鍋に移しココナッツミルクやスパイスを加えるという調理法。
ココナッツミルクは苦手なのでアーモンドミルクで試してみた。
カボチャの味が濃厚になり、レシピで指定されたスパイスを加えなくてもエキゾチックな味になった。
というわけで、この長ネギのスープも先にオーブンで焼き、鍋に移して煮込んだのがこのレシピ。
以前よく作った雑誌で見つけたレシピの長ネギのスープはネギは鍋で炒めるだけでバターやイタリアンパセリを仕上げに入れたが、このオーブンを使った調理法だと同じ素材でも味がしっかり濃厚になるので、バターやイタリアンパセリは不要。
20年以上も前に作った鴨葱信田鍋の先にオーブンで焼いた長ネギがおいしかったと、グルメ友マウロがいまだに時々言うのもヒントになっているので、トッピングも長ネギのオーブン焼きだけにしました。
ジョバンンナの話はレシピの後に。
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<材料> 二人分 写真は3人分です。
・長ネギ 180-220g程度
*イタリアの太めの長ネギポッロネギは火を通すととても柔らかくなるのですが、日本のおねぎででもそうように仕上がるかは???
・水 600cc
・リゾット用お米 60 g
・パルメザンチーズ 40 g
<調味料>
・オリーブオイル
・野菜ベースのブイヨン 適量
・塩 適量
<作り方>
1・大半の長ネギは35ミリ程度のぶつ切りにする。
*スープとしてスプーンですくって食べるので余り長くすると食べにくい。
2・トッピング用の長ネギは10cm分だけ1cm程度のぶつ切りにする。
3・1と2に軽く塩を振りオリーブオイルをかけるて180度のオーブンに入れて25分から30分程度、余り焦げない程度に中がとろりとするまで焼く。
*これが重要なポイント。スープにする野菜は通常お鍋で炒めて水を加えるが、先にお鍋で炒める代わりにオーブンで焼くととても濃厚な味になるのです。これを私はジョバンンナ式と呼んでいます。
*これをこのまま付け合わせの野菜としていただくのはステファニアのレシピで、レシピ本「粉砂糖」にも載っています。
4・3の35ミリ程度のぶつ切り方は更に縦にに半分にします。
*何故はじめから縦にに半分にしないかというと、カラカラになってしまうから。
5・お鍋に入れオリーブオイルで弱火で少し炒めます。
6・別の鍋に600ccのお湯を沸かし、沸騰したら5に加え、野菜ベースのブイヨンも加え15分ほど煮込みます。
7・15分経ったらリゾット用お米60gを加え、お米に火が通るまで13分から15分煮て(お米の種類により加減)火を止めます。
8・火を止めてから、パルメザンチーズ 40gを加え、よく混ぜます。
9・深皿に盛り付けたら1cmのぶつ切りの焼いたネギのトッピングを加えます。
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人気フードブロガージョバンナのこと
人気フードブロガージョバンナと知り合ったのはフランスが本社の韓国系某お寿司チェーンのジャーナリスト向けイヴェントでテーブルセッティングをして欲しいとPR事務所から仕事を依頼された時の事だった。
以前ピクニックに使う食器の提案を、と依頼してきたのと同じ事務所だ。
私はミラノのデザインの同業者にアンティークテーブルウエア関連の仕事はひた隠しにしてきたのにそんな依頼が来たのは、単にイタリア人はそういう仕事依頼で意表をつくキャスティングが上手いから。
アンティークテーブルウエアのビジネスを隠してきたのは、凄まじい競争のミラノのデザイン界でそんなパラレルキャリアがあるなどとバレたら、弾き出されそうだから。特に一部の男性の同業者は肘鉄お得意なので。
依頼した側は当初、私に所謂「デザインもの」のモダンでミニマルなテーブルセッティングを期待していた様だった。
でも本物の日本人の私としては真っ白なお皿ばかり並んだお寿司のテーブルセッティングなんて変、と思う。
この際!と大好きなアンティークのバカラのグラスやフランスで買った古伊万里などを使い、アンティーク食器好きをカミングアウトする機会にさせてもらった。
古伊万里とカットの素敵なアンティークバカラの取り合わせなどは村上春樹の小説までプレスリリースに引用するよう提案。
プレス向けイヴェントは、興味深いプレスリリースが作成できる内容ならば成功する。
昨今のジャーナリストはプレスリリースをコピペしただけの記事を雑誌に載せる。。。。
まあとにかく、そういう意味ではモダンなものよりもアンティークを使った方が、プレスリリースで語るべきストーリーは多くなるのだ。
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そのイヴェントで盛り付けと料理実演を担当したジョバンナは子供の頃ベトナムから一家でイタリアに移住してきたという。だから「ジョバンナ」は呼び名兼ペンネームで本名はベトナム名のはず。
