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国税関係

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元国税職員による税務調査の記事や税務職員になるための情報を掲載しています。
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2020年12月の記事一覧

税務調査の話 その10 〜非違事項別解説④ 処分・認定賞与等〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は、少し毛色の異なる処分について取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 処分とは会計では、複式簿記を前提にしていますので、期末の売上の計上漏れを修正すると、その相手勘定である売掛金の修正も必要となります。仕訳で書くと次のとおりです。 税務上は、複式簿記を明示的に取り扱いませんが、同じような考え方をとります。 売上計上漏れの処分は何ですか?

税務調査の話 その11 〜非違事項別解説⑤ 雑収入除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである雑収入除外を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本は売上除外と同じ雑収入除外も売上除外と同じ収入の除外なので、その性質や除外方法(簿外預金等)ついては、基本的に売上除外と同じです。詳しくは、こちらの記事の「売上除外とは」という項目をご参照下さい。 売上を除外するのはかなり大胆な行動であるため気が引けるという心理が働きま

税務調査の話 その12 〜非違事項別解説⑥ 仕入〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は仕入を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 仕入の水増し実在する仕入の金額を過大に計上することです。単純な水増しとキックバックに大別されます。 (1)単純な水増し 請求書や領収証等といった証憑書類な金額を書き換えるなどして、実際の金額より高く見せる方法です。お金の動きが記録に表れない現金仕入の場合、水増し分のお金は社長個人の財布に入れて、

税務調査の話 その13 〜非違事項別解説⑦ 在庫〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は在庫を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 在庫に関する非違在庫管理の方法が継続記録法か棚卸計算法かに関係なく、売上原価は、期首在庫+当期仕入−期末在庫で計算されるので、期末在庫を過少に計上すると、売上原価が過大になるため、課税所得は低く算定されてしまいます。 このため、期末の棚卸が適切に行われているかについては、税務調査でしっかり確認が

税務調査の話 その14 〜非違事項別解説⑧ 外注費〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は外注費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本的には仕入と同じ小売業・卸売業以外では、売上原価の大きな割合を占めることが多い外注費ですが、商品や原材料等のモノの動きを伴わないだけで、不正の態様は仕入と同様です。仕入については↓を参照 外注費については、モノの動きが伴わないこと、一人親方等の個人に対するものも不自然ではないことなどから、

税務調査の話 その15 〜非違事項別解説⑨ 人件費前編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は人件費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 概要人件費の水増し・架空計上もポピュラーな脱税手法です。仕入や外注費と異なり、社内の人間への支払なのでお手軽なイメージがあるのでしょうか。特に同族会社の場合、社長の親族に対する人件費の計上がよく問題になります。ポイントは勤務実態があるかどうかです。 調査手法(1) 支払から見る 役員の身内で

税務調査の話 その16 〜非違事項別解説⑩ 人件費中編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回も前回に引き続き人件費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 法人税法上の損金不算入規定役員報酬に係る定期同額給与、事前確定届出賞与、業績連動給与等、法人税法上には、課税所得の調整により適正な課税から逃れることを防止するための規定があります。 税務調査においても、これらの規定から損金不算入となるものが損金に算入されていないかといった観点のチ

税務調査の話 その17 〜非違事項別解説⑪ 人件費後編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は人件費のうち、源泉所得税固有の非違を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 固有の非違法人税の調査では、売上除外や架空外注費等の処分が認定賞与になると、源泉所得税が追加で課税されます。詳しくは以下の記事をご参照ください。 これは法人税の課税処理に引っ張られるものであり、基本的には法人税の調査の枠組みの中で併せて処理が行われます。 一方、源

税務大学校・普通科研修について 〜高卒区分・税務職員採用試験〜

普通科の後輩(女性)に記事を書いてもらいました。高卒区分の税務職員採用試験を考えている方や内定者は参考にしてください。 普通科研修の公式HPはこちら 研修は1年と長期に及びます。 生活について全寮制です。研修所(採用された国税局ごと)やその年度の人数によっても違うかと思いますが、私の時は2人一部屋で2-3ヶ月に1度部屋替えがありました。風呂・トイレは共同で、部屋には備え付けられていません。 1日のスケジュールは細かく決まっていて、7時のラジオ体操で始まり、掃除、朝食、

会計監査と税務調査の違い

両方経験した筆者が思いつくままに書きましたので、ご興味があればお読みください。 目的会計監査は、財務諸表(決算書)に全体として重要な虚偽の表示がないことを証明する手続です。”重要な”の程度は、投資家の投資意思決定に影響があるかないかで決まります。そして、財務諸表の適正性を会社から独立した立場の監査人が保証します。保証という言葉がとても大事です。重要な虚偽表示を看過した場合(粉飾決算の見逃し)、監査人の責任問題となります。 税務調査は、納税者の申告内容に誤りがないことを確認