今では大人気のフードブロガーで、フォロワーも多いためPR効果も高く色々なフード関連のイヴェントに引き出され、タイアップ記事をインスタグラムに載せたりと大活躍している。
初ミーティング前に彼女のブログを覗いてみた。
彼女自身が撮っているというブログやインスタグラムの料理の写真はすごく素敵で、ちょっとオリエンタルにアレンジしたレシピと併せて新鮮。
私もすっかり彼女の世界に魅了されてしまった。
イタリアで人気のフードブロガーの100位以内には入っていると思う。
彼女が数十位ならTop10はどんなに素敵かと調べてみたが、Top10は皆テレビの料理番組などの出演者でやたらに本人の写った写真が多く、画像は汚く、俗っぽく、情報過剰でうるさい。
ジョバンナのブログの方が圧倒的に素敵で良い趣味だ。
大衆にウケるというのはこんなに俗っぽくないといけないのかと改めてがっかりした。
まあ、長年の商品開発で嫌というほど知ってはいたけど。。。。
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さて仕事のキックオフ ミーティング。
クライアント、PR事務所二人、フードブロガーのジョバンナ、香り担当のパヒュームデザイナーのラウラ、テーブルデザイナーの私、と六人での顔合わせビデオミーティング。
その後、どんな食器を使うのか事前に見たいとジョバンナはスタジオに訪ねてきた。
彼女が盛り付け担当だから。
私は2012年にホーチミン市に1泊だけ滞在してベトナムがすごく好きになった。
特に過去インテリ層を大量殺戮してなんとなくぼんやりした人の多い印象のカンボジアから入ったから余計、ベトナム人のポジティブなパワーを素晴らしく感じたのかもしれない。
長年植民地支配をされてきた国を旅行するといつも残念に思うのは「諦め」に慣れきってしまった国民性。
その点ベトナムは歴史的にもフランス支配、日本支配、アメリカ支配を追い出した気骨のある国民性というのが空気で感じられる気がして、ぜひ一度ベトナム全国ゆっくり旅行してみたいとも思っている。
以前、大手銀行で投資リスクを専門に分析している友人と旅行の話をしていて「ベトナムの国債を買おうかと思うほどベトナムに好感を持っている」
と言ったら、
「ベトナムの国債のリスクはイタリア国債のリスクよりも高いから、やめておいた方がいい」
と直ぐに言われて笑ってしまった。
イタリア国債のよりもリスク高いって、つまりジャンク債。。。
好感で投資しちゃいけません。まあそんな余分な蓄えなんて無いからいいけど。
私の自宅兼事務所を訪ねてきた実物のジョバンナを見てホッとした。
ブログやインスタの写真の彼女はちょっとカッコ良過ぎ。私よりうんと若い上、気取り過ぎた人だったらどうしようと心配していたが、普通の、感じの良い30代の東洋人女性で、出産後体重が戻らないと悩んでいた。決して太ってはいないけど。
ジョバンナと私の二人だけのミーティング用にクライアントが用意してくれたお寿司の量は盛りつけのリハーサルには少な過ぎたので、使用する食器を並べて見せて、概ねどんな全体構成にするかを説明した後は、二人でクライアント提供のお寿司を食べながら食に関する雑談。
日本のお寿司文化の事を知りたがるとても熱心なジョバンナ。
仕事の話、食の話がひと段落したときに、ベトナムに対する私の率直な好感を話してみた。
が、ジョバンナは触れられたくない暗い過去の話をする時の様に、小さい頃一度両親と一緒に帰省したベトナムはとても臭かった。その匂いがいつまでも忘れられなかった。と少し痛そうに話してくれた。
私が見た2012年のベトナムとは全く状況が違ったのだろう。
それからミラノ郊外の小さな町で唯一の移民だった彼女の一家が近所の人の注意の目で居心地が悪かったことも。
30年前のイタリアの田舎町がどんな感じだったかは私にも想像できる。イタリアはフランスやイギリスの様な大きな植民地を持たなかったので本当の意味での根深い人種差別も無い代わりポリティカリーコレクトの精神もゼロに近く、30年前は異文化への無知による無礼は頻繁だった。
一家の中では異端児で「両親、兄弟は私を理解してくれない」とも言っていた。
でも今では高校時代から付き合っているイタリア人の彼と結婚し、可愛い一児に恵まれている。
ブロガーとして成功して、バリバリ仕事もしている。
イヴェントが終わって食器類を持って帰宅する車の中で、ジョバンナは料理と写真がうまいだけでなく敏腕ビジネスウーマンだとPR事務所の人たちは彼女の売り込みの才能も褒めていた。
私もそんなジョバンナを応援している。
ジョバンナのブログサイトはこちら
https://www.lapetitexuyen.com/
https://www.instagram.com/giovannahoang/
